寧子の旅路、繋がった先の始まりへ
「カッ……!ハァッ!…………ハァッ!……終わったぞ……」
治療が終わると俺は力なく外聞も減ったくれもなく無様に倒れ込んだ。
ここまで汗まみれになるのも久しぶりだ。口の中もカラカラ。体の中の物が一切合切抜けきるようだ。
そらそうだよな、連戦して死に物狂いで神経使ってこれだ。俺のMPも0になるわ。
「寧子ハン!」
「傷は塞がったが流れた血までは元に戻らん。医者にさっさと連れていって輸血してもらえ。連絡先は……ここがいいな。」
「……わかッタ!」
俺は登録してる行きつけの診療所の電話番号が記録されているスマホをウィラーラに手渡す。
「……カナマリだっタカ。助かッタ。ありがトウ」
ぽつりとウィラーラがカナマリにつぶやくと寧子を抱えて診療所に向かっていった。
「悪りぃな。腕輪壊しちまった。」
俺は倒れたまま、壊れたスキルの媒体をカナマリに差し出す。
「気にするな。変わりはいくらでもある」
「そりゃあ助かる」
「これで貸し借り無しだ。次会った時は容赦なく、だ」
「いつの時代の人間だよお前、タイマン張ったらダチになれるほど俺はお安くないぞ」
「ハハハ!そりゃあよかった。ならなおさら次は叩きのめせるな!」
「……じゃあな!近いうちに面倒な事になると思うが兄さんなら大丈夫だろ!……死ぬなよ?」
俺は背中を向けて去るカナマリに地面に背を付けたまま無言で手を振る。
「……あいつ生前昭和中頃生まれだな多分絶対そうだ」
何てぼやきつつ、俺は事の成り行きを振り返る訳だが。
異世界人、転生者達のそれぞれ思惑、破界同盟、それによる異世界人同士の結託、ハワウドの遺産、メイスンという男。
……ッチ、俺の人生プランが音を立てて瓦解するのは間違いなしか。
「あ、そうだデウスとストゥーカは大丈夫か?ねこはんがオトリになって逃げおおせたっぽいとは
聞いたが……あーそうかスマホウィラーラの奴に渡したんだったか。」
そんなぼやきをしてるとガタッと音がした。
俺はしんどい体に鞭を打って起き上がる。また敵襲か?!それともメイスンの奴がまた死んだふりで奇襲を……?!
などとと考えていたが音の出所は…………例の箱だ。
確かメイスンの奴、ゲロなんとかとか言ってたっけか?……ハワウドの遺産、か。
核弾頭クラスの爆破兵器?モンスター?機動戦士?嫌な予感しかしないんだが。
ヤベーよもう戦う力も武器も残ってねーよ。体引きずってでもこの場から逃げねーと。
主人公補正とかで即座にお家に帰る手段とかないのか?どうにかならねーのかオイ。
ガタガタッ!ガタガタガタッ!箱が暴れ出した!
「うおォう!」
これは逃げる準備をしといた方がいいかもしれん。コンチクショウ今日はとんだ厄日だ。
「―…… れかー……」
「ん?なんぞ?」
「だれかー……誰かー、ここはどこですかー?」
人の声?!あの箱の中から?!!ハワウドの遺産って喋るのか?!声が結構こもってるが確かに人の声だ。
「ああ、すいませんそこにいる方、誰だかわかりませんが助けて下さい。気づいたらこの中にいて出られないんですここはどこですか?ロッカーの中とかじゃないですよね?」
いや気づいたらロッカーの中って何?誘拐?監禁?ナチュラルに事件の匂いしかしねーよ!
これは……逆に開けるの手伝ったほうがいいのか?
「それじゃ、行きますよー。せーの!ふんっ!!!」
気づいたら俺は箱の蓋を力を込めてこじ開けようとしていた。というか深く考えない事にした。
「ンギギギギギギ……!うぉぉぉおおおおお!フンガアアアあああああ!!!」
力をひたすら込めて込めて込め倒す勢いで箱の扉を開けようと引く!引く!HIKU!!
「うおあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「あ、すいませんこれ横に引くタイプの様でした」
俺は思わず勢い余ってズッコケた。何て古典的なボケを……!大坂人だったらおいしいシチュエーション、と言わんばかりに食いつくレベルだ。
「ふぅ、やっと出られ……あれ?ここってさっきの場所……え?」
「いや、え?じゃないが」
「マスター、あれ?この箱……これは一体。」
「ねこはん……?いや、今確かにウィラーラに担がれて病院へ……?え?」
話がかみ合わない、いや今明らかな矛盾が生じている。あの箱からねこはんが出てきた。
確かにねこはんは今さっきまで深い傷を負って病院に運ばれて。これは一体……?
「あの箱をいじってて、気づいたらこの箱の中にいたんです。その間の記憶がなくて……マスター、何があったんですか?」
「いや、お前さっきまで死にかけてて……」
「え?何を言ってるんですか?私はこの通り普通に、何ともないですよ?そういえばウィラーラさんは?」
おかしい、明らかに何かが起こっている。だがその正体がつかめない。
落ち着け、こういう時は失せモノを探す要領で順番に、まずは状況確認だ。
「スマン、ねこはんちょっとだけ確認させてもらうぞ」
「え、あ、はい」
俺は持ち前のスキルの一つである鑑定を使い、彼女のステータスを確認する。
NAME【獅豪 寧子】 (♀) 【種族】 マシンメタリカ
レベル:1
スキル 同一認識(永)
効果:転生を行った際、全ての存在に転生前と同一の個体という認識の加護を受ける。
この効果はあらゆる手段をもってしても解除不可。
え、ちょっとまって“転生を行った際”って言った?
種族が人間じゃなくなってるしマシンメタリカって確か機械生命体の種族じゃなかったっけ?
いやよく見たら、雰囲気(ふんいきだから変換できる)とか空気感は確かにねこはんっぽいけどでもよーーーーく見たら姿形はお前誰?ってなってるしそういう事?話がかみ合わないのってこのスキルのせい?へーほーふーん。
「あの?マスター?」
ひろかどは めのまえが まっくらになった!
そして今度は俺の意識が飛び、今までの疲労の蓄積も相まってその場にノーガードで頭からぶっ倒れたのだった。
「マ、マスター?!マスター!!マスター!!!」
駆け寄るねこはんをよそにまさかの非常事態に次ぐ非常事態。
一方的にすぎるほど一方的に巻き込まれ、それでも敵を退けたと思ったその先はまた一方的な非常事態だった。
一方的のバーゲンセールどころかキロ1円のたたき売りだった。
薄れゆく意識の中、このままじゃ終わらない事を現在進行形で確信をしながらその疲れと倦怠の海に逃避がてらどこまでも沈むのだった。
――――――――――――――――――――――――沈むしかなかったのである。
まずはここまで閲覧していただきありがとうございます。
書き溜め分が尽きたため少し補充に入ります。
ストック溜まり次第、早いうちに投稿を再開できるように努力しますので少々お時間いただきたく思います。
引き続きよろしくお願いします。




