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想いが搔き消える日

「そこの白髪姉ちゃんと俺らに二度と付きまとわないって確約してくれたら解放してやるぜ」


「それは保証できないなァ、俺の組織って訳でもないし俺じゃなくてももうアンタらを叩き潰したいって奴らが出て来ると思うぜ?

一度カチコミかけて相手のメンツ潰したらどの異世界でもそういう筋は通らないと思うんだよなぁ」


まぁ道理ではあるが、それ基本的にヤクザの理論だし巻き込まれの被害者はほぼ俺なんだよなあ。



「……いいんじゃないノカ。解放しテモ。自分達の不始末もつけてくれたワケダシ。」

「おいおい、それこそ因縁の相手だろしかも№3の。さっきの喧嘩腰はどこ行ったよ?」

「執行猶予という奴ダ。明らかにあのスカシメガネのやり方に反攻してた分マトモだったし、それに更に上がいるなら首のすげ替えが出来なくなるぐらいにそっちを叩き潰すぐらいが分かりやスイ。

もっともここで私がどうこう言う権利はないけドネ」


やれやれ、生っチョロい事で。だが強者の権利をそう振るう奴は嫌いじゃないがな。



「コイツ等を倒したのは間違いなくヒロカドダヨ。私は分担作業をしたダケ」

「まあ、そうだが……」

「オイオイ、そんな煮え切らない心持で後先考えずの奴に俺たちやられたのか?」

「だったらアンタ等の組織の情報を教えてくれんのか?」

「そりゃあ無理だ、ここはできない線引きだな」

「ほら見ろ!絶対拷問したって口割るタイプじゃねえぞ!どいつもこいつも手前ェ勝手にしか物を言いやがらねぇ!」



もうこいつらしょうもなさ過ぎて涙が出てくらぁとかお手上げとしかそう言いたくなるぜ、ったく。



「………………」

……?ねこはんがあの箱をじっと見つめて動かないな。何だ?


「おいねこはん、あの箱に何かあるのか?」

「いえ……何でしょう?何か引っかかるというか気になるというか……何でしょう?」

「何だよ煮え切らねぇ物言いだな。特に何も感じないぞ?」



いざという時の踏ん切りはいい癖にどうでもいい時は歯切れが悪くなるな。

だがあの箱のデザインは何か見覚えがあるようなないような……。


「何だろう……。呼ばれている様な、後ろ髪惹かれる様なこの感じ……」

箱をペタペタとさわりだし、不思議な表情で魅入られているような感じもするが。


「おいねこはん!まかりなりにも敵が持ってきた奴だぞ!そんなにいじくるな!」

「そ、そうですよね!なんで私―――――――――」







―――――――――――

―――――――

―――

――


「―――――――――そうだ忘れる所だった。ストゥーカさんよ。」

「はい」

「なんでこの姉さんの受け取りを拒否した?そこんところまだ聞いてないぞ」

親指で秘書の姉さんをクイクイと指さしながら説明を求める。


「……そうですね、それを話さなければそもそもとして理念に反しますし、知る権利がある。

実は彼女に凶星の巡りが極めて強く出ています。」

「凶星?」

「はい、極めて特殊な」

「つまり、どう転んでも近いうちに死ぬってか?」

「それも可能性としては考えられます。ですがもう一方の可能性として他の星の巡りを介させる事でそれを回避、あるいは別の解釈でやり過ごすことも可能です」



俺は周囲を見渡し、あの姉ちゃんが席を外してるのを確認してため息を漏らす。


「だからといってだ、俺である必要もないだろ?」

「いいえ、あなたは間違いなくその手の事に関しては力のある人物です。特殊な経験を送った人というのは総じてそういう星の巡りを持つ人が多いんです」


「総理じゃダメなのかよ、一国の長やってるってのもかなり特殊な経験だろ」

「質が違うんです。鷹村さんはこの料理に醤油が絶対に合うって言ってるのに調味料にデスソースをぶち込みますか?」

「デスソースに合う料理ってなんだよ?!どんな罰ゲームそれ?!!」

「いや物の例えですから。人の運命ってのは割とこういうかみ合わせでできてるって話ですよ」

「デスソース引き合いに出してる時点で味を調和させる気ないだろ」

「いや本当なんですって」


俺はストゥーカの話を八割近く右から左へ垂れ流しつつ優雅に鼻ホジをする。



グダりを察したかゴホンとストゥーカの咳払いで話題の仕切り直しだ。

要点となる口火は総理が切り出す。


「とはいえ現実問題というのもありましてな、私のそばにいるとそれこそ一歩間違えれば謀殺に巻き込まれる恐れもありますのと常時人質にされる危険性も考えられます。

繋がりのあるサロンも戦える人手が足りない観点から同様の理由になるというのが見解です」


「総理は知ってる様だがあの姉さんには?」

「獅豪さんにはまだ……」

「そうか」



総理はまさに沈痛というべき表情で俺に頭を下げる。


「これは私からの正式な依頼です。お願いします。彼女を――――――――――――」



「寧子を……守り抜いて下さい……!」


―――――――――――

―――――――

――――

――





それを振り返った時には、獅豪 寧子という女はその胸を一本の剣に貫かれ、血を流していた。

剣はウィラーラの物だったがもちろん位置取りや性格・動機からそれはあり得ない。


剣の刃の飛んできた勢いと威力はすさまじく、箱に釘を打つように勢いよく貼り付けの形でアイツの体は叩きつけられるように一突きにされた姿に俺は思わず叫ばずにはいられなかった。

「…………!!寧子!!!!!」


「下郎が……!その箱に触るな……!その箱は……!」


剣を投げつけたのは砲撃でボロボロになったメイスンだった。そういえば先にもやられた振りをして俺たちの隙をついて奇襲をしていた……。

前振りはあったのに!なんて迂闊・失態だッッ!!



「お前えええええエェ!」


ウィラーラは起こった事に処理が追いついたのか明らかな激高をもって杖を掲げてメイスンに飛び掛かる!!


「猪武者が!お前の出る幕はこの世界のどこにもない!取り入る相手を間違えたお前達は終わりだ!

コールド5!モードⅤ」


奴の杖が一筋の光を走らせると辺りが瞬時に周囲に鋭利な氷山の様な剣が地面から次々と湧き、辺りを凍結させる。


何者かを確実に貫かんとする殺意のある氷結の魔法だった。



「ウィラーラ!!」



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