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A-97 クレセントと翡翠の強さ




 レゼル王国内にあるSランクダンジョンは、王都から馬車で二時間ほどの距離にある。

 事前に何も決めておらず、全員で行くんだろうなとぼんやり思っていたが、ここで翡翠が意見をくれた。


「ボクとミカにやらせてくれませんか?」


 ミカとは翡翠が呼ぶクレセントの別名。一瞬混乱するというか、テンペストをやっていた時のことを思い出してしまう。別に思い出したからといって、トラウマとかがあるわけじゃないけど……他の人はクエッションマークを浮かべてしまいそうだ。


「ん? ボス戦のことか? まぁ誰がやっても一緒だと思うし、別にいいぞ」


「いえ、ボス戦だけでなく、攻略そのものを――です」


 詳しく話を聞いてみると、翡翠はこの世界での安定した地位を早く築いておきたいらしい。まぁ舐められたくないってのはわかるし、俺たちと一緒に行動している時点で、嫌でも目立っているからなぁ。


「なるほどね」


 ここのSランクダンジョンのボスは狂風竜。

 ダンジョンは洞窟場になっているのだけど、全長三十メートルほどのドラゴンが飛べるぐらいに広々とした造りになっている。


 俺もダンジョン行ぎだい……! と願望を露わにしそうになってしまったけど、ここは年長者として、そして異世界転生の先輩として譲ることにした。

 狂風竜に関しては、ベノムに挑む前に腐るほど倒させてもらったからな。

 あの時は複数のボスと戦っていたから、今やると味気なく感じるのは間違いないだろうし、ここは我慢しよう。


 クレセントと翡翠がダンジョンで苦戦するなどまずありえないので、心配するだけ無駄というもの。彼女たちにとってこの世界に脅威などないからな。



 街を散策しながらそんな話をして、王城に帰還。

 すると、フェノンたちのほうでもSランクダンジョンについての話をしていたらしく、戻ってきた俺たちも交えて会議開始。その場には懐かしのヴィンゼット姉弟もいたのだが、気付けばノアはどこかに消えていた。逃げたな。


 姉のジルともあまり仲が良いとは言えない感じだったけど、たぶんノア的にはあまり気にしていないだろう。なんだかんだ言って、神様からしたらアリに噛みつかれているぐらいな気分だろうし。


「――というわけで、翡翠とクレセントにSランクダンジョンは行ってもらうことにしたんだけど――あれか? 報告とか面倒ならレゼルの人を連れていったほうが手っ取り早いんじゃない?」


 王様から『可能なら情報提供を』という話を聞いていたから、クレセントたちに聞いてみる。


「あー、できればそうしてくれたほうが助かるッスね。書類仕事とか嫌いッス」


「ボクもこういう経験ないからあまり自信ないです……」


 そんなわけで、レゼル側から誰か出してほしい――その旨を、カタリヤ第二王女及び、ヴィンゼット姉弟に伝えた。

 ――が、


「本当にこの二人は強いわけ? 行く場所はSランクダンジョンなのよ?」


 姉のジルが値踏みをするようにクレセントと翡翠に目を向ける。

 が、二人は案外平気そうだった。相手が貴族とはいえ、こちらの得意分野での話だからな。まだ貴族に対しておっかなびっくりという雰囲気は時々あるけど……あぁ、そういうところでも怯えたくないから、彼女たちは早く実績が欲しいと思ったのかもしれないな。


 国内だけでなく、他国まで知れ渡るような実績が。

 ジルが質問すると、その場にいた全員の視線がこちらに向いた。

 セラやフェノン、シリーもこの場にいるけれど、あまり口を挟んでくる様子はない。

 なぜ俺が説明する空気なんだろうか。


「実際に戦って見せてもいいと思うけど、たぶんジルやアーノルドなら口で説明しても十分わかってくれると思うんだよな」


「あたしじゃわからないと言いたいの?」


 ジト目を向けながらカタリヤ様が言ってくる。半分からかっているような感じだけど、ちょっと怖いから止めてほしい。


「カタリヤ様は俺が戦うところを見ていないでしょう? だから、比較対象がわかりにくいかなぁと思いましてですね、はい」


 苦笑しながら受け答えをすると、今度はアーノルドが口を開く。


「つまり、どういうことだ? わかりやすく説明してほしい」


 アーノルドの言葉に、ジルもコクリと頷く。

 うんうん、この二人なら、あの話を引き合いに出せばわかってくれると思うんだよな。

 クレセントや翡翠の強さを示すために一番楽なのは、俺を引き合いにだすことだから。


「以前、アーノルドたちはリンデールに来て俺とやり合ったことがあるだろ? まだ覚えてるよな?」


 まずそう問いかけると、揃って「もちろん」「忘れられるわけないでしょ」と返答してくれた。


「自分で言うのは気恥ずかしいが――俺の強さと、迅雷の軌跡たちの強さ、結構差が開いていると思わなかったか?」


「認めたくないけど、天と地の差があるわね」


 認めたくないのは、地である迅雷の軌跡に負けた経験があるからだろう。

 ジルたちも新たな職業のレベル上げを頑張っているようだが、まだまだ迅雷の軌跡たちには追いつけそうにないもんなぁ。

 本当の勝負は、全てのステータスがカンストしてからだ。


「クレセントと翡翠――この二人は、ほぼ俺と同じレベルで強いと思ってもらっていい」


 同郷ということもあり、俺は我が子を自慢するかのように言った。

 すると、


「異議あり! SRさんと一緒にされたくないッス!」


「ボクも異議ありです。まだまだその背中には追いつけそうにありませんので」


 ここは俺の話に乗ってくれる場面じゃないのかよ。

 



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