二転三転
「……グググ……!痛ってぇ……!鼻紙はちぎり捨てる物じゃねーよ!」
つーか何をした?!何が起こった?!!
顔や腹に何もない所から変な塊を食らったような衝撃が来た。
落ち着け……落ち着け……加減をして舐めている様子はなかった。最初からこんなのが使えていたら間違いなく即座に使って俺を沈めていた筈だ。
唐突な一撃で思わず地面にへたり込んでしまったがまだ動ける……!
「鏡を見てみろォ、狐につままれた顔ってのは今のお前さんの様な顔をしてるんだぜ?」
俺を一撃捉えたカナマリに意趣返し的に皮肉ったらしいセリフを問いかける事に余裕が出て来てるのが分かる。
だが俺は痛みに耐えながら奴の視線や動きに注視する。
魔法だろうが技だろうが人である以上、何かしらの所作が生じるはずだ。
たとえノーモーションでもどう動くかという思想で図るというやり方だってある。さて―――――――
「四大罪破 二の型 虚空失歩」
「!?」
突如、というにはあまりにも言葉としては軽すぎるがまた何の前触れもなく、今度は俺の真ん前にあの巨体が音もなく現れる。
「ぐはッ!!!!!」
奴のリーチから掌底のフックが俺の顔面横に入り、一回転したかしてないかのような吹っ飛ばされ方をする。
「グアッ!ガッ!!ぐぐグっグう……」
「脆いな。一度こちらのペースに持ち込んでしまえばこんなものか」
一息吐き、立て直しを実感しつつあるカナマリと正反対に俺はゴロゴロと地面に転がりつつ突っ伏してから体制を立て直すという何とも無様な姿を晒していた。
……痛てえは痛てえが特防スキルのおかげで致命傷やTKOには至らない。……だがこれ自体は強力なだけの普通の打撃だ……。何か、何かないか?
「フッ……フゥー。手加減をしているつもりはないが当て所がアンタにとっては良かっただろうが俺にとっては悪かったか。これはもうちょい思い切っても良さそうだ、なっと」
大分力を入れて殴った……にしてはなんで……
と言ってるそばから本腰を入れたのか獲物の偃月刀を改めて持ち替え、腰を据える。
「悪いな。後にも本来挑むべき挑戦者が控えてるんでな。兄さんとのやり取りはここまでだ」
来るッ?!
「四大罪破 一・二の型組取 虚撃点突」
敵の戦闘スタイルは実に分かりやすい。率直に言うなら典型的なパワーファイター。
そこはウィラーラの奴と変わらない。ただ一つ違うのは外付けのスキルラインにより特殊な強化を施す事。
だが使う人間を基準とする以上相性という縛りは避けられない。
コイツの場合は……――――――――――
「貰ったァ!!!」
やはりカナマリは瞬間移動のごとく、自分の間合いで自ら近付いて攻撃を仕掛けてきた。
とどのつまり!音も無かろうが、何の前ぶりもなかろうが、自分の間合いにちょうどいい距離感でしか攻めれない事だ!!
「と思ってるのはお前だけだァァァ!」
俺の立っている地面に線状の光が走り出す。走り出した光は何かを囲い込むように俺の目の前に紡がれていく。
「な……なんだと?!!」
奴にとっては本当に何だとだろう。俺の眼前でその獲物のそっ首を叩き落そうと言わんばかりの態勢で固まっているからな。
何が起こったか分からない訳だ。
「ふぅ、ギリッギリだったぜ。」
「お前……何をした?!」
「オイオイ、アンタ自分で仕掛けた包囲網の事忘れてないか?」
「……封柵陣か?!兄さんアンタ陣術師だったのか!しかしあれだけバカでかい物をどうやって纏めて俺に返した?」
陣地の乗っ取りを介して利用しただけだが手の内を明かす義理もないしすっとぼけとこう。
「それは企業秘密だ。そのぐらいの質量ならアンタでも破るのは無理だな」
「やってみなけりゃわからんさ…」
苦しい時こそニヤリと笑え、傍から見てみな男だぜってか。どこの格言だったかね。
「無理すんな、アンタのそのスキル四大罪破だったか。多分まだまだ 真髄はこれからだなんだろうが間違いなく使い続けたら死ぬぞ」
「自分の作ったスキルだ、クセも含めて理解はしているさ」
俺は大きなため息を一つ、そして言い放つ。
「……四大罪破の正体、超加速と空間固定、だろ。それで身体に爆発力を出している、違うか?」
「!!」
やれやれ、ウィラーラと似たような反応しやがるな。まあ前触れもなく看破されりゃ同じ反応は当然か。
「一の型とやらは、獲物を振ったときに生じる圧力を空間に固定化させて同じ位置に立った奴に向けて解放し衝撃を与えて、その後二の型の超加速で追撃を仕掛けた。そうだろ?」
「驚いたよ、これを初見でそこまで見抜いたのはアンタが初めてだ」
「……経験則だ。あんたが思ってる以上に似たような考え方ができる人間は割といるって事だろうな。
実際加速の魔法や、空間や座標固定の術式なんてそう珍しいものでもないんだよこれが」
「ついでにもう一つ。アンタ、加速をするにあたって止まるときかなり内臓系に負担が掛かってるだろ。後半疲弊がすさまじかったぞ。隠し切れてると思ったか」
当然だ。急ブレーキなんていっても摩擦や物理法則の都合で即座に減速できるものじゃない。
電車でむしろ摩擦の抵抗がなく、物理法則を超越してピタッとブレーキで止まろう物なら間違いなく電車の中が阿鼻叫喚になる。
具体的にいうと乗客が窓に投げ出されたり叩きつけられてミンチになる。
奴の能力は単身とはいえそれをやる事で肉体にかなりの負担がかかっている訳だ。
「……まいったねぇ。どうも……」
「命まではとらねぇよ、連中引き上げさせてさっさと帰れ。こういうのは頭取ったもん勝ちだろ」
カナマリから俺への闘志が失せつつある…か……。
「天道参将様がやられた……?」
「落ち着け!拘束されているだけだ!」
「クソッ!こうなったらアレを出せ!」
「やれるのか?!まだ使い方すら把握しきれてないんだぞ!
「緊急事態だ!急げ!」
ああコンチクショウ、あれだけ奇襲して大将を実質人質にとってもなお手下どもの戦意は喪失しきっていないうえに弱ってる所を囲いだしてきやがった。
相当こいつらの統率力が高いのか、カナマリの奴が慕われているのか……手持ちの武器もそんなに無いぞ?!どうする!
「お前ら!見苦しいマネすんな!どう見たって勝負は着いてるだろうがァ!!」
突如見事な声の張りと大音量で手下を一喝するカナマリ。
「ここまで見事に手の内を見切られた上にそもそもの作戦の要の陣地をとられて如何にかできるって方法があるのかぁ?アあん?!」
見事な正論で手下を一喝してる、いいぞその調子だもっとやれ。さっさと戦いおわらせてぇんだ俺が。
「ありますよ。私が戻ってきましたからね」




