罪と罰と、その前に
騎士団への出頭と各種書類の提出。
それらも無事終わり、またいつもの日常が戻って一週間が過ぎた。
「アノアルド…」
「はい、なんでしょう♪」
「アノゾロゾロモドリタインデスゲド」
「寝言は寝て言えって感じですぅ♪」
「イヤボンギデ」
奏さんの顔を笑顔で見返した。
「いいッスか、その姿はいつもの亡者姿じゃなく、咎人姿ッス。ソウルポイントは収集激減し本来なら喋る事も不可能。そこを救援の為に飛び込んだ事にして、頭を床に擦りつけて頼んで今の破格の罰則にして貰ったッスよ!」
「…ゴベンナザイ」
「本来なら強制労働とか無料奉仕活動とかなんッスよ、反省してくださいッス」
深淵への探索行為は重罪だ、初犯だし再犯の可能性も無いと考慮しての咎人姿だが、本来なら最悪の場合、転生取り消しの地獄流しも有りえた。
たぶんだけど、神様の方でもなにかしらしてくれたのだろう。
とは言え、咎人姿は亡者姿と違う。
ソウルポイントも制限され会話は困難になる、さらに能力は十分の一。
日常生活にも味覚規制や睡眠不可など、そんないろいろ最低の中を反省して生きて貰うことになる。
「そういえば、今朝に騎士団から書状が届いてたッス。深淵の中で何があったか話して欲しいとか…報告書作成するんでお願いするッス、もしかしたら減刑もあり得るッスよ」
今後の対策に一つでも情報が欲しいみたい。
「ワガッダ…」
『崖に引っかかっている少女、リディに向かって飛び込んだ。瞬間、暗闇に飲み込まれた。いや、暗闇に襲われた感覚だった。
まず全身に痒みと痛みの両方がきた、構わずリディの方に走って進んだ、すると今度は平行感覚が無くなった。
自分が今、上に進んでいるのか下に進んでいるのか、右か左かまるで分からない。
全身の這い回る蟲が噛み付く感覚が、内側に広がって痛みに変わり始めて、死ぬかもと…恐怖がよぎった。
そこで目の前に、光の玉を見た。
小さい暖かい光だ、それに着いて行く、そこで見つけた、それは無惨に引き裂かれた人だった者だった。
立ち尽くし倒れそうになった、けれどアルト、君の顔を思い出し、何か無いかと探したら髪飾りがあったので、拾ってそこから離れた。
光の玉は居なくなっていたけれど、アルトの手が見えたので掴んだら戻れたんだ、ありがとう』
「いまなんて!?」
「アリガドウ…」
「違うッス、髪飾りとかなんとか」
「ゴレ?」
「奏さん、お手柄ッス!!!」
私は急いでモエルエルに連絡した。
「どうしたの?アルト、至急の用件って?」
「これ!見覚えあるッスよね!?」
「ッ!?リディちゃんの髪飾り!これを何処で…いえ、そんな事はどうでもいいのです!」
「早く治療院に行ってあげてッス」
「はい、お礼はのちほど!」
モエルエルは文字通り背中の羽を羽ばたかせて出て行った。
「ドウイウゴド?」
「この世界は、死なない世界、死のない世界ッス。だから、ソウルポイントが1ポイントでも残ってれば、完全復活可能ッス。生前から身につけていたものなら、それが何であろうとその人のソウルポイントが宿るッス」
「良かった、俺の行動は無駄じゃなかった…アレ?」
「いまさっき天使騎士団から正式に緊急メールが来たッス、モエルエルが言ってくれたみたいッスね。では、後先になったッスが…」
略式手続きをする為、光と共に天使正装に着替えた。
「この者、深淵より弱く傷ついた魂を見事に救い出し帰還を果たした。この英雄にそれまでの罰と罪の浄化とソウルポイントを進呈するものとするッス」
咎人姿から亡者姿になった奏さんをソウルポイントを使い、ソウル体に戻すことができた。