Episode01.プロローグ
「じゃあ、行って来るよ!」
そう家族に告げ、背を向け家を後にした。
明日から俺の高校生ライフが始動する。
今日は高校の一般寮に荷物を纏めるのだ。
荷物は業者の人に任せているので飛行機が着陸する頃には届いているだろう。
俺は飛行機の窓から自宅に向かって手を軽く振った。
どんな高校生活がおくれるのか期待と緊張が止まらない。
募る高揚感と共に飛行機を降りた。
今日はやることを終えたら、ネトゲに没頭だ。
俺の休みの予定はネトゲかラノベを読むことだ。
世間一般から俗に言うオタク文化とやらだ。
無論、俺は今ラノベ主人公になったつもりで高校生活を迎えようとしている。
今からワクワクが止まらない。
楽しみだぁー、最高。
……でもこんな淡い期待ばかり想像しているとフラグだな、控えよう。
まあ、正直なところ、学校は通いたいわけではない。
新しい友情関係等は期待できるが勉強は全く持って好きではない。
それが普通だと思うけど……
ただ、就職、仕事に就けないという事は、自分だけでなく家族まで迷惑が掛かるからな。
バイトができたとしても所詮バイトだ給料など生活費に費やされ遊ぶ余裕もないだろう。
そんなの真っ平御免だ。
そうこう想像していると寮に着いた。
ここが俺の新しい家。
一歩、また一歩と感動を胸に感じながら歩き出した。
そして後数歩の所で足を止め、自分の部屋の番号を確認した。
土山和也、俺のルームメイトの名前だ。
寮は四つに男子寮と女子寮に別れていて俺は手前の建物の二階の隅だ。
女子寮と近くて、少し幸福感を浴びる。
田舎には美少女とは異なる、というか俺のタイプの女子が居なかった為、彼女などできなかった。
だが、ここは東京。
人は前の学校より遥かに多い筈、一人くらいは可愛い娘が居る筈。
純情可憐な恋心を胸に秘め、いざ出陣。
至って普通の寮だな。
食堂は、まあまあ広い。
肝心なのは部屋の広さ、ネット環境に最適なのか。
俺は用意周到なのでポケワイを常に備えている。
先生にバレたら厄介だが、バレなければ問題など皆無。
よし、行くか……。
「失礼しまーす」
ヨボヨボしい声で部屋に入った。
方言とかもネットで調べて直したから、田舎者ってばれない様にしよう。
部屋に入るとそこには誰かの姿はなく、あるのは机と二段ベットだ。
ザ・寮だな。
椅子に座り、机に備え付けポケワイとノーパソを出した。
ネトゲの出来る体制に入った為ただ今より起動します。
ピッ!
っと音と共にノーパソが起動する。
IDとパスワードを打ち込んで、手始めにギャルゲーを開く。
俺はRPGに片寄らず、純粋に女の子達とコミュニケーションを取れるギャルゲーもプレイするのだ。
この知識が現実で生かせるかと聞かれたらイエスとは答えれなが。
コンコンッ!
ギャルゲーに熱中しているとドアの向こうからノックがした。
イヤホンをしているため音漏れはしてない筈だ。
ネットか、ネットを捉えられたのか。
いやまて、ドアの向こうに居るのが必ずしも先生とは限らない。
けじめをつけよう。
覚悟を決め、ドアを開けた。
そこに立っていたのは、案の定先生だった。
……俺はこっぴどく叱られノーパソは没収された。
翌日、入学式。
早々遅刻である。
結局、ルームメイトの顔をまだ拝めていないままだった。
一体、どんな奴なのだろうか。
その事で頭がいっぱいだった為、誰かにぶつかった。
これは自分の不注意だった為謝るべきと即座に判断し、顔を挙げた瞬間、眼中に拳が降りかかってきた。
咄嗟の回避に自分でも驚きだ。
再び顔を挙げ、見るとそこには学ランのボタンを全て解放した男達がいた。
世に言う、不良だ。
運良く俺は昔から喧嘩っ早く、不良等を一網打尽に返り討ちにした。
その後結局入学式にも出れず、クラスの皆から俺が不良扱いされる羽目になり、先生に目を付けられるようになった。
挙げ句の果てに返り討ちにした不良等は俺をボスと呼ぶ。
ただ一人、俺を怖がらない奴がいた。
嫌々、クラス委員を押し付けられていた神崎神楽だ。
神楽は入学式誰とも話そうとはせず本を読んでいた。
まあ、俺には関係ないことさ。
数日後、俺は問題児として渡辺荘という所で預けられる事になった。
夢にまで見た俺のスクールライフは一日にしてどん底に落とされたのであった。
俺の友情物語、恋愛物語が。
絶望に浸っていた俺は、渋々渡辺荘まで足を運んだ。
結局、ルームメイトには会えないまま、問題児として特別寮。
響きは良いが、現状辛すぎ。
部屋に荷物を纏め、固いベッドに横になった。
スクールライフを満喫できる希望はなくなり、涙に溺れかけていた矢先、ガチャッっという音と共に扉が開いた。
そういえばここって出るってネット記事に乗ってなかったけ。
冷や汗を拭い、扉の方を向くと、そこには此方を除き混む女の子がいた。
「ぎゃあーーーーーーーーーーー!」
「きゃあーーーーーーーーーーー!」
俺の叫びと共に戦きを挙げた少女はその場にひっくり返った。
恐怖に惑わされつつ、好奇心で恐る恐る顔を除き混む。
俺は硬直する。
驚き気絶している神崎神楽のがいたのだからーー