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僕の家は第二生徒会室  作者: 南木
姫木学園埋蔵金騒動
14/26

秘密基地 2

 子供の頃によく平気で登れたなと思うくらい急な斜面を、何とか5人で無事に登りきると、ちょっとした広さの平らな地面と、子供の頃と何一つ変わらない小さな洞窟の入り口が見えた。


「秘密基地、まだあったわね」

「ほんっと懐かしいわね! 完全にあの頃のままで、埋められていないし、立ち入り禁止の看板もないわ!」

「公園管理の人たちは、この洞窟にまだ気が付いていないのかな? 今時正体不明の穴なんてあったら、真っ先に整備すると思うんだけど」


 ほとんど垂直に切り立った崖に、ヒビが入ってそれが広がったような形をした穴は、横幅が狭くて奥がよく見えない。

 子供の頃はもう少し大きく見えたような気もするけど、そう感じるのは僕自身が大きくなってしまったからかもしれない。


「おおぉ、実際に見てみるとヤベェなこれ! こんなところに未発見の洞窟があるなんて、ほとんど奇跡みたいなもんだろ! 秘密基地にしようと思うのも当然だな!」


 入り口から中を覗くアーモン先輩も、いつにもましてテンションが高い。

 アーモン先輩は、カバンの中をいそいそと探って懐中電灯を手に取ると、入り口から中を照らしてよく見ようとする。


「中は結構広いんだな」

「とりあえず嵩張る荷物は外において、中に入ってみましょう。全員懐中電灯は持ってきたわね」


 公園に遊びに来るたびに、親の目を盗んで3人でたむろしていた秘密基地……そこにいるだけでも楽しかった何の変哲もない洞窟は、まるで時間が止まっているかのように、在りし日の空間をそのままの姿でとどめていた。

 人一人分がギリギリ通れる入り口を入ると、中は一転して小さなドーム状の空間が広がっていて、まるで原始時代の洞窟式住居のよう。


「やっぱり、中もあの頃のままね。懐かしいわ」

「ほら、ここに大きめの石が三つあるでしょ。あたしたちが椅子の代わりに使ってたものだよっ!」

「お……ここの壁に石で削って描いた落書きも残ってる。…………何を描いたのかもう忘れてわかんないけど」

「落ち着く場所ですね。外と比べてずいぶん涼しいですし、ゆっくりとお茶を飲みたい気分です。皆さん、一度休憩にしませんか?」

「それより宝探しが先ですぜ先輩。アイチたちはここで宝の地図を見つけたんだよな。どの辺にあったか覚えてるのか?」

「それは…………」


 さて、肝心のお宝なんだけど、ちょっと記憶が曖昧だ。

 確か缶詰のようなものに入っていたような…………


「ねぇアキホ、これじゃないかしら」

「あ、それは!」

「ブリキの缶…………私もそれに見覚えがあるわ」


 思い出そうとしている間に、リンネが部屋の片隅に落ちている縦長のブリキの缶を発見してくれた。

 長い間放置していたせいで、表面と中は土や泥まみれになっているけど、この大きさと色合いは、間違いなく宝の地図が入っていたものだ。


「見つけたときには接着剤か何かで封がしてあったんだけど、石で何回も叩いて無理やりこじ開けたわ。ほらその痕が口のところにはっきり残ってる」

「さすがに蓋はもうないみたいですね。ですが、これで地図の出どころははっきりしましたね。ところで、地図にはこの場所に鍵もあるように見えたと記憶していますが」

「アキ、地図を出しなさい」

「わかった」


 僕はカバンから地図を取り出すと、それを懐中電灯で照らしてみんなで覗き込んだ。

 うーん、確かに鍵と鍵穴のマーク、それにこの地図自体を現すと思われる、二つ折りの紙の絵が描かれてるから、この辺にありそうなものなんだけどな。

 ここの洞窟のどこかを掘れば出てくるならばいいんだけど、別の洞窟を探すっていうなら、かなり気が遠くなるような話だ。そんな面倒なことは絶対にしたくないよ。

 あとは、意表をついて葦古野古墳の中に隠してあるっていう可能性もあるけど、公園の施設を「宝探ししたい」って言って掘らせてくれるわけがない。そうなったらもうお手上げだ。


「まあいいわ。私は端からお宝が見つかるなんて思ってないもの。適当にこの辺を穿り返して「探したけど宝はありませんでした」で、終わりでいいと思うわ」

「おいおい会長、宝探しを発案した本人がそんな消極的でどうすんだ! こんな楽しいこと、すぐにやめるのはもったねぇぜ! ほら、例えばこの奥の方のいかにもな壁画がある壁とか、何か埋まってるかもしれんぞ! アイチ、掘ってみろ!」

「その壁画を描いたのは僕なんですが……」


 アーモン先輩の手からスコップが手渡される。

 子供の頃の思い出をこの手で消せというのか…………と、いっても、今見ると何を描いたかわからないし、よくよく考えるとあまり愛着はなかった。

 それに、僕がやらなくても結局他の誰かがやるだろうし、だったら作者の僕が責任をもって消した方がいいかもしれない。


「よ、よーし、それじゃあ……だっしゃらぁっ!!!!!」


 僕は固そうな岩壁めがけて、力いっぱいスコップを突き立てる。

 非力な僕ではヒビすら入らず「カキン」とノーダメージの音がするのが関の山――――と思っていた矢先!

 スコップは「バリン!」と何かを破る音とともに壁にめり込んだ。


「え?」

『は?』


 見れば、スコップは薄い岩壁とその後ろに隠されていた木の板を貫いていた。

 まさかの一発的中に、僕たち生徒会はしばらく唖然としてしまった。


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