StoRy-1
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初夏。
蝉が鳴いている。
太陽は笑っていて。
月は泣いて、お前は黒。
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高校の、この階段を登りきると昼間の街を展望できる屋上に到達する。ギラギラとしていて、それでもって綺麗なこの街を一望できる。夕方になれば紅蓮の夕日が波打っていて、夜になれば、静寂が待っている。刻一刻と変わり続ける街を望む事が、俺の趣味。
今日も変わらず、金髪のふんわりヘアーを揺らしながら、階段を一歩一歩進めていく。
「お、おい。なんじゃ、こりゃ」
そして見たもの。
俺が屋上の扉を開け、真っ先に見たもの。
《女子生徒が、飛び降りようとしている》
ここは4階上の屋上。飛び降りたら、即死する。
「お、お前! なにしてんだ!」
すると、無機質でひんやりとした声が、細々と聞こえてきた。
「自殺するのよ」
「な、なんで」
「疲れたから」
「ちょちょっと待て。もう少し生きてみたらどうだ?」
「……生きていても楽しくない」
まともに会話できることを知り、一安心した俺は少しずつ少女に近付いていく。
「楽しくないことないさ。楽しい事だらけだ。まだ世の中を見てないだろ?」
「……それもそうね」
すると、あっさり飛び降りるのを止めた。
「……あんた名前は?」
目の前で見る彼女はほっそりとしていて、真っ白で、身長が低くて、そして真っ黒の服を纏っていた。まるで聖夜に見るシリウスのような輝きを持った彼女。しかし、どこか悲しそうな顔をしていた。
「黒条、黒条由美。あなたは?」
「俺は園田修斗」
俺は右手を差し出すと、少女はそれを無視し教室へと帰ってしまった。