StoRy-2
その後、俺は昼からの授業を休んだ。
あの少女――黒条由美――のことが気になって、授業に集中できないし、根本的に授業が嫌いだからだ。そして、端的にいえば、ワルだから。
子ども時代に両親を交通事故で失った。その時、唯一の妹は泣きじゃくって大変だったことを覚えている。俺は、頭が真っ白になっていた。冷たい棺の中に、両親を見た。綺麗な顔で、死んでいた。ただ、なにか悲しかった。空気とか泣く声とか、そういうものじゃなくて、なにかが切なかったのだ。
それから、俺はとにかくぐれてみた。自分の思う悪いことを色々してみた。人を殴ってみた。万引きもしてみた。授業放棄とか学校を荒らしてみたりもした。そんなことをして、高校生になった。だが俺は高校生になるに向けて、そろそろ自分を変えたいと思った。
《ところが、何一つ、変わらなかった》
身の回りも、体も、中身も、そして世界も。
なにもかも、変わらないままだった。
だから、今も変わらずぐれている。
じょじょに流れている雲の群れを、ぼんやりとした頭で眺めながらそんなことを思い返していた。てっぺんの太陽に照らされたいくつか千切れ雲があって、その間から青空が顔を覗かせているいつもの景色。
午後のひととき。
すると、下からいくつかの生徒の声が拾えた。しかし、その声は明らかに楽しい雰囲気のものではなかった。そして、耳を澄ますとそれは危機を感じさせる会話でもあった。