特1『金さんと特急旅行電車』
YOUTUBEには投稿済み・・・今回は少し二次創作を含む
『金さんと特急旅行電車』 幻想HKT104発明所長
俺様・・・物比部 金、三十一歳。現在、喫茶『発明所』に勤務している。仕事と言っても、所長に資本の出し惜しみをさせたり、資金援助をするぐらいだ。所長、得穂 作は現在上空に行っているから、俺様たちは留守番となっている。
北朝鮮・・・
冷菓「・・・まだですかね~」
所長の実験と幸運さんのおかげで来ては居るのだが、なかなか降りてこない。雲域まで怪しくなってきた。空を彼女と見上げていると、黒い点が見えた。
冷菓「あ、何ですかね?あれ。」
少し待っていると、分かったことがある。黒い物体は作が造った蒸気機関車だった。操縦士を待つと、その片割れが出てきた。
相棒「た、大変です!」
冷菓ちゃんのおかげ?で、現場翻訳されている。
金「ど、どうしたんです?」
相棒「作さんが落ちました。」
冷菓「え?」
金「あっ・・・」
相棒「見てませんか?」
金「いや、探さないと・・・」
俺様たちは地上をある程度探した。しかし、所長は見つからない。そんな中、現地の人が呼びに来た。
「皆さ~ん!変なものを見つけました!」
俺様たちは彼が案内する場所へ向かう。そこは沿岸である。目線を下へ傾けると、桟橋に横付けされたピンクとグリーンのシマが映える、スリーライトの路面電車が着水していた。
冷菓「電車、ですよね?いったいどこから・・・」
近づいて確かめるしかないので、恐る恐る近づいていると、この電車のドアが開いた。電動と思われるスライド式だ。その間から緑のロープが支柱に投げかけられ、男性が一人、降りてきた。
金「つ、作?」
???「あ、金さん。」
金「何していたんだ?」
作「・・・依頼です。一緒に来てください。」
金「何でだよ・・・」
作「中で話しますから、乗ってください。」
金「は?だ、だったら此処はどうするんだ?」
作「あ~どうでした?」
金「どうって・・・成功だろ?」
作「じゃあ、良いじゃないですか。」
金「いやいや、機材とかはどうするんだよ。」
作「う~ん、あ、そうだ。」
金「ん?」
彼は車内に首を突っ込み・・・
作「あの~車をくっ付けて走行って出来るかな?」
???「何をですかな?」
警官帽・・・いや、車掌帽を被った茶髪の二十歳ほどの女性が桟橋にまで降りてきた。
作「え~私達の機械も一緒に運んでください。」
車掌「待ってよ。まず上陸するからさ、皆に退いてくれといってきてくれないかい?」
作が皆に退くように言って数秒後・・・
あの電車の上から誰かが出てきた。トゲのような金髪の幼女は、手から糸のようなものを出した。彼女の糸はその体に比べて強いのか、二本ほどの糸であの電車上に立ったまま、海面から沿岸の高台に持ち上げた。俺様たちがそちらに向かうと、車掌が待ち構えていた。
車掌「金さんと冷菓さんですね?」
金「あぁ。」
車掌「どうぞ中へ。」
この電車は一両なので、他に部屋は無いはずなのに、さっきの幼女の姿はなかった。代わりと言っては何だが、白い髪をポニーで重力に任せ、端を根元に折り返し結んでいる女性が座って居る。髪だけでなく、白い生地の前に、黄色の錨が付いている海軍帽により、運転席に居る異質さが拭えない。
冷菓「ちょ、どうしたんですか?もっと奥に行ってくださいよ。」
金「あ、あぁ。」
作も乗車したので、車掌は令を出した。
車掌「皆さん乗りましたね?~それで、何処へ行けば・・・」
金「そこの倉庫だ。」
車掌「はい。よろしく~」
白髪の運転士が反応を見せる。ガチガチッっと、マスコンを回すと、チンチンッっと何処からか音が出て・・・
金「あれ?走ってる。」
前には線路が無いのにカタン、コトンと鉄がくぼみに当たる音を立て、景色が流れている。
作「それはですね~この電車は・・・う~ん、特別な電車なのです。」
金「特別ね~だから海面に浮かんでいたのか・・・」
作「そうですね。詳しくは分かりませんが。」
勿論つり革はあるのだが、車内は木造、暖かい光が俺様たちを包み込む。やはり一両なのだが、後ろにはカプセル状に造られた木枠のガラス扉がある。しかし、そこからは外の景色は見えない。もっと見渡してみたいのだが、外の景色が暗くなった。
車掌「これは、蒸気機関車だね~」
作「あぁ、私の自信作だよ。」
車掌「これを持ち運べと・・・」
作「えぇ。」
車掌「では、彼を呼びましょう。」
彼女は後ろを向いて、左側にある蓄音機に向かった。そして、彼女の車掌帽を転盤に乗せ上げると、そこから中円が銀色の黒レコードが出てきた。彼女がそれにピンを刺し、レコードを回し始めた。すると当然のことだが、楽曲が聞こえてきた。『ダウンロードヴィークル・・・』なんていう言葉も聞こえた。そのすぐ後ろのあの扉から白い煙が出てきた。
金「なっ・・・」
煙が出ているのに、車掌はびくともしない。故障ではないようだ。では、蒸気が薄れてくると、人影が見えてきた。霧が晴れると、シルクハットを被った男性が扉を開けた。
???「・・・あ~あ、呼ばれましたか・・・」
車掌「お願いしま~す。」
???「何をです?」
車掌「あれをくっ付けてください。」
???「あ~じゃ、ちょっと失礼して・・・」
彼は出入り口まで歩いていくので、運転士は運転台横の上レバーを下に倒した。彼はこれを降り、作の自信作の三メートル前まで近づいた。「ダウンロードヴィークル改」と聞こえたのだが、その自信作が銀色の水のように溶けた方が驚いた。
作「あっ・・・わ、私の・・・はぁ、作品が~」
車掌「作さん、後ろを見てください。」
作が窓の鍵を外し、後ろを見ているのをミラー越しに見る。
作「お~これは、くっ付いているのですか?」
車掌「はい。」
???「では、僕はこれで・・・」
彼がカプセルに入ると、また蒸気が発生し、気づけば居なくなっていた。その奥には薄暗い空間に、ダイアルやバルブが見える。
車掌はレコードを外し、帽子の中に入れ、蓄音機の横であの特徴ある声で通話し始めた。
車掌「え~改めまして、今回は旅行電車、トラノサモン号をご利用いただき、まことにありがとうございます。この電車は~アラル行きでございます。所要時間は三時間分です。その間、お客様にはラジオと新聞の視聴をお勧めいたします。」
逆進を始めた視野の右側には、彼女が操作を始めた台に乗ったラジオの様な物と、白紙の束が入った段々棚が在る。俺様はこの奇妙な電車に乗せてある、新聞と言う物が気になった。近くにそんな物があるようには見えないのだが・・・
金「すまない、新聞って何処だ?」
車掌「そこに在りますよ。」
ラジオ横の白紙が新聞と言っているらしい。仕方なく、それを手に取ることにする。そうしてかがんでいると、作が車掌に声を掛けている声を聞く。
作「トイレに行ってきてもいいですか?」
車掌「勿論ですよ。」
俺様はトイレが何処にあるのかも気になった。彼を見ていると、後ろの壁端に手を掛けた。よく思い返してみると、銀色のくぼみが在ったのだ。そして彼は左にそれを引いたのだが、あの通路に壁がはみ出ることは無かった。どうせさっきの空間のことだろう。気を取り直して俺様は席へ戻る。しかし、白紙の束を持って。
裏返すと印刷された黒文字が在る。
『トラノサモン号完成』と、書いてある辺り、記念の新聞だろうか?逆進が止まると突然、チリリリリンッと、ベルの音が変わり、列車は・・・上へ動き始めた。予告が無いので驚くことばかりだ。ここで彼女、冷菓ちゃんに視線を送る。彼女は白いジャンパーを肩にかけた操縦士に注目していた。今までマスコンとブレーキくらいの運転だったはずだが、その手には数年前に発売された、青いゲームのコントローラーのようなものが握られている。
しかし突然、ラジオが音を立てた。内容に耳を傾ける。作がトイレから戻ってきた。
少女「今回の話は私、魔動林 霧がお届けするんだぜ。」
霧「私はつくるに宴会の帰りに聞いたんだぜ。」
その名を聞いて、俺様は新聞を見通す。・・・新聞には、先がすでに書かれている。
霧「私は造に宴会の帰りに聞いたんだぜ。造は空間を操るほどの魔法を操れるのに、なんで電車なんか造ったのかってな。そしたらあいつ、「私は旅の途中を楽しみたいからね。」ってさ。これが賢者の余裕って奴か。」
金「なぁ作。この造って奴、お前は知らないか?」
作「あ~この電車を造った人なんて知りませんでしたよ。」
金「あぁ、そうか。」
俺様はさらにページをめくる。
『金 幸運氏 逮捕』
俺様たちの入国を許可した人だろう。ラジオは文字に続く・・・
男性「北朝鮮に入港した我が国の船が押収され、副委員長の幸運氏が逮捕されました。予想外ながら、情運氏は賠償金として六十万の支払いを三ヵ月後に入国した個人経営者に請求すると発表。この経営者は今・・・」
ラジオでは此処までだ。しかし、新聞には二千三十一年 十二月 十日発行と書いてある。・・・作は気づいたのだろうか?
作「船での輸送でも二十万かかるのに、私は一体どうしたら・・・」
車掌が一瞬黄色く光ったような、ランタン片手に受話器を取った。
車掌「この電車は~現在より特急、アラル行きに変わります。所要時間は三分分です。」
このアナウンスが終わると、操縦士が立ち上がった。そして今まで気づかなかったのか、天窓の下の床に、銀枠で同色の板がはまっている。そこを彼女は引き上げたのだ。中が少し見える。黄色い梯子の端は床のはずだが、角が湾曲し、白い照明が見えた。彼女は俺様たちの下を通って行った。五秒後、俺様たちは雲がさっきと比べ物にならない速さで、過ぎて行くのを一時体感した。
ゆっくりと止まった背景・・・
操縦士が登ってきたが、俺様は車掌に断ってトイレに向かう。すぐに戻ってくると、既にこの電車は地に足、車輪を付けていた。右の窓から外を見渡すと、右の大きなくぼみから左へ地平線まで、細く浅いくぼみが続いている。作たちはもう居ない。外に出たのだろう。出入り口に向かっているのだが、左に人だかりを見る。作たちが黒人たちとこの電車を背に、対面している。もし、喧嘩ならなら止めなければ。俺様は早歩きになって外に出ると、皆こっちを見る。
作「金さん、こっちへ。」
金「あぁ、こちらは?」
車掌「依頼主たちです。現地のほうが分かりやすいでしょう?」
金「まぁ、そうだな。」
右の叔父さんが俺様たちを見渡して、話し始めた。
???「揃いましたな。俺はジェフリー・ポーマス。俺たちゃこの辺で綿花を育てていただ。だども、川がひ乾びやがっって、役人が令を出してきただ。西の海から水路を伝って、この海を潤そうって・・・まさか、こんな水路のために綿より油を売る羽目になるなんてな~」
金「何が不満なのです?」
ジェフリー「水路は開通している、だども・・・パイプやポンプっちゅうもんも必要と聞いたときゃあ、驚いたとよ~・・・そ~んな金、俺等には元から無いって思っちょるんに・・・」
金「う~ん、つまり金が必要だと。」
ジェフリー「そん前に、役人はもっと、俺達の苦労を考えりゃ良いんじゃなかろか?」
作「あ~要求が多すぎたんですね?」
ジェフリー「そうじゃろう?」
金「あ~ちょっと、冷菓ちゃん?」
冷菓「はい?」
金「ノートを見せてくれないか?」
冷菓「は、はい。」
俺様は彼女が書いた手帳をめくり、さっきの会話を見つける。
金「う~ん、金が必要?」
ジェフリー「あ~在るんなら助かるんだけんどな~あんさんらは、そんなん持っちょらんやろ?~」
金「クッ、八十万か~」
作「新しい路を作るなんてどうでしょう?」
金「だから、金が無いんだって。」
作「そこをですね~なんやろな~」
金「なんだよ・・・」
作「クソッ金さえ無ければ、どうにかなるというのに。」
金「はぁ?何言ってんだ。とうとうイカれちまったか?」
車掌「そう言う事ですか。それなら、良い助っ人が居ますよ。」
車掌は昼なのにランタンを持ったまま、電車に入った。俺様は中頃まで入れたが、すでに音楽が鳴っている。(サモンズゲート)召喚カプセルの辺りから、緑の筋と紫の泡が出始めた。『マジョリズム』と優しく発音され、人影が見える。今度は左手に棒を握られているようだ。明らかになると、この人も常連のようだ。すぐに理解し、ここからでは見えない取っ手を引き、出てきた。その容姿、車掌達と同じほどの背丈に、バッハのような白髪。緑の魔女の帽子には、黄と紫の音符がつば上に載ってある。シャツは赤をベースに金の縦ラインが細く入っており、肩からは緑の花が咲き出ている。金のベルトには穴が無数に開いており、不規則だと思える。スカートはシンプルにシマウマ。靴は磨きのかかった、紐無しの白。しかし、顔は曲線模様入りの、陶器の仮面で見えない。その杖は金色に輝き、端に紫の三角ビーカーがくっ付いている。
???「さて、何用かしら?」
車掌「この方、作さんをスターにしてください。」
???「ふ~ん、ではこの宝石に触ってくださる?」
作「はぁ。」
???「では儀式を始めましょう?」
俺様たちは小屋にこもった人達を尻目に、訳も分からず団体として固まっている。俺様はあの人が、魔法陣でも書くのかと思っていた。俺様たちと少し離れていたからだ。しかし、あの人は杖を左に浮かした。片側がこちらを向き、変形する。
『マジョリティック・スター』あの人がそう言ったように聞こえたが、そのときには、ビーカーが黄色の矢じりに変わった槍が、後部に黄色い蝶を連れて飛んできていた。俺様は避けたのだが、作は避けないだろう。ある程度距離をとって、彼を見ると・・・立ち上がる緑色の背中が見えた。刺さったのは、彼の後ろに居た冷菓ちゃんだった。
???「あらまぁ・・・どうなるかしら?」
効力は四年間、二人と同じく『今は無賃社会だから』が、多数派の考えになったらしい。宴会車両が下に繋がった、この電車で、四年後の真実のデモに供えなければならない。
俺様が座っていた席に、白紙の新聞を置きっぱにしていた。これで未来は変わっただろうか?
ラジオから・・・
男性「『本当の貧困は 何も見出せずに 惨めに散っていくことだ』」
SDGsには、貧困を無くそうと言う目標が在る。俺様たちはその回し者だったってことか?それなら俺様の仕事はどうなるんだよ。役人は適切な令を下せるだろうか?いや、特急でなければ困るのだが・・・
女姓「これは発明家の潮中 北斗さんが学校と言う、若かりし頃の仕事場で、所狭しと書き留めた言葉です。専門家の皆さんはどうお考えですか?」