職業転職、その前に
「本当にやるッスか?」
「うん、決めた事だから」
私達は今、世界の臍の緒に来ていた。
奏さん育成計画、少し変更する。
剣士から召喚師になると言うのだ。
「しかし、よりによって召喚師ッスか」
「なんか歯切れが悪いね、駄目なの?」
「駄目じゃないッス、ただ宗教的なものがあるから言いづらいッス」
「どう言う事?」
「ぶっちゃけ、神様の好き嫌いなんッスよ。『他人に迷惑かけない』って言うのがあって、召喚魔法が嫌いなんッス」
「なるほど、召喚した相手に迷惑かかるからとかかな?」
「だから召喚魔法を覚えるのに問題はないけど、使うのに魔力が倍かかったり凄く疲れたりするッス、それでもなるッス?」
「うん」
決意は固いみたい、咎人の時になにか調べていたのに関係あるんでしょうか?
そしてここ、召喚術を教えてくれるソウル体の所に着いた。
「ゼペックさん、いるッスか?」
「おや、アルトかい…珍しいのぉ」
白髪の初老な方が店の奥から出てきた。
「今日は、召喚術を学びに来たッス」
「入りな…」
「よろしくお願いします!」
奏さんの修行が始まった。
「教えるのは降霊術と召喚術、実は同じ系列の魔法なのじゃ。異界から呼び出し使役すると言う意味ではな、違いは降霊術は交信で召喚術は交流なのじゃ」
「拘束する魔法はありますか?」
「ふむ、言うことを聞かない獣の暴走を止める拘束魔法なら有るが」
「そうですか、やっぱり…」
「ふむ?まあ、良いじゃろう。教えよう」
そして一ヶ月が過ぎた。
「…なぁ、アルト。正直あまりオススメせんぞ」
「なんかあったッス?」
ゼペックさんのお土産屋でお煎餅を買いながら話を聞いた。
「真面目で誠実、ちゃんと魔法を学んでいる姿勢は良いが…」
「?」
「なんとか初歩は覚えたが、才能は皆無じゃ、よほど相性が良い召喚獣でないと呼べんぞ」
奏さん、そう言うのわかるはずなのに、なにを考えているんてしょうか?
「ありがとうございました!」
「うむ、頑張るんじゃぞ…」
「ゼペックさん、ありがとうッス。これ、授業料のソウルポイントッス。奏さん、目的は達成出来そうッス?」
「うん、バッチリだ」
初歩の補助スキルと召喚魔法レベル1を覚える事が出来たようだった。