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99 レベルアップ




 ただただ魔物を倒すだけの日々だ。


 この世界には俺一人だけが残され、社畜のようにひたすらレベルを上げ続ける。もはやセラやフェノンたちと過ごした時間よりも、こちらで孤独に戦っている期間のほうが長くなってしまっているぐらいだ。


 ノアが俺の望み通りに魔物を出してくれるおかげで、想定していたペースよりもかなり速くレベルが上がってはいるが、やはり三次職のレベル上げはそれなりに時間を要する。


 それでも俺がひたむきにレベルを上げ続けてこられたのは、主に3つの理由があった。


 一つ。二回目とはいえ、やはりレベル上げは楽しいということ。


 こんな状況でも魔物との生死を掛けた戦いはやっぱり楽しいし、コツコツと積み上げて強くなっていく感じがたまらなく好きだ。それになんといっても現実世界と違い、努力が目に見えて成果に現れるからな。


 そして二つ目。失ってから、仲間たちへの想いがより一層強くなったから。


 長い期間顔を合わせなければ、俺の気持ちも薄れてしまっていくのではないかと危惧していたが、実際はその逆。日に日に彼女たちへの想いは強くなっていった。

 ベノムを倒すことに成功し、次の世界で彼女たちに会うことができたのならば、俺はその場で失神するか、周囲の状況を気にせず号泣するだろう。


 そして最後の一つ。

 はっきり言って認めたくないし礼を言うつもりも全くないが、クソガキのおかげ――というのも小指の爪の先っぽ分ぐらいはあるかもしれない。


 セラたちを取り戻すことが目的とはいえ、こいつの世界を救うために俺が奮闘しているわけだから、そりゃノアは俺を全力でサポートするべきだとは思う。


 だが、彼女が無理やりに利害を一致させるように仕組んだとはいえ、愛想悪く対応する俺に対して健気に声を掛け続けたり、時には罵倒を浴びせられながらも彼女はずっと俺を支えてくれていた。

 セラたちを人質にとるような言い回しも、きっとできたはずなのに。


 だから俺はこいつを心の底から憎みたいのに、それができないのだ。不本意ながら。



 ――というわけで、お前はもっと俺に憎まれるように振る舞うべきだと思う。


「慣れてきたからって、心の声で会話しようとしないでよ……」


 目を瞑り、口元に寄せたカップから漂うコーヒーの香りを楽しんでいると、ノアが拗ねたような口調で言った。

 どうせ、お前は俺の心を読んでいるんだし、これで会話できるだろ? 文句あんのか? ん?


「なんでそんな喧嘩ごしなのさ。それに傍から見たら僕一人で喋ってるみたいで変じゃないか」


 俺以外に誰もいないだろこの世界。なんなら裸踊りしたとしても誰にも咎められないぞ。良かったな。


「そんな趣味はないよ! ……君、もしかして僕の裸に興味があるの?」


 ――っぺ!


「心の中で唾を吐かないでくれるかなぁ!?」


 こんなやりとりも、いまではもはや日常茶飯事だ。

 ノアの言う通り、傍から見れば一人で表情をコロコロ変えながらしゃべっている彼女の姿は異常だし、もし俺の声が口に出ていたとしたら、幼女を苛める成人男性の図ができあがる。

 どちらにせよ最悪だな。


「はいはい。これで満足か? お嬢ちゃん」


「ねぇ君、実はいじめっ子だったりする?」


 そんなことはない。俺にとってノアは特別な存在なんだよ。


「その言葉はもっと違う場面で使うべきだと思うんだけどなぁ!? というかまた声に出してないし!」


 ぷんすか! という表現が恐ろしく似合うような仕草と表情でノアが叫ぶ。

 こいつはよく『子供扱いしないで』というが、鏡を見てから言うべきだと思う。もしくは録画して自分で見返してみたらいいんじゃないかな。一人寂しく羞恥に悶えるがいい。


「そういえばいま何日目だ?」


 手に持ったコーヒーカップをテーブルに置き、ノアに問いかけた。彼女は頬を膨らませて「切り替え早いなぁ」と不満気に呟きつつも、俺の質問に答えてくれる。


「君がSランクダンジョンを踏破してから、今日で516日だよ」


「へぇ……やっぱりボスだけ倒してると早いな」


「SR君の倒すペースが異常なんだよ。まさかこんなに短い期間でここまで成長できるとは、僕も思わなかったさ」


 ノアの言う成長――それは俺が全ての三次職をレベル90まで上げたことを意味している。

 つまり、すべてのプレイヤーボーナスを取得し終えた状態だ。


 後は魔王と、それに付随する職業の中で有用なスキルを取得していくだけなので、半年も必要としないぐらいだ。

 

☆ステータス☆


名前︰SR

年齢︰20

職業︰魔王

レベル︰90

STR︰SS(S+1)

VIT︰SS

AGI︰SS(S+1)

DEX︰SS(S+1)

INT︰SSS

MND︰SSS

スキル︰射出魔法 挑発 ヒール 放出魔法 守護の盾 身体強化 重力魔法



 テンペストを長くやっている人――トッププレイヤーたちは、プレイヤーボーナス全て獲得していることがほとんどだったが、新規参入の人から見ればその状態になっているプレイヤーは総じて『異常』らしい。


 まぁ、レベル上げに必要な期間はかなりのものだし、初期ステータスと比べるとプレイヤーボーナスを全て獲得した状態のウィンドウはさぞかし異様に見えるだろうな。


 いま現在の俺のステータスも、指輪や黒の棺で補完されているとはいえ、ステータスの最低値がSSである。スキルは魔王がレベル50で覚える『重力魔法』に加え、下位のスキルも引き継いでいる状態だ。


 スキルを取得したら、あとはベノム戦に向けての最終調整。

 といっても、ノアに俺が昔使っていた武器を創ってもらい、それで使用感を確認するぐらいなんだけど。


 それが終わったら、いよいよ決戦の時だ。


 俺はセラたちを――世界を取り戻せるのか。

 それともベノムに敗北し、何もかも消え去ってしまうのか。

 俺とベノム――どちらも知っているノアの目から見ても、勝敗は五分五分らしい。


 

 緊張する反面――楽しみだと思ってしまうのは、きっと俺の性分なんだろうな。

 

 

お読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


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