サプライズ・ダブルミーニング
それから会話の方向をストゥーカに向けながらデウスとの取っ組み合いで飛んでった話を再構築する。
「えーと、ああそうだ、俺の正体をつかんだ経緯を話してオブザーバーとして何をすりゃいいか、だっけか」
「そうです、あなたには他の転生者や勇者と呼ばれている人たちに無い物を持っています。それが様々な異世界を渡航したという経験です。
聞けばあなたはその手の情報を収集してきたと聞きます、是非ブレーンとして、その知識をこの世界を守るものとして転生者対策の力として振るっていただきたいのです」
やれやれトラブルや唐突なゲストも来たのもあるが段階的に根掘り葉掘り聞いてようやく本題だ。
我ながら疑り深いというのも面倒くさい事だったんだなと再認識する。
「すいません……そういう力が必要だって事はもしかしてそういうのが必要な事態に陥ってるって……事でしょうか?」
秘書の姉さんが恐る恐る手をあげながら発言する。この姉さん抜けてる割にはちょいちょい話の要点をついてきやがる。地頭がいいのか政治家のお家柄なのか。
「あります、しかも出来るだけ早急に請け負ってほしい物が」
「即答だな」
「貴方の事が少しわかってきた気がしたのでこの返しが適切かなと」
ストゥーカは観念気味に、だがさっきのひと悶着で緊張がほぐれてきたのか少しは自然味が増した感じはするな。
俺は少し振り返りつつ冷静に思案する。
打算と言っていい。これを受けて渡りをつけて情報を増やすか。
だが、それだと事実上異世界サロンに参加することになる。
晴れて反政府組織の仲間入りだ。面倒事と言っていい。そんなのはごめん被る。
だが商売として考えるならどうだろう。ほぼ内容は投資話と言っていい。分はやや悪め。
報酬は国直々の後ろ盾、うまくやれば政界入り何て芸当もできる。興味はハナクソほどもないが。
「……最後の質問だ、なんでさっき秘書の姉さんの保護を拒否した?まかりなりにも総理の親族だろう。その理由と返答いかんで問答無用で話を打ち切る」
多分この話が一番の向こうにとってのアキレス腱だ。重箱の隅はきっちりつつかせてもらう。
「……」
「構わんよ。寧子、どうやら言い出しにくい事のようだが大丈夫かい?」
「……聞かせてください、それだけの理由があるんですね?」
ストゥーカが急に眉間にしわを寄せて言いよどむが話題の内容故総理が二人に気を使ってくれたようだな。
なんかここにいる連中物分かりよすぎて逆に怖いんだけど。デウス以外は。
「獅豪さん、あなたを初めて見たとき確信し(みえ)ました。貴方には――――――――――――」
!
突如勢圧した陣地、つまり俺の仕掛けたこの場所に別の反応を感知した。
「話は中断だ、誰かがここに接触しようとしてる……人目が何気に無い場所だから大胆に攻め込んできたとみるべきか」
「おそらく私たちの追跡者でしょう。」
「ちょっとまってよ、キミ星読みだろ?先読みや的中に関しては専売特許じゃなかったの?」
オイオイとデウスのツッコミが入る。
「言ったでしょう?敵にも星読みが多くいると。複数人でしかも敵味方に分かれて、しかもその介入が多ければ多いほど確度にブレが出るんですよ」
「つまり読み合いに人が殺到するとただの駆け引きになり下がる訳か……」
「ちょっとまって?となると基本コイツ役立たずにならね?」
「失礼なこと言わないでください!」
俺の辛辣な返しにさすがに強めの異議申し立てするストゥーカ。
半分ムキになってんじゃないよ。子供か。
「どうする、迎え撃つか?」
「いえ、それをすると祈祷所にあなたの存在を探知される恐れがあります」
「顔を隠して戦っては?」
姉さんが普通だが妥当な提案をする。
「いいえ、その程度で祈祷所を欺けるなら苦労はありません。……その手段を試してマークされた人間を確認していますので」
「そううまくはいかんか…………一つ聞く。」
ふと漠然ながら思いついたことを言葉にしてストゥーカや総理に投げかける。
「あんたら、どうやって祈祷所の目をすり抜けて対象を保護している?」
「といいますと?」
「どうやって祈祷所から一度名前を書かれた要人を保護したり敵の目を欺けてるんだっていってるんだ」
「つまり……どういう事?」
デウスが疑問を問いかける。にぶいやっちゃな。
――――――――――――バン!とドアを蹴破る音がした。
何者かが入ってくる。人数は二人、一人は弓を持った幼さが残るような少年、グレー掛かった、短髪のナチュラルショート・年の程は16~18と言った所か。
もう一人は少女、ロングヘア―の年の程は20前後、三又の槍を携えていた。
薄緑掛かったセミロングで美人だが日本人離れした顔付きだ。
どちらも金属製の胸当てや革製の装備に身を包むという現代にそぐわぬ格好でやってきた。
この世界では広く見積もってもよくできたコスプレにしか見えないが。
二人は部屋に入って直ぐ辺りを見回す。
「shit!感づかれて逃げたかしら?」
「そうでもない、ソファーがまだ温い。まだ遠くへ行って無い」
おいおいと言わんばかりのリアクションで女の方が悔しげに流暢な発音で男に尋ねる。
しかし男は冷静に場を見渡し様子を見まわす。
「……監視はしていたからな、外に出た形跡は無いという事は……」
男は何かぶつぶつと唱えると瞬間部屋が光出し、その光が一つの生き物のように
動き出しながら飾ってある机の上に所せましと並べられた調度品の置かれた机の足元にその流れをとどめる。
男が机を蹴飛ばして足元を探ると、隠し階段を見つける。
「やるじゃない。人生こうでなくっちゃ」
女は口笛を吹きながら男を持ち上げる。
「気を抜くな、犯罪者を逃がしたらどうする」
「あら?余裕のない事、今のご時世私達から逃げられる奴なんてそうそういないでしょ。いつも通りやりましょ?」
女は軽口を叩きながら先頭になって階段を下りる。そのあとに弓使いの男も階段を下る。
階段を降りるとそこはシャッター商店街にある一店舗にそぐわぬ地下通路が広がっていた。
ご丁寧に明かりは若干薄暗ながらも設置及び整備までされている。
「wow!日本の住宅事情って手狭をウリにしてるかと思ったけど」
「そんな訳あるか、多分異界化してるんだ、こんな小さな店舗の下にこんな空洞はありえない!」
そんな語り口調で女はややテンション高めに、男は慎重気味に先に進む。
進む――――進む――――進む――――されど出口は見えず。追跡者二人は
通路に広がる闇の深度を一歩一歩深めて先に進む。
瞬時二人の目の前の奥から光が差し込む。
「……出口?」
「Noo!?違う!?ヘイン私の後ろに!!」
ヘインと呼ばれた弓使いは唐突に叫びだした槍を持った女の後ろに隠れる。
女はすぐさま何かを唱えると二人の目の前に水の壁と思しきものが現れた次の瞬時、光と思われていた物が炎の奔流となって二人の間を流れていく。
水の壁がなければ二人とも確実にダメージを追っていただろう。
「誰だ?!」
ヘインは炎の先にある人影を察知し手持ちの弓を構えながら声高らかに向かって叫びだす。