取り巻く状況
※10/6 展開の抜けた部分があった為加筆修正しました
現状それができる身近な人間が、俺ぐらいしかいないのが理由の一つでもあるが
結局異世界サロンの組織的な地盤固めと俺の様な戦闘ができる人材登用を急務とした為に結果論として人手不足から彼女を守る事が出来ないという結論になった。
だからこそなりふり構わず総理は俺に必死こいて泣きついて半ば強引な取引を持ち掛けた訳だ。
もちろん職業柄彼女は自分の立場を分かってはいるし、覚悟を決めてはいるだろう。
だが昨日今日あったばかりの女とはいえ事実上、生殺与奪を握る事になった事に対して俺の反骨心が疼いた結果、殺される、死ぬのが分かってて
見過ごすのは~なんて事になった……んだと思う。そう思う事にした。
あとはまあ――――先に話した通り平和だ。
「ねこはん、在庫の管理や帳簿付けや前準備はいいんだが、掃除が甘いぞ。ほらこれ」
ツツっと窓際を指でこすると埃が積もっている。姑のイヤミの常套手段のごとくアピールする。
「ウチは腐っても飲み食いする店なんだ、ここは特に気を使え」
「わ、わかりました!」
なんか微妙にまだ固いな……。
「広門何だい?ねこはんって。寧子の事?」
「そうだよ、寧子だからねこはんだ、俺がさん付けする相手は基本的に客と敬意を払う相手だけだ。
苗字呼びだと堅苦しいし名前呼びだとお前恋人かよ、って感じになるのと半人前だからねこはんだ」
「ゆるキャラみたいな名前だね」
「だろ?本人も受け入れてくれてるしコミュニケーション的に距離感一気に縮まらないか?」
「う~んそれはどうだろ」
そんな会話を尻目に店内の埃取りにご執心なねこはんをの背中をみながらデウスとバカな会話を重ねていた。
「いや~、私はかわいいと思いますよ、マスコットみ、って感じでしょうかね」
瞬間場の空気が止まる訳だよ。そらそうだよな。音もせずにどこかで見たプリンカラーがいるんだからな。
そして流れるように鼻フック。
「ストゥーカさんよ、今度はその鼻の穴第一関節まで届くまで頑張ってみようか?ああ?」
「あががが……またこれでふか……!?」
「ストゥーカさん!?お店なんですから入口からきちんと入らないと!」
「そういう問題でもねえよ?!」
ねこはんのボケはさておいて、この男一体どこから……あ。そうか。
「お前、もしかしてあの道を繋いでここを潜伏先の一つにするつもりか?それとも俺を消しに来たか」
「いやいや、とんでもない!断ったからと言って敵味方だ殺すだなんてウチはそこまで脆弱じゃないし、そもそも獅豪さんがいる以上そんなことは!」
俺はストゥーカの鼻フックを解除する。地味に鼻フックしてるにもかかわらず言葉が流暢になってきてる所がなんかこざかしいな。
鼻の具合を確認しながら奴に話を続けるわけだが。
「……これは長期的な交渉として挑んでいるつもりです。なぜならあなたの様に腕の立つ、転生者に対抗できる人間はひどく少なく、転生者は次々と私たちの世界に流入しています」
「間抜けたこと言うんだな?アンタん所は人助けにかまけて基本の戦力も確保していないってのか?」
「それ以前の問題なんです。ここに流れてくるような転生者の殆どはこの世界への報復改革です。
だから戦える人間はおのずとそっちに加担していくので自分の意思でこの世界に戻ってきた人間の方が珍しい。それに……世界中には私たちの様な組織は広がりつつあるものの物理的に強い人間となると……」
「俺の言った事を実現するために異世界サロンとしては戦える人間を集めたいと?それを俺に、拒否した俺に改めて相談を?」
「お恥ずかしながら。」
敢えて露骨に嫌な顔をして応対はしてみたもののだ。
ふざけるなと言いたいが自分や周りの状況柄を踏まえると一理はある。
異世界サロンは国内では反攻勢力としては多分一番大きい所だ。ネットや独自の情報網を取り入れ、突出した逃げや知恵で組織を大きくしてきていると言っていい。
しかし反面決定打となる反攻への手段が乏しいとなると俺の意見も机上の空論になり下がる。
これが普通の人間同士の諍いなら人を増やすなりブレーンを取り入れればいい。
だが相手はあらゆる方面で一人の知恵・物理共に力が一国をしのぐ力を持った奴、その集団だ。
パワーゲームも甚だしい。
「確かに正直、この情報と多様性を売り文句の社会がご時世で戦える人間に限ってここまで集まりの悪さは正直不自然だよねぇ。偏りすぎてるというか」
デウスが口を挟むがまったくもってその通りだ。これも総理が言っていた黒幕の存在のなせる業なのかね。
「ていうかそもそも組織として活動しておきながらこの兆候は見抜けなかったのか?星読みが雁首揃えてるんだろ?」
「もしかして、おそらくそれも異世界サロンの組織的な弱点ではないのでしょうか。未来や先読みが出来る・頼る反面、過程を精査する力が弱い、とみるべきではないでしょうか?」
ねこはんがここにきて口を開くがなるほど、面白い着眼点だ。
なまじ先が読める分そこに強みとして注力するあまり、弱みも強く浮き彫りになる。あちらが立たねばこちらが~ってやつだな。
「そうですね、それを補う為に、ですがあなたにはをお手をお借りしたく今回は馳せ参じました次第です。
今回のこれは対等な物ですので、報酬、仕事へのサポート、保護やアフターケアも極力保証します」
……コノヤロー、一度組織入りを断ったから「対等」という切り口で交渉に持ち込んできやがった。
あのすっとぼけ総理の入れ知恵だろう。腐っても駆け引きと権謀術数のプロだからな。
そこまで人手に苦心してるとはいえちょっとなりふり構わな過ぎじゃないかねこれ?
となると泣きついてねこはんのボディーガードを頼んできたのは俺がどこまで契約主義かを図るのもあったって事か。だがここはズバッと言ってやるか。
「「対等」とかいっちゃってまあ。どうせ総理の入れ知恵だろ?。クッソ卑劣な一休さんもいたもんだ。このはしわたるべからずってか?」
「卑劣……」
「広門さすがに他人の身内をナチュラルに罵倒するのもどうよ?」
渋い顔をするねこはんにオイオイと言い出さんリアクションのデウス。
いやこっち結構遠回しにえげつない駆け引き持ち込まれてるからね?
「駆け引きとおべんちゃらならもっとうまくやるんだな。それにねこはんの身辺警護はどうなる?やっぱりあんたが保護してくれるってのか?それこそ出資者のメンツをつぶすことになる」
「いえいえ、総理はそんな矮小な方ではありません。それに彼女もそちら側として覚悟を決まっているとおっしゃてた以上、無下にする方がよっぽど面子を潰していると判断できませんか?」
「覚悟決まってりゃいいってもんでもねーだろ。それこそ守れって頼んでおきながら要人を危険に追いやったり何がしてーんだって事になるだろうが」
話は平行線、相手は立場的に余裕もそがれつつある。俺は関わりたくない。泥沼すぎんだろ。
「やれやれ……状況的に遅かれ早かれやらなきゃいけないのに。こうなるとごね倒すことに関してはオリハルコンか強錬鉄並の意志だからなぁ広門は。……それでもやれと言ってる私達も十分人でなしなんだろうけどね……」
「デウスさんも星読み……なんですよね?そこまで私達の、世界の取り巻く状況は悪いのですか?」
「このままいくとね。よくて植民地、悪くてこの世界の終焉。将来的には人類の再起が不可能になるまで数を減らされるか、知識の一切の失伝からなる文明の原始時代レベルでの完全なる衰退か、そして地球の完全破壊か、だそうだ」
「それはさすがに荒唐無稽……」
「とおもーじゃん?この未来を世界中の星読みや占い師や預言者がこの三つの未来を見たんだそうだ。高名な人間から末端の三流アマチュア占い師に至るまで」
「そんな……そんな話題どこにも聞いた事が……」
「やっぱり寧子の言う通り荒唐無稽な話だからね、相手にされてないんだよ。――――――現状それどころじゃないからね後は」
「……」
「ついでいうと私は星読みじゃないよ。それに近い“目”を持ってるというかそういう生き物・生態なだけさ。持ち味は別にあるんだなこれが」
ねこはんとデウスがなんかボソボソしゃべっているが話は遅々として進まん。
交渉を頼まれてるが俺はネゴシエーターじゃねえよ。異世界の知識貸してくれって話はどこ行ったんだよ。設定練るならもうちょい頑張れってんだコンチクショウが。
「ああもう、帰れ帰れ!営業妨害だ!それとも鼻の穴の拡張をお望みか?!」
俺は手っ取り早さ優先の強行策をチョイスの後に人差し指と中指をかぎづめ状にクイクイとさせながらストゥーカの野郎をけん制する。
「ちょちょちょちょ、それは勘弁してくださいったら!?」
ストゥーカが両手でストップをかけながら抵抗をする。
そんなガキ大将と貧弱舎弟の低レベルな取っ組み合いが始まろうとした数秒後、店の扉が開き、聞きなれたベルの音が鳴り響く。




