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サプライズ

「その辺で勘弁して頂けませんかね」

部屋の扉が開くと一人の男が出てきた。年は40代後半から50代、白髪混じりではあるが洒落っ気のあるセットの仕方にスーツときた。

だが―――――俺はこの男を知っている。むしろそっちの衝撃が強すぎてるのが本音だ。

例えるならモノマネ番組でご本人登場並みの衝撃だ。


「オイオイオイ、何の冗談だこれは?」

「本当にオイオイだよ、欧米式のサプライズか何かか?それとも本当にモノマネ番組でのご本人登場的な演出か?」

「お……」

俺だけじゃない、デウスも秘書の姉さんも驚きを隠せていない。


「伯父さん!?」


秘書の姉さんが今日一番の声を張り上げる。


「やあ、寧子。あ、鷹村クン、だったか、すまないが彼を離してあげてくれないか?彼が失血死すると現状が間違いなくご破算になってしまう」


腰が低い!しかもノリ軽ッ!?

だがこの男を知ってるのも当然だ、秘書の姉さんの伯父であり現総理大臣・佐嘉一朗太さがいちろうただからだ。テレビやらネットニュースやらで見知った顔だからな。


「伯父さん、これは一体……」

姉さんが当然の疑問を呈す。だが俺は経験則から一つの勘繰り混じりの問いを投げる。


「総理、アンタこいつらと裏で繋がってるな?ズッブズブに」

「……「深淵」君の見立て通りの人物だな、察しも度胸も格が違う」

「ふざけんなよ、自分の縁者利用して交渉のテーブルにおびき寄せるたぁどういう了見だ!」

「!」

秘書の姉ちゃんの表情が驚きで一変する。


「何故、寧子が無関係と?」

「この姉ちゃんは腹芸をするには無口で消極的すぎる。俺とデウスのやり取りについて行けてないぐらいだからな。」



「……」

全員押し黙る。だが言わせてもらうぞ。


「大した周到ぶりだな、自分が手紙を書いたら警戒される。ならこっちの身内のデウスを利用してそれを和らげるだけじゃない。誘導のための異世界サロンとか言う受け皿も完璧と来たふざけんなよ!」

「……佐嘉総理、手紙の代筆と懇願は確かにこの世界の名代の端末として許可したが私達の関係までしょうもない駆け引きでぶち壊しかねない事まで許容した覚えはないけどなあ」



お気楽神族のデウスでさえも状況をようやく把握すると苛立ち交じりで半ギレ先を総理に向ける。


先に言っておくがデウスはこの世界に肩入れしすぎてるぐらいにこの現状を危惧している。

そういう契約だからだ。だから別にこいつは自分の仕事をしただけでそういうものだと納得済みだ。



「ただ広門、だがこれだけは言わせてくれ」

「なんだよ」

「……いつまで彼を鼻フックするつもりだい?」

「状況見ろよお前なあ!そういうとこだぞ!」


修羅場ってるのにまるで締まらねえ!流れがちょいちょい急展開だったからすっかり忘れてた!

てなわけで深淵の鼻の穴を解放してやった。

鼻血がすごい事になってるな。



「あぁ……総理、助かりました」

「助けたのは総理じゃなくて俺とデウスだろ」

とツッコミつつ深淵は明らかに狼狽した状態で手を鼻に当て、ふらふらと椅子に座りだす。


そんな深淵を横に見やりつつ、総理は頭を下げる。角度は90度と謝罪としては最大限の角度だ。

流石政治家先生、土下座程の見苦しさもない胴と年季が入った謝罪の仕方だ。


「お三方にはこういった形で巻き込んでしまったのは一切合切謝罪します。

ですが事態は急を要します。なにとぞ交渉のテーブルに立って頂きたい。」

「虫のいい話だな。獅豪さんにも言ったが、例え結果論でも異世界人を政治的利用する人間は信用しない、ましてや用意周到に小細工する奴はなおさらだ」



当然だ、人死にが出てるのは問題だがその場しのぎだけで人を利用するだけの奴の放逐も後味の悪さしか残らないのが人の常だからだ。


「鷹村さん、私からもお願いします。確かに私は利用されたかもしれません。

ですが自分だけ生き残ったとしても、苦しいだけですが……何より生き続けなければ何も始まらないのも事実です!人としてその当たり前のことを続ける為に貴方の力が必要なんです!」

……またやるときはやるモードで俺を見やがって。まあ真剣で気合入ってるのは買うがね。


「約束します。貴方や異世界の人たちを無下にするような結末には絶対にさせません。話を……聞いてあげて下さい」

ガチ恋距離みたいな近さで人を偏屈老人みたく諭しやがって……


「いいだろう、お二人さん、この姉さんに感謝するんだな。ただし情報は極力開示しろ。

嘘・虚偽・紛らわし、過不足なく的確に伝えろ、やるかどうかの権利は俺が決める

いいな?」


「もちろんですありがとうございます」

総理は俺がいいというまで頭を上げるのをやめなかった。

やれやれ、国のトップがやる人たらしの片鱗が見えた気がするぞ。


とりあえず総理を加えて事実上の会談をすることになった、とは言っても相手は

他国の首脳陣じゃなくて縁もゆかりもない一般ピープルの俺だがな。

人間の人生として一生に一度まずありえない貴重な体験だ。


「しかし広門仮にも一国の首相相手に喧嘩腰で応対とか肝が据わってるというかねじれてない?」

「うるさいよ、これでも異世界にいたころは色んな国のトップとやり取りしたり喧嘩売ったり買ったりしてたからな」


そういうこった、実は実績や経験があったりしたりする訳だが結構転生や召喚されて能力を振るってイベント解決をして目立ちだすと勇者ブランドとして国からお呼びがかかる訳だ。

異世界あるあるだな。


もっとも俺の異世界デビューは開幕解説無しで野に放置されたがな。初期の説明なしの不親切なドット時代ゲーム並みの不親切さだ。


そんな小粋なやり取りをしながらって感じで会談開始だ。



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