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白銀の来客

「やれやれ、こんな所まで来てやったのに痴話喧嘩?日本のレジスタンスは危機管理って概念が足りてないみたいダネ」



誰だ?初めて見る顔だ。白髪の女……いやイメージとしては銀髪というべきか。

髪型はロング系、横に編み上げをしていて、片目を髪の毛で隠している、目隠れというやつか?

来ている服は日本的ではないが割と現代的でカジュアル……中華系の思わせる。

多分――――――異世界人だ。



「で、誰が深淵?」

「あーあー、ご足労ありがとうございます!私が異世界サロンの深淵です。まあ立場柄名義に関してはニックネームやハンドルネームと思っていただければ!」

おいおい、ストゥーカの対応が俺の時と全然違うんだが?!腰低すぎて土下座する勢いだぞ!



「紹介します、彼女はウィラーラさんです。……お察しのとおり転生者であり、今回の我々の交渉相手です」

「おい、なんで俺の店を合流地点にしてるんだよ聞いてないんだけど」

「なぜってそりゃあ、安全な場所を交渉のテーブルの置き場所にするのは当然の事ですよ」

確信した、こいつヘタレのくせにとんでもない食わせもんだヘタレのくせに。


だって事後承諾で協力OK貰おうとした上に人の店で交渉しようとしてるし!見切り発車どころかスポーツカーで高速逆走しようとしてるよ!



「オネエちゃん、悪いことは言わない。これと関わるのはおやめなさい。多分ロクなことにならないと思うぞ」

「いやいや、やめて下さいよそういうの!」

「現在進行形でこいつらにロクでもない目にあってるからね俺?」

慌てるストゥーカを雑に指さしてやんわりとウィラーラとかいう姉ちゃんに警告をする優しい俺だよ。


「ロクでも無いのは今に始まったことじゃなイヨ、勇者や英雄の類もろくでもないお使いを重ねてトラブル回避を務めてるんだカラ。とりあえず見て決めルヨ」

……意外とまともな反応だ。それとも外面がいいだけなのかヘイト管理がうまいからなのか。


「そうか、それじゃ話し合い頑張ってくれ。「深淵」さんも」

「いやいや!手伝ってくれないんですか?!」

「だから断ってるんだろ、それに客商売で店員不在じゃまずいだろ、バイトもまだ仕事覚えてないしな」


協力者不在でネゴシエートする羽目になったストゥーカに対し内心愉悦を感じながら軽く肩をたたき、俺は店の奥へ去ろうとした。



「待ちなサイ。私、アンタと交渉して参加するかどうか決めルヨ」

「は?」

こいつは何を言っているんだ?異世界サロンに参加するかどうかのやり取りでなぜ俺を巻き込むし?


「いや、俺は無関係な一般市民で、こいつらとは何の関係もだ」

「それこそ御冗談。あんたの方が明らかにレベルも度量も違ウ、私が相手してきたどの手練れよりも間違いなく強イヨ。あんたが顔役といっても疑いなく信じルヨ」

なんだこれは。この姉ちゃん私はすべてわかってますみたいなムーヴしてるけど何もわかってないからね?

キャベツはどれ?って言って自信満々にレタス選んじゃうぐらい分かってないからね?見分けついてないからね?


「あんたレベルハ?」

「レベルって何?人生の?人間としての?」

「能力ハ?」

「この店で頭張ってるんだからのでコーヒーぐらいしかいれられねーよ」

「……アタッカー?タンク?メイジ?」

「人の話聞いてくれませんかね?俺はただのしがないカフェのオーナーなんですって」

「話を聞いてないのはお互い様ダ。なんでそこまで戦いを拒むノヨ?アンタは力がありながら聞き訳も物分かりも悪いフリをして逃げてイル。私、この手の人の見極め得意ヨ」

ッチ、他心通みたいなスキル持ちの人間か?ズケズケ物を言いやがって。



「……アンタ、ドゥラレイガルからやってきた人間だな。あそこで獲得できるスキルは独特でな。

主に他人の心や駆け引きや読心術的に強い効果を発揮するものもある。人の見極めが得意?違うな、ただ与えられた特殊能力で人間的に格上アピールしたいだけだろ」


「……?!」

表情が変わった、やっぱりか。

「アンタもあの世界で転生……じゃなイネ?この店に仕込まれてる魔術様式が違いすギル。」

「しゃべり口調からして海外勢の転生者、中華圏の人間だな?そして職業はタンク、回避盾……だなアンタ?」

ウィラーラの顔色が面白いぐらい変わっていくな。話の主導権は間違いなく制したぜ。



「えーと、タンク?回避盾?」

「タンクはオンラインゲームの用語で壁役の戦士の総称です。身を挺することで自ら盾やオトリ役になるんです。回避盾は敵の攻撃をかわし続けたりする事でタンクの役割を担う事をさします。」

専門用語にサッパリなねこはんに対し、ストゥーカが丁寧に対応する。誰にでも初めてがあるとはいえ、そこからかぁと内心ちーとばかしげんなりはしてる。



「ドゥラレイガルの達人クラスの回避盾は心眼や神通力と呼べるレベルのスキルを有してないと勤まらない。そんな一風変わった戦闘スタイルはドゥラレイガルぐらいだからな」

「……アンタ本当にただ者じゃなイネ。言葉通リ」


驚きはしたが、冷静を取り戻した体を装うウィラーラだが人心は見れてもこの手の駆け引きは

門外漢なのはミエミエな訳だが。



「……例え能力頼りでも私の人を見る目は確かダヨ。それでもわからない事もアル、今この世界の非常事態に何故あんたは傍観者でいらレル?この世界に対して生前の怒りや憎しみを募らせているわけじゃない、かといって勇者や英雄として使命を帯びて活動してるわけでもナイ。まるでどっちつカズ」



「まるで、じゃない、俺は一切の戦いに手を出す気はない。戦うとするなら自分の身を護る為だけだ」

「私はドゥラレイガルの守護神から神託を受けてこの世界に舞い戻ッタ。アンタもそのクチじゃないノカ?」

「全然。うちは無宗教だしこの世界には結果的に戻ってきただけだ。実家だからな」

祈祷所オラトリオに悪のそしりを受けるのが怖いだけじゃなイノ?」

「オネエちゃんはどうなんだ?闇雲に戦う脳筋プレイができるほど楽な相手なのか?」

「まサカ。その為に強いクランやギルドを探してイル。そしてそれに値する人間が目の前にイル。惜しむらくは背負うものをもたず、戦う事に心底失望を示している事ぐらイネ」


やれやれ、このねーちゃんは人の心に土足で踏み込んでるって自覚はあるのかね?

言いたい放題言いやがって。名誉棄損で訴えたろか。


「ならなおさらアテが外れたな。交渉先の相手は逃げは得意だが戦うのはドヘタクソだし俺とこいつらは基本的にうちの店でコーヒーを飲みに来た客と店主の関係だ。

そしてお帰りはあちらだ。面接結果は発送を持って返させていただこう」

「立場が逆転してる……」

「ちょっとちょっと!」

誰が主導権だかわかったもんじゃないなとあきれ顔のデウスとねこはんに止めに入るストゥーカ。


とりあえずウィットに富んだ感じで扉に向けて親指で指をさす。

やれやれ、中途半端な正義感で首突っ込むなんぞロクな事にならないぞ。


「と、言いたいところだがオネエちゃん。これはあんたの客じゃあないのか?」

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