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とりあえず今度は、ほんとに目覚がめたみたいだな。ヘルメットが唯一無二の証拠。ヘルメットをとって立ち上がってみるとまたここにも夢じゃないことを教えてくれるものがある。もちろん僕の
身長だ。明らかに目線がさがっているし、てか下がっているというかもとにもどったというほうがしっくりくる。なんか夢がリアルすぎたのか喉いたいよ。ここまでいいことひとつもなし。
唯一いいことがあったとするといつもより起きる時間が十分早い早いということくらいだ。でも省エネ、無気力がモットーな僕からすればあと十分寝させてくれよと思ってしまう。とか考えている
あいだに結局十分たっていつも鳴るあの無機質なアラームがなることになる。
とりあえず僕は夢と同じように準備を始めた、というか夢がいつもと同じような感じだったわけでまったく夢らしくないものだったわけだ。いつもと同じように準備していれば当然だが、同じ
時間に準備が終わり僕はいつもと同じ時間に玄関のドアを開けた。ふつーに晴れてる。ここまで身長以外は夢のまんまなわけだけど梅雨でも晴れることあるよね。てか俺が見た夢普通過ぎて365日中
132日はあんな感じだよ、俺の生活だと。
もちろんぼくはいつもと同じ電車にのり、いつも通りのペースで歩いてるわけだけど着いた時間は夢の時よりも3分遅かった。というのも夢では止まることのなかった信号に三つも引っかかって
しまったわけだ。やっぱリアルは厳しいよぼくに。普通に運がないだけこの程度ではね。学校の見た目は夢と一緒というかいつもと一緒だし校門を通っていく学生ももちろんいつもどおりの普通の
光景だった。そういうこともあってか僕は頬を叩いたりという奇行をすることはなかったけどここで頬を叩いていたら後であんな大声を出すことはなかったと三時間後の僕に伝えたかった。
授業ももちろん普通のいつもどおり進んでいく夢でやったところを普通に。でもぼくは、ここにきて今起きていることが異常なことで、僕が憧れていた非日常の仲間入りをしていることに気付いた。
いつもは無気力な僕もこのときは生気とやる気に満ち溢れた顔をしていたことだろう。一気に世界の主人公になった、気がした。
僕が無気力になった一番の理由は高校受験のときだったわけだがそれ以前のぼくは、活発でそこそこ友達もいてサッカー部に入っていてなおかつ成績は学年上位で、学校のスクールカーストの上位にいたわけだが
成績は良かったが僕は家で勉強したりするタイプではなかった。重ねて言うならサッカーも小学校のワールドカップがありサッカーが流行っていたからなんとなく始めたらなぜか県のMVP選手に選ばれたり
となんとなくでそこそこできてしまっていったぼくは心の中でほかの凡人とは違う特別な人間だと思っていた。今考えれば完全な厨二病患者であった。それもかなり重度の。
しかしそんなぼくが現実を突き付けられたのが高校受験だ。周りの友達たちが受験勉強をしている間も僕はそれまでと同じように家では勉強せずに適当に過ごしていたわけだが
受験なんて僕に、とってはただの通過点であると考えていた。その頃の僕は世界は僕中心に回っている思っていたのだから。主人公はなにもしなくても勝手にヒーローになれるものだしと。
だが結果は、今の僕の生活態度を見ればわかると思うが失敗したのだ。ただ落ちただけではこうならなかっただろう、僕をここまで卑屈にさせたのは一緒の高校を受験したそこそこ仲の良かった
飯島というやつが受かり僕が落ちたことだった。飯島というやつは、脇役の代表格のようなやつだった。成績も今の僕のような中の下でサッカーをやらしても部内でレギュラーをとるのがやっと
というやつに負けたのだ。飯島はきっと僕の知らないところでかなりの努力したのだろう。結局は、僕はサッカーの強い私立に入ることになったわけだがここから僕は少しずつ現実をみるようになった。
せっかくいい気分だったのに嫌なことを思い出してしまった。僕は、結局サッカーは高校二年までやっていたが一度もなレギュラーになることなく雑用係になったのは別の話だ。
本気の努力の仕方がわからない僕が強豪校でレギュラーをとれるはずもない。このころから僕は完全に自分が特別でないことに気付いた。
そんな僕がまた、物語の中心に立とうとしてるというと少し大げさだが{特別}な人間になろうとしていることは明らかだヘルメットありがと。とはじめて思った。
二限も夢でみた通りだった。そうなると僕の足はもちろんあのカフェに向かうわけだが夢の時とは違い早足で向かった。
店員さんももちろん同じ人だ。僕はもう驚かなくなっていた。「おひとり様ですか」と
お姉さん店員が声をかけてきた。「はい」と僕は答えた。「お席へご案内します」と彼女がいうのでまたいそいそとついて行った。
そして席に着くとお姉さん店員が「ご注文はお決まりですか」と聞いてきたので「アイスティーで」と唯一違う答えをした。僕はコーヒーは飲めないからだ
。
僕は当たり前のように「おとといの夕方働いてたれ、いや、茶髪の女の子はどうしたんですか?」一瞬れんちゃんと言いそうになった。そのせいかお姉さん店員は夢の時より少し考え「れんちゃんのことかな
」と言った。「れんちゃん?」と白々しく聞いてみた。
「西野楓恋ちゃんだかられんちゃんなんです」と彼女はまたいった。
そして「お知り合いなんですか」とまた聞いてきた「おととい来たときすごく愛想がよくていい店員さんだなと思って」と冷静に答えた。すると彼女「そうだったんですか」いい少々
お待ちくださいといって裏にさがっていった。なんか先が読めるとつまらないなと思い始めた。主人公の余裕だ。懐かしい。
僕は「ふうー」と一応、息を吐いてアイスティー待つ間まさかこれも夢じゃないかなどとくだらないことを考えているとあっという間にアイスティーが目の前に置かれた。
コーヒーって手間かかるんだなとおもった。
僕はそれを一気に飲み干し店を後にした、なにか小さな違和感を感じながらゆっくりと大学に戻ることになった。
そして、この後の四限は大学唯一の友達である武田君と同じ授業なのだが彼は今日休みでれんちゃんが僕の隣に座る予定だ。
僕はこのときすごく単純なことに気が付いていない。気付くのはもう少し後の話だ。あと五分後くらいかな。
とりあえず僕はいつもの定位置の一番後ろの右端に座った。もちろんいや、来たら困る。ここでも武田君にごめんって心の中で謝る。
。
さあもうそろそろだなーと時計を見ていると後ろから声をかけられた「きたきた」と思ったがここで大きな違和感を感じた。「隣イイですか?」と聞いたことのある声だった。
おかしい普段人から話しかけられるとはほとんどない。しかも男となるとさらに限られてくる。
このとき今まで感じた違和感がじわじわ蘇った。アイスティーが無味だったこと。あと彼女はたぶん高校生だと思うし、まず二か月間同じ講義に出ていれば一回は見かけるだろう。
やっぱり主人公にはなれないかと。気合を入れ振り返るとやはり彼がいた。
「レーーーーーーーーーーーーーーーーブ」と自称夢の案内人ことレアリゼ・アン・レーブの名前を叫んだ。
その瞬間現実に戻るかと思ったら最初にレーブにあった謎の空間に飛ばされていた。