彼女の最後の物語
side彼女
よく、恋愛小説とかで病気になったヒロインと駆け落ちしたり、奇跡の生還を果たしたりするけどもそんなこと現実世界で起きないのは当たり前で、ひどく悲しく、寂しいものも当たり前だった。だから、私は恋愛小説とかが苦手だった。友達がよく恋バナ(恋の話)とかしてくるけどそれも嫌だった。だけどいまは花の女子高生だ、そんな話が飛び交って当たり前だと思う。彼氏とどこまで進んだとか、付き合ってんの?とかそんなつまらない話ばかりだった。王子様なんているわけがないじゃない。ロマンチックなんて言葉ほんとにいつ使うか教えてほしいほどだ。
だけれども私は他人事とは言えない、何故なら私は恋愛小説を中心とする小説家だからだ。
2年前中学3年のとき医者に言われた、
「あなたは頭を使えば使うほど、寿命が縮まります。」
聞いた時は?っと思った。
そんなこと現実の世界にあるはずないじゃない。
でも、医者の言ってることだからと両親は信じ込んで私を抱きしめて泣いた。
医者が言うようには私の寿命は私が頭で物事を考えれば考えると短くなってしまうらしい。しかも、死が近づいて来ると大切な思い出だけが消えてしまうらしい。
何故こんなことがわかるのかと言うと、私より前にこの病気になったひとがいたのだった。
あまりにも不思議な病気だったので医者たちの間でも話題になっていたらしい。
そして私がその病気の2人目となった。
この病気は特効薬も何も無いらしい。だから取り敢えず頭を使うなということだった。
「あと、10年は大丈夫だと思います。でも、くれぐれも気をつけてくださいね。」
なんだ、そのあやふやな言い方は、人の命をなんだと思ってるんだっとも思ったがどうでもよかった。
幸い友達と言えど親しい子が少なかったし、彼氏などと言う存在はいなかった。
両親は高校への進学を反対したが、思い出が作りたいのっとお願いすると涙ぐんで承諾してくれた。
こういう時だけ親ヅラするんだなと感じた。
でも、あと10年どう生きたらいいんだろうか。
私は思いついた、私がこの世界にいた証を形にしたかった。
そこで私は小説を書いた。ありがちで切なくて現実世界にはないラブストーリーを、私が見ただけで吐き気がするのに、今時の女子高生には受けたらしい。
意味がわからんとも思った。
ただ友達の話を聞いて、それを文字に表しただけなのに。この世界の女子高生は恋愛に飢えているらしい。
幸いにも、ペンネームで私とわかった人はいなかったので、私が注目を浴びることはなかった。
しかし、スランプのとき私は倒れた。
体育の時だった。誰かが私を呼ぶ声がしたけれど、わからなかった。体に力が入らなかったのだ。
気がつくと白い無機質な天井が目に入った。
「××さん大丈夫?」
保健室の先生らしき人が顔を出した。
「貧血だったのかな、急に倒れたのよ。3時間も寝ていたし、体は平気?」
困ったような顔で問いかけてきた。私としては病院送りにならなくてよかったと心底安心した。もし病院送りになったら、両親に泣きつかれる。
「平気です。教室に戻ります。」
淡々と言って私は教室に戻った。
それから、私の日常が狂い始めた。
主に2つだ。
1つは病気の進行もあってか眠気がすごかった。
2つ目はある人に付き纏われているからだ。
「××さんって、この本の著者だよね??」
放課後の静まり返った、教室で1人ボーッとしていたら
話しかけられた。
無視をした。関わりたくない性格の人だったから。
私は鞄をもって教室を出ようとした。
急に手を掴まれた。
「まってよ、僕さ××さんの大ファンなわけ、話したいんだよ。」
見るからに陽キャな男子に上目使いをされるってどんな状況だよっと、ツッコミを入れたくなるぐらいだ。
「私はあなたの言ってる本の著者じゃありません。」
キッパリとそう言うと、
「嘘つくのはよくないよ、ペンネームの×××って××さんの名前をいじったんでしょ?」
「それだけで決めるのはよくないと思うけど?」
「あと、××さんよくみんなのこと観察してるよね?この本とよく似てるんだよ、設定とかが」
私はこのやりとりが面倒くさくなってきた。
「じゃあ、聞くけど私がその本の著者だったとしてあなたになんの得があるの?」
「そりゃ、大ファンなんだからお話とかしたいじゃん?」
「私はあなたのためになんで時間を割かなきゃいけないのよ、」
「わー、酷い言い方するねー」
男子はニコニコしていた。気味が悪いと思った。
私は掴まれた手を振り払い。帰路についた。
次の日から私の日常が狂わされることになった。
「××さん!」
教室に入った途端、聞きたくない声が頭に響き渡った。
昨日、私の正体を見破った陽キャくんは、クラスではなかなかの人気者だったらしい。その彼が冴えない芋女の私に付き纏うため、クラスの女子からはイヤな顔をされ、男子からは面白がられた。
めんどくさい
私の頭にはこの言葉しか現れなかった。
陽キャくんを無視したところで何も変わらなかったらしい。彼は私に無視されようがお構いなしらしい。
1週間続いたある日、靴箱に手紙が入っていた。
今どきこんな事やる人いるんだと少し驚きながら手紙の内容を見てみると。
「放課後、体育館裏に来てください。」
興味本位には勝てなかった。
放課後に体育館裏に行ってみると、1人の女子がいた。
「あんたのせいで彼が私から遠のいちゃたんじゃない!!!あんたのせいよ!!」
とその女子が叫んだ。
あいつのどこがいいんだ!?
と本気で思ったが口には出せなかった。
この女子が本気で陽キャ君のことが好きだと感じたからだ。
「私はあなたが羨ましいです。どうして本気で人を好きになれるんですか?」
私は真面目な質問をしたと思った。
だけど彼女は違ったらしい。
「きも、ホントにあんたキモいよね。どうして彼があんたなんかに付きまとうのかが意味わかんないわ」
と言って、その場を立ち去った。
私が思っていることに共感できなかったらしい。
「あはははは、××さんもうムリ、」
突然の笑い声に振り向くと彼がいた。
「面白すぎるよ、」
その言葉に少しムッとして
「盗み聞きの方が非常識だと思うけど??」
「いや、ごめん、ごめん面白そうな話してたからついつい、」
「そんなに面白い話だった??、私は、疑問に思ったことを聞きたかっただけなんだけど。」
と言うと、彼は表情を変えて
「だったら、僕と恋愛しない?」
と言った。
「断る」
「即答!?もうちょっと考えたっていいんじゃない?」
と彼は慌てていた。
「私は、恋愛したくないの」
「じゃあ、なんで、あの女子にあんなこと聞いたのさ?」
「知りたかっただけよ。」
と言って私は、その場を去った。
私は次の週から入院する事になった。
数値あまり良くないらしい。
しかも、眠ることが多くなった。
死期が近づいて来たのだと、私は悟った。
両親は医者を攻めた。あと10年は持つと言ったじゃないか、と
でも、私は動揺はしなかった。医者の言うことなんて全てが正確なわけが無い。それに、私は小説を書いてたからそれなりに頭を使う。
死期が近づくに決まってる。
自殺行為なんじゃないかなんて思ったが、私は小説を書くことが辞められなかった。
辞めたら、半狂乱になるだろう。
だから、私は、死ぬまで書き続ける。
私の、人生を。
嬉しくもない見舞いが来た。
彼だった。
どうやってこの病院を調べたのか、問いただすと。
「先生に聞いたんだよ、俺とよく話してたから仲良いと思ってたみたいだったから、すんなり教えてくれたよ。」
いつもより元気がなかった。いつもチャラチャラしてて、明るいのだけが取り柄みたいなのに。
なんか、話しにくい。
「誤解が生じてるね。私は盲腸になっちゃたの、学校にはとうぶん戻らないから。」
「嘘、つかなくてもいいよ」
彼がいつもよりも低い声でそう言った。
「え?」
自分が、こんなに間抜けな声を出せるとは思っていなかった。
「君の病気は、頭を使うほど死に近づくんだろう?」
彼が、困ったような顔でそう言った。
「どうして知ってるの?学校にも話してないのに。」
「君の親御さんが、医者と話してるのを聞いちゃたんだよ。」
あぁ、そういう事かそれなら信じるしかないかと思った。
「その事、知ってもあなたには、なんのメリットもないよ、知っても意味ないと思うけど。」
「あるよ、メリットじゃないけどね、」
やっと顔を上げてくれたので目が合った。
その目は赤くなっていた。
「どうしたの?!その目!」
「気にしないでよ。」
「いや気にするよ!」
「自分のことを気にしろよ!!」
彼が叫んだ。
その声は初めて聞くような気がした。
「なんでそんなに怒ってるの?」
「直球で聞くんだね、君は」
少し彼が笑って見せた。
「私、人の心が分からないのよ。だからちゃんと言ってくれなきゃ分からないの。」
「君らしいね、」
彼が、らしくないことばかり言うから私までおかしくなりそうだ。
なんで、彼はこんなにも怒っているんだろう、
私には分からない。
だから、私は彼が羨ましい。
side彼
彼女はいつもひとりで本を読むかクラスメイトを観察してノートに書いていた。大人しげであまり人を寄せつけないオーラが漂っていた。
そんなわけか彼女に近づくものはあまりいなかった。
僕は性格とは裏腹に本が好きだった。
たくさんの本を読んだ。
そのおかげか、コミュニケーションは人並みにとる事も出来た。
最近、××さん、という作家が気に入っている。内容がスルスルと入り込んで読むのを止められなくなる。
でも、気づいたことがあった。
何か似ている。
主人公の友達の性格、描写、しぐさ、何か、とても身近に感じた。
不思議な感覚が何か知りたい。
すぐに行動に出た。ペンネームをいじってみたのだ。
でも、一筋縄じゃいかない。
ある時、気づいた、何が似ているのか、自分のクラスメイトだった。
それだけで自分のクラスにこの本の著者がいるとは思わなかったけれど、気になる人物なら一人いた。
それが彼女だった。
彼女の名前と著者の名前を合わせてみた。
当たりだった。
テンションが、爆上がりした。
好きな作家が、こんなにも身近にいたと思うとどうしたらいいか分からなくなった。
でも、思い上がるのはまだ早いのかもしれない。
彼女に確かめないと。
彼女が作家だったのは当たっていたと思う。
口は割らなかったが、聞いた時の反応がピンと来た。
すごく嬉しかった。憧れの作家だ。何を話そうか。ドキドキしていた。
でも彼女はそっけなくて、相手にしてくれなかった。もっと話したいのに。
彼女に付きまとうことにした。
話ができるなら何でもいいと思った。
今思うと、だいぶウザがられていたと思う。
それでも、彼女は話を聞いてくれていたと思う、、、多分だが、
彼女が体育館裏で女子と話していたとき。思ったんだ。
17年間生きていて、彼女よりも面白く、知的な人間には出会ったことがない
これからの人生でも彼女ほどの人間などいないだろうと。
体育館裏でのことがあってから、彼女は学校に来なくなった。
担任に聞いてみると、盲腸だと言われた。
小説がいきずまっているのだろうか、としか思わなかった。
担任に学校でのプリントなどを渡したいからと言って病院を聞き出した。
ダメといわれるか、と思ったがあっさり教えてくれた。
病院について、受付で病室を聞いて向かおうとしてる最中に、
「先生!どうしてくれるんですか!10年は生きられるって言ったじゃないですかっ!」
泣きわめいて医者にすがる女性がいた。近くには旦那と思われる男性がいた。
「あの子は、××はもう死んでしまうんですか?!」
その言葉を聞いたとき頭が真っ白になった。
××って、、いや人違いだ、彼女は盲腸のはず、、っとパニックになった頭をどうにか整理しようとした。
「やめないか、こんなところで。」
男性が女性をなだめた。
「学校なんて、行かせなきゃよかったのよ、そしたらあの子がもっと長く生きられたのに、頭さえ使わなければこんな早くはならなかったはずよ、、」
女性は細々とそんなことを言っていたはずだ。
聞き取れなかった、頭が追い付かなかったのだ。
彼女じゃないことを祈った。
お願いだから、奪わないでくれとそう祈った。
彼女の病室につくと、彼女は驚いた顔でこちらを見ていた。
驚いた顔から嬉しくなさそうな顔に変わった。いつもの顔だった。少しだけ安心した。
でも、、、、あっていて欲しくない事実が、当たっていた。
彼女が死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、、、、、
言葉ではいくらでも言える、書ける、でも、頭では理解できない言葉だった。
目、のことを聞かれるまで泣きそうになっていることに気づかなかった。
涙は出したくなかった。これは現実ではなくて夢なんだよ、ドッキリなんだよっとでも誰か言ってほしかった。でも、それを僕に言うのは筋違いだと思った。一番言われたいのは、彼女のはずだから。
でも彼女は、自分の死を受け入れていた。
なんで、受け入れられるんだ、死ぬんだぞ、もう会えなくなるんだぞ。
なのになんで、自分の心配をせず僕のことなんか気にしたんだよ。
君はなんて、優しくて、はかなくて、尊い人間なんだろうか。
「僕は君を失いたくない。」
と彼女に伝えると、ハトが豆鉄砲くらったような顔をした。
そんな彼女がすごく愛おしく思えた。
side彼女
彼がらしくもないことを言うからびっくりした。
でも、もう彼と関わりたくなかった。思い出を作りたくなかったから。
「もう、来ないで、あなたと関わると嫌な気分になる。」
そう、言い放ってやった。
「嫌な気分なんて、僕と会った時からじゃないか。」
彼は、苦笑いをした。
「今日は、お願いだから帰って。」
そう言うと彼は
「じゃあ、また今度くるよ。」
といって病室を出て行った。
個室でよかったと思った。私は泣いた。なんで泣いてるか分からなかった。ただ、忘れていくのが怖くなった。怖くて怖くて、、仕方ない。生きたいとは思わないからせめて思い出を忘れていくのは、やめてと強く願った。それでも病気はなにも聞いちゃくれない、そんなこと分かってるのに。この世にはどうにもならないことぐらい幾つもあると分かってるのに、、願ってしまう。
両親がもう学校には行かないでと泣いてすがるので、私はずっと病院にいることとなった。
入院費だってかかるのにと思ったが、私の体で新薬が試されることになったのを聞かされた。世界でまだ二人しかかかったことがないのにと思ったが、私の病気を研究している人がいてその人が新薬を試したいとのことだった。両親はその話にしがみついた。治るのなら、少しの可能性があるのならと、私の意見も聞かずに同意書にサインをした。その研究者はそこそこの偉い人だったみたいで入院費をなくしてもらえたのだった。晴れて私はモルモットになった。