プロローグ
20××年 4月 6日
今日は学校の始業式だ。
だがしかし、俺は行かない。
何故ならば俺は典型的なひきこもりというやつだからだ。
なにも学校でいじめにあっていたわけでもなく、この社会に生きる意味がわからなくなってしまったからだ。
ネットはいいよな。
外に出なくても社会の流れが一目でわかる。
これでも俺は引きこもり生活4年目だ。高校に入ったはいいものの、登校したのは片手で数えられる程であろう。
"今年は始業式もいかないの?"
母は俺の事を心配してくれているが、俺には必要ない。むしろ父のように俺を空気として扱ってくれた方がこっちとしてもやりやすい。
'おい、たまには外に出たらどうだ'
父がこんなことを言うとは思わなかった。
確かに、俺が外に出るのはこの日くらいしかなかったからな。
たまには近くのコンビニまでジャンプを買いに行くのも悪くないか。
俺の実力を見せてやるぜ!(σ≧▽≦)σ
こんなことを思いつつ、父が俺の顔に睨み付けていたのに気付き、足早に家をでていった。
コンビニに行く最中、あ ここにあった家が新しくなってる。とか、古かった駄菓子屋がなくなってるな。とか、久しぶりに外に出てみるとやはり周りの様子が大きく変化している。
次に外に出るときはなにができてるんだろうか。なんて考えているうちにコンビニについた。
やはり始めは本棚に目がいってしまう。
俺は漫画家の事を神様だと思う。特に[転生したら…]や[成り上がりの…]などのシリーズがとても俺のこころにしみてくる。
ひきこもりといえばアニメというイメージがあるかもしれないが俺は断然、漫画の方が好きだ。
漫画には夢がある。何度も思った。漫画の世界に入ることができたらと。自分の理想の世界を作れるならば。
もう一度生まれ変わるとしたらもしかしたら俺はひきこもりにならなかったんじゃないかと。
親や教師には気持ち次第とよく言われるが、決してそうではない。一度ひきこもってしまうと'社会から逃げだした者'というレッテルが張られる。
家族も、友人も、教師も、俺を見下してきやがる。
それが嫌で、嫌で、嫌で、嫌で、とうとう、ここまできてしまった。
おっと、もう11時かそろそろお昼時だな。
たしか家にカップラーメンがあったからおかずでも買って帰ろうか。帰ったらソッコーで新しい漫画の詳細でも調べてみるか。
コンビニをでると近くに公園があるのだが、小さい子の声が聞こえてくる。
小さい頃は俺がひきこもりになるなんて考えもしなかっただろうな。
ふと、一昨日の夕食の会話を思い出した。
"最近、小さい子どもを誘拐する事件が頻発してるらしいわね"
なぜ今そんなことを思い出したかというと…
おそらく今、目の前で起きているのはその現場であるからだ。
男は黒のジャケットに長めのサングラスにマスクを身につけ、帽子を深くかぶっており、身長はおそよ170㎝ほどであろうか。
女の子も抵抗しているが、脇道に停車している青い車に引きずられている。
「おい、お前」
そう呟き、顔面にいいのを一発いれてやった。
人を殴ったのは初めてだが、思いの外に拳が痛い。これはやっちまったかもな。
状況を察知したのか、車内から仲間と思われる男たちが降りてきた。
このままじゃヤバイな。
この4年間、ほとんど運動とは無縁の生活だったため逃げるという選択肢は頭の片隅にちぢこまってしまった。
さっきの子は無事に逃げたようだ。
俺はそれを確認すると、とっさに覚悟を決めた。
一人は刃物を持っておりこちらに向けている。確実に俺をやる気でいるだろう。
二人の動きをよく見ていると、背中に違和感を感じた。
今まで感じたことのない背中の筋肉が縮み体内に痛みをかんじた。
あ、お前もそれ持ってたのか。
その場に倒れこんだ。
人助けをして死ぬのも悪くないか。
なんて、どこぞの主人公みたいな事を思っていた。
徐々に痛みがひいていき、意識がもうろうとする。
死ぬってこんな感覚なのか。
案外わるくないかもな、って俺死ぬときになに考えてんだろう笑笑
次に目を閉じたら開けられなくなるだろう。
最後に死ぬ前に残しておきたい事を書いておくのも悪くないかもしれないな。
俗に言うダイイングメッセージってやつか。
カリカリ…
はは!やっぱりこれしかないよな!
我ながら最高の作品だ!
[こ の せ か い は く そ だ]
これを見た警察官の顔が見てみたいぜ……
ぐふっ!もうそろそろかな…
短かったけど結構充実してたかな…
ああ、最後に今日見た漫画の続きを…
…バタン