殿(しんがり)
―――――そして一方、フラッシュを仕掛けた後の俺がどこにいたかというとだ、隙を縫って逃げていた訳だ。
無論、あいつらを仕留めないと祈祷所の俺の情報が漏洩される恐れもある、だが――――――
「―――――――つまりだ、祈祷所の目をこの場で、直ちに、欺ける手段が、あるって事だろ?」
「あっ?ああ、なるほど!」
秘書の姉さんが俺の言いたい事にピンと来た。
「アンタらは敵に常に追われてるんだ、それでいて人を救出するムーヴができてるって事は何か確実な効果的手段を持ってるって事じゃないのか」
「確かにそれはあります、ですが……」
「企業秘密とか言ってる場合か?ここで正体をばらされたり捕まったり殺されるわけにはいかないんだろ?
デウスやアンタはガチンコで殴り合えるタイプじゃないし、総理と姉さんは一般人だ。となるとここで迎え撃てるのは俺だけだろうが」
「何て言ったっけか、こういう状況、呉越同舟?やるしかないでしょ」
「……ストゥーカ君、我々は万能じゃない、まずは目先を乗り越えよう」
デウスと総理が助け船をだすがどう出る?
「……わかりました。まずはこちらへ」
ストゥーカはおもむろに調度品の並べられた机をよけ、床を開けると地下への階段を俺らに見せる。
「ワオ!ジャパニーズニンジャ屋敷かい?!」
デウスがおもむろに興奮しだす。いつの時代の外国人だ。
俺らはストゥーカの案内を受け地下を下り、あの一本道のらしからぬ通路にたどり着く。
「商店街の地下にこんな通路が……」
「ワクワクするねぇ!」
「お前はもっと緊張感を持て」
慣れたトーンで緊張感のないデウスにツッコミを入れる。
緊急時にあまりボケるな。体力使うんだよツッコミも。
「お察しの通りこの道は本来存在する通路ではありません。
星辰と呼ばれる儀法と地脈……この世界でいうなら龍脈やレイラインと呼ばれているものを異世界の技術として利用している物です。
ここでは時間や距離の概念はありません。
逃げ切った後に術を解除すれば追跡されることはなくなおかつ、ここでの出来事で祈祷所に補足される事もないでしょう」
「おいおい、何でネタをばらす必要があるんだ、明らかにサービス過多の情報だろう」
ストゥーカは少し考え、しれっと答える。
「……そうですね、これは手土産用の持参金・前金と思っていただければ。今回は巻き混んでしまったお詫びもあるのとあとは鷹村さんは今は金銭よりも、情報を欲しがると思ったもので」
「参加するかわかんねえのに前金も減ったくれもないだろう」
「しかし手を貸して頂ける。貴方の実力も見られる。私は値千金の褒賞を払う。あなたに貸し借りをするとトイチじゃ聞かなそうですからね」
俺の人間性をつかんだぞと言わんばかりのドやり方だな。だが分かりやすさに免じて黙っておくか。
「それにここは一本道なのでどうしても逃げ切りを確実にする為に時間稼ぎが必要になるでしょう」
「開幕早々殿をやれとかトチ狂ってんな。戦だったらほぼ足止めの為の捨て鉢か
トカゲのしっぽ切り扱いじゃねーか」
正直扱いにげんなりとするわ。だがやるしかない。先も言ったが取っ組み合えるのが俺しかいないからな。
「……どのくらい時間を稼げばいい」
「それほど長くなくて構いません。目算で3~5分ぐらいたったらこっちに向かって合流してください。
この先に別の出入り口を設けていますので鷹村さんがそこから出たら術で封じます」
――――――――――――とここまでが俺達の逃走経緯というわけだ。
俺はあの二人を足止めした後、炎殿の主柱を握りしめながら合流地点に向かって脱兎のごとく道を駆け抜けていた。
俺の見たところあの二人、一方的な処罰をしてばかりだから張り合う相手がいなくて勘が鈍ってるのと祈祷所に頼り切って動いているから何時でも殺せるとタカをくくってると見た。
……生前理不尽に殺されて生まれ変わった先がこれってのも悲しい話だがな。
……?! 風切り音の様な鋭い音が地下道に響き渡る。
風切り音といっても虫の羽音や生物が出せるような音の類じゃない。
もっとでかい物だ、しかもこっちに近づいてくる?!
俺はゴールへ走りながら後ろへの警戒を強める。来た!!
一瞬薄暗い状況で何が飛んできたかわからなかったが瞬発的に道の壁の真下の隅に体を飛びつかせた。
こうしておく事で飛射物に対して当たる確率を一番減らせる!
壁側を走り抜ける事で、こっちに向かって投げられてくるボールをより回避できる理屈に近い。
……瞬時とはいえ俺の考えは間違っていないようだ。その向かってきた風切り音の先を確認すると矢が地面に刺さっていた。しかもかなりちょっとした爆心地みたいな圧が加わったような跡も残っている。
あの弓の小僧っ子の追撃とみるのが自然か……
!?またあの風切り音!今度は一つや二つじゃない?!
俺は瞬時に体を起こし、その場から再び疾走をする。
再び後方確認……見えた!今度は矢の軌道を確認する……
「オイオイオイオイ!なんちゅうファンキーな軌道でやってきやがる!!」
放たれた矢は上に、右に、下に、左にと力強く独特な軌道を描きながら薄暗闇の道を進んでいる。
そんな無数の無秩序な軌道の矢が背後から俺に迫ってくる!
「うおおおおおおいいいいいいいい!」
絶叫しながらトンチキな軌道の矢を全力疾走で距離をとる、というかそれしかできない!
ホーミングに近い性能で矢が着弾しては、次の射出された矢がやってくるの繰り返しだ。
だが矢は速力と独特の軌道・着弾時の爆発力はあるが放たれる感覚は若干長いのと、軌道が特殊故直線状に来ない分当たるまで遅い。
しかも一矢放たれると次の一撃まで間はある、あるんだが俺への命中精度が地味に上がってきてる。
同時に俺との距離と位置を測ってるとみた。
あの弓使い俺の戦い方に相当キレてるな。
だがゴールはもうすぐ。振り返ってる暇なんぞ……
「鷹村さん!急いで!」
「な……!なんであの姉ちゃんが?」




