暗雲・流転が如し
「マスター!」
遠くから駆け寄る一人の女の影が近づいてくるがあれは……。
「ねこはんか?!バカヤロウ!フラフラと出歩く要人がいるか!!大人しくしてろと言っただろ!」
「フゥ……ストゥーカさんの力を借りて道中ショートカットして飛んできましたので大丈夫です!
……それより非常事態です。直ぐにカフェに戻ってください!って何があったんですか?!ここだけ災害区域みたくなってますけども?!!」
要点を先にきっちり伝えてからツッコミに入るあたりマジメだなぁいやそうじゃなく。
何も知らない奴がこの戦闘跡をみたらそうなるわな異世界スキルおそるべしだ。
「これは気にすルナ!大体あそこで縛られてる奴のせイダ!それより何かあっタカ?!」
しれっと責任逃れしやがったよこの白髪女。
「は、はい!私が来たルートがありますのでこちらに!話はそのあとで!」
「……穏やかとは程遠い事態のようだな。あんたはどうする」
「乗り掛かった船ダヨ。先に行ったけどこのままじゃタダの厄介事を引き連れただけのトラブルメーカーになり下がってしマウ。不始末ぐらいはきちんとつけたいし、私がそもそもの目的を前にしてここで自分だけ避難ボートに乗る女とお思イデ?」
「……勝手にしろィ」
とまあ、したり顔で自ら厄介者と自供した犯人を引き連れてストゥーカの星辰の技で店の在庫倉庫に戻ってきたが事態は確かに宜しくなさそうだった。
「ただ今戻りました」
「おかえり~」
「デウス、ストゥーカ、だからなんでねこはんを一人で使いに行かせたんだよ!要人だって事忘れてるだろ?!」
「いやーそうなんだけど、寧子これで結構気が利きすぎるから私が行こうと思ったら監視に気を取られてる隙に既に向かってたというね」
「申し訳ありません。さすがに私は道を繋げる仕事があったのでそこまで気が回らなかったもので」
「融通の利かないマニュアル店員みて―な事いってんじゃねぇよ!緊急事態だろ!同じ失敗をしといて何をすっ飛んだ返答をだな……!」
「マスター、二人を怒らないでください。急ぎの事だったので私がやらなきゃと……」
「あー!もういい!で、要点はなんだ?!」
俺が思った以上に要人は大人しい面してかなりのじゃじゃ馬だというのを再認識しつつ怒りを抑えて肝心の要点を聞き出す訳だ。
「これを見て下さい」
ストゥーカに指摘された先は監視カメラ―――――の映像だ。
「……なント!」
ウィラーラが驚くのも無理はない。閑静な住宅街を道行く通行人が右を見ても左を見てもグリードトゥースときたもんだ。
「オイオイ、いつからペットの放し飼いがブームになってんだこれは?モラルの低下か?嘆かわしい」
「違ウ。これは封柵陣ダ」
「ふうさくじん?」
デウスが尋ねる。
「封柵陣は早い話地脈経由で敵を閉じ込め、追い込むための技ダヨ。
敵の居場所を探るために土地を囲って陣を狭めて行くことで失せモノを探査していく陣術ヨ」
「マスター駄目です。電話もwifiも通じません」
ねこはんが自分のスマホをいじってみるが駄目そうだな。
「……どうやら敵はそこまでして私を叩き潰したいみたいダネ。とはいえこれは私の知る破界同盟のやり口ではなイヨ。他に引っかかることも多すギル」
「協力者の存在か……」
ウィラーラと俺の知識を照らし合わせる限り、邪技導師はこんな露骨に活動的な奴らではない。麻薬の売人がアメ横のたたき売り的にアピールするようなもんだからな。オタク気質ともいえる。
見知った世界とは言え、土地勘がないのにあのフード野郎があそこまでイキれるとなると、やはりブレーンの優れた協力者がいると考えるが自然か。
ましてやこんな大掛かりな仕掛けが出来るならなおさらだ。
「という事は隠蔽されてるとはいえここが見つかるのも時間の問題……という事ですか?」
「そういうこった。しかもストゥーカ、アンタの得意のショートカットもこの先使うのは控えておけ」
「なんでさ?さっさと突っ切った方が早くない?」
「ソイツがそれを使ったら同じ理屈で繋がってるこの場所や逃げた先まで多分察知される。最初あった時の事を俺は忘れちゃいないぞ」
俺達がストゥーカがヘインとマレーだったかに追われるときの事だな。皆さんは覚えているだろうかね。
「……なるほど。地脈という事は……あの技もレイライン・龍脈を使ってるって言ってましたね」
「でもさっき二人を迎えに来た時は普通につなげてたじゃん」
「……予想だケド。多分私を見失った辺りとここに戻る道のりの反応を照らし合わせると位置が絞れるんじゃないカナ?私ならそうスル」
「……!そういうことか!迂闊でした……」
顔に手を覆い、やってしまったとばかりに頭を抱えるストゥーカ。まあまさか自分のお株で自分の首が締まるなんざ神様仏さまって嵌められるわな。
現に目の前の神様は基本パーだし。
「誰がパーだよ。グーではっ倒されたいかコノヤロー」
デウス。人のモノローグに勝手にツッコミ入れてくるんじゃありません。話が読みづらくなるだろうが。
「さてと、籠城策も封じられた、逃亡の為の移動手段も使えない、外は敵だらけ。となると一点突破かはたまた別の策か。」
「一点突破……しかし我々は敵の配置も誰が指揮しているのかすらわかりませんよ?」
「ストゥーカの意見ももっともだ。そこでスマホも通じないならアナログにやる。これを見たまえ」




