布石と華と持ち味と
そこで取り居出したるは、店に常備して地図だ。
道を尋ねられることもあるからな。
「これはうちのご近所の地図だ。ここがうちの店で、ここがあのフード野郎をシバいた所だ。フード野郎はここをポイントにトカゲ共に指示を入れていた。
という事はだ、店の位置を円の中心にしてだ、指示のポイントが入ってなおかつ同じ条件のポイントを指していけば……」
「……すゴイナ。彼は軍師なノカ?」
「いえ、異界渡航者と聞いています」
「異界渡航者……そういう人間もいるノカ。持ち前の経験値やスキルはともかく道理デ……」
「オラここだ。俺は地脈の類は読めないからざっくりとしてるが大体囲い込みで攻めるなら戦略的にこの位置がベストだろうよ」
地図に赤丸を付けてポイントを指してみたが、まさに陣と言わんばかりのいい感じに敵の戦略拠点を絞れたわけださすが俺。
「いいか、基本的にやってる事は市街地戦だが、予想外な奇策で裏をかかれると人間大体慌てふためくもんだ。多分敵はまだあのフード野郎が俺達に潰された事に気づいていない」
「どうしてですか?」
「敵がウィラーラ一人だと思っているのもあるが―――いくらコイツのフットワークが軽いとはいえ距離が離れすぎているからな。
後は道中の時短と俺達の力であっという間に沈むのは流石に敵とて読めんだろうし、それに何よりだ」
「何ヨリ?」
「フード野郎を倒したことで連携にボロが出始めている。明らかにブレーンに依存して戦っている。
そしてそれに気づいているのは仕留めた当人の俺達だけだ」
とまあ状況判断を推察してみたが推察は推察だ。何の確証もないが、やる気をそぐよりはマシだな。
そして本題だ。
「そこでだウィラーラ。ここの四つのポイントがある訳だが駆け足でこの距離の近い三つの赤丸の所を潰してほしい」
「……なんとも早々無茶を要求すルナ」
「安心しろ、古来、壇ノ浦の戦いや桶狭間の戦いといった強襲作法もある。
そのテイストでいいんだ」
「マスター、それ失敗したら間違いなく自分が討ち死にする奴です」
日本史ジョークはさておいてだ
「アンタの力は見てわかった。あんたは仲間との連携の兼ね合い柄、壁役になってはいるが間違いなく単騎駆けの方が向いている。
他人との能力適正のかみ合わなさからパーティから協調性が無いと、あらぬ弾劾を受けた事はないか?」
「…………有ル」
「だろう?オンゲやチームの特性柄、大体誰かと組んでナンボと思われがちだが結局は向き不向きだ。
そしてこいつはおきのどくですが現実だ。自分の生かせる方向で突っ切ったほうが楽だろう。
そんでもってまさに今がそういう奴の力の生かし所って訳だ」
「マスター、もう少し言い回しにデリカシーってものを……」
「……イヤ、寧子ハンと言ったか、気を使ってありがトウ。どうやら私は周りに気を使いすぎる余り自分らしさを欠いていることにすら気づかずにイタ。さっきの敵の打ち漏らしがいい例ダ」
「あだ名と名前が混じって京都弁みたくなってるんだけど!」
デウスのツッコミはともかく、俺の意見とねこはんの気遣いにどうやら肩肘の張りも取れたようだな。
「で、俺は残ったここを叩く。もちろん理由はある。一般的に大将首は総じて一番後方で様子を見る物だ。
近代兵器やレーダーがあるならともかく、互いに同じ土俵ならアナログな兵法で挑むだろうよ。
ここにいるその総大将ってのがブレーンであり協力者がいる可能性が高い」
「いよいよ戦国の合戦じみてきましたね」
ストゥーカも男の子なのか戦国という単語と展開にワクワクしておるのう。気持ちは分からんでもない。
「どちらかというとやるのは無双ゲーだがな。おそらく相手はウィラーラの戦闘スタイルを加味した上で攻めてきてるからイレギュラーの俺が攪乱して頭を潰す!」
「でもさすがにウィラーラさんに近いって理由だけで陣地を三つも叩けってそれこそ危険じゃないですか?」
ねこはんのいう事ももっとも、だが。
「大丈夫ダ。最初の追撃で私が一人で凶暴なグリードトゥースを四匹も仕留めたのを忘れタカ?」
「でももしウィラーラさんの所に敵の総大将がいたら……読みが外れたら……」
「しかし命を落とすかもしれないんですよ……!」
「イヤ、出会って間もない私の有り様をここまで的確に突いた彼を私は信じルヨ」
「そういうこった。結局体を張るのは俺たち勇者と言う名のプレイヤーだからな。
NPCの村人は茶でも啜って待ってな。幸いここは喫茶店だ、水物には困らねえぜ」
「誰が村人だ!精神安定剤のパッシブぐらいには役に立ってますぅ!」
「寄生の間違いだろ。常時デバフかけられてるんだこっちは。人生まで縛りプレイ強要すんな!」
ブー垂れるデウスの抗議を軽くいなす俺に、ウィラーラが顔を近づける。
「これが済んだら、祝いの席の一つでも用意してほしいそレト……」
急に言葉尻にしおらしさが出るウィラーラ。なんだなんだ?
「私、まだアンタの名前を聞いてなイヨ!仲間として一緒に戦うのに名前も知らないとかありえナイ!」
あーそういえば、なし崩しでこいつとトークやら共闘やらしたが名乗った覚えねーや。
急展開でドタバタだったしな。
「俺は鷹村 広門だ。改めてよろしくたのむ」
「ヒロカド…………うん、よろしクネ」
だからなんで、急にしおらしくなった。緊張し過ぎて燃え尽きてきたか?
「さてと、概要をまとめましょう」
ストゥーカが纏めに入り出した。なんでお前が仕切るんだ。
「そりゃあ、作戦で一番重要なポジションだからじゃない?」
デウス、だからモノローグにツッコミ入れんな。
「まず陣の支点になるにあたって比較的密集しているこのポイント、此処をウィラーラさんに任せることになります。ここを叩くことで敵の撹乱にもなりますし、敵の陣を崩す事にも繋がります。
私はウィラーラさんをここの近辺に道を繋いで送り出せばいいんですね。」
「ああ、もし、俺の作戦にアテが外れたと感じたら俺の向かうポイントに来てくれ。最悪陣から脱出しても構わん」
「わかッタ」
「俺はその間にタイミングを見計らって一番遠方のここに襲撃をかける、実にシンプルだ。
……お前ら三人は撹乱された後の場所を辿ってここから離れろ。逃げる場所は遠ければ遠い程いい。
場所は任せる。連中を散らせばスマホも使える様になるだろうから場所さえ教えてくれれば、後でそっちに向かえるからな」
「つまり予想が外れたり、ピンチになったら散り散りに逃げればいいんだね」
「ああ、俺ら一人だけなら逃げようはあるしお前ら三人はウィラーラの暴れた跡を通った方が考えうる限りで安全だからな」
らしく根拠を立ててみたが間違いなく生存率はこの状況なら高い。
散り散りとはいっても要人含めて避難民は集団で固まって移動させたほうが安全性は高まるし、包囲網から距離さえ取れればいざとなったら道中をストゥーカの力で異界化させて避難する手立てもある。
「再三にわたって言うが絶対に深追いはするなよ」
「アア!」
「マスター、ウィラーラさん、御無事で」
「まだ始まってもいませんからね!」
「二人ならやれるよ!」
―――――――作戦開始だ。




