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伸びきったカップ麺ほどまずいものなんて存在するのかと思う梅雨真っ盛りの九時一五分この頃である。一人で食う飯はあじけなくひどく寂しいものだとここ二か月ずっと感じることである。
大学に入るまえは二人の妹と両親が家に居たわけだがいまはもちろんだれもおらず、家具なども最低限しかない。それでもテレビはある。」しかし実家にいた時からテレビはあまりみないしこれといった趣味もなかった。
では僕が実家に居た時なにをしてたのか考えたけど出てくるものはゲームか本を読むことくらいしか思いつかない。決して友達がいなかったわけではない。だってネトゲは一人じゃたのしめないでしょう。
冗談を抜きにしても友達は多くはない高校の友達も何人かいるがこの家にきてから会っていないし大学に関していうならば同じ講義で隣になった、武田君しかいない気がする。武田君は人当りのいい人
で友達も多いのだろうという印象だ。
ぼくが一日でおさらばした靴も彼が選んだものだったのだ。「武田君ごめん」とつい口に出した。
こんなことを考えながらカップ麺のごみを備え付けのごみ箱へ捨てて別に見るわけでもないテレビのスイッチをいれたところであのヘルメットのことを思い出した。テレビでは大学でも話題の
流行のドラマがやっているがもちろんぼくは見たことない。
そんなドラマをBGMに僕は某ライダーの仮面のようなヘルメットを眺めているわけだけど、見れば見るほどに胡散臭い子供のおもちゃのようにも見えなくはないがそれにしてはいささか
高級感となんとも言えない存在感を放っている。インテリアとしてはまったくの0点である。
しかしせっかく拾ってきたわけだしとりあえず充電しとくかとコンセントにケーブルをつないだ。あ、今更気づいたけどこれケーブルついてたのね。まあ電化製品だもんね、当たり前か
と勝手に納得した。それから一時間は待っただろうか「ヘルメットがいきなり「ピィィィィ」となりだした、どうやら充電が完了したらしい。
それにしてもすさまじい音だった。
僕のアラームの10倍の音はしていた。「近所のみなさんごめんなさい」と口ずさむしばらくすると音は勝手に止まりまたテレビの音しかしない静かな部屋に戻った。
僕はこの一時間で寝る準備を終わらせていたので早速ヘルメットをつけてみることにした。なんとも言えない高揚感を感じていた、例えるなら武田君が選んでくれたあの靴初めて履いた
ときのような気持ちである。あーまた思い出しちゃったよ。さっきおさらばした相棒のことを。「いい夢見せてくれよと」となげやりにヘルメットにつぶやいた。
普通ならここで「ハイ!マスター」とかかわいい女の子のアンドロイドがしゃべるとこじゃないかと思ったけど現実はそんないいものではなくただシーンとしただけだった。
ほんの少し期待した自分が恥ずかしかった。 もうとりあえず装着だなととうとう被ることにした。
結果はなんも見えない。あとめっちゃ重い。でもひとつ不思議なことは梅雨のこの時期にこんなものを被れば暑いはずなのに全く暑くない。
そこだけは感動した訳である、だって暑かったら夢見る前に寝れないもんな。ただこんな違和感のある状態で寝れるかなどと思っていたが間もなく僕は眠りについていた。
「やあ!夢の世界へようこそ」と胡散臭い金髪のロン毛のおっさんが声をかけてきた。どこかで見たことあるなーと思ったらあの説明書のおっさんだった。
えっと名前なんだっけなーなどと考えているとすぐさま金髪のおっさんが声をあげた「私のなまえはレアリゼ・アン・レーブだ。ゆーめじくん」と言ってきたのだ。
どこからツッコむべきなのか考えていると彼はまた勝手に話を始めた。「身長172センチ、体重62キロ、彼女はいない、成績は中の上、顔は上の中うーん」と
まず彼の分析と自分の分析とに大きな差が生まれている身長、体重は間違っていないが僕は、成績は中高中の下だし顔は下の上だと自負してる。とりあえずぼくは、彼に「あなたは?」と無難な質問を投げかけた。」それでも彼はうーんとうなったままなので僕は少し大きめな声で「あの!すいません」と声をかけた。
すると彼は急にこう返した「なぜきみはこのヘルメットを手に取ったのだ」と聞いた。僕はこれだからプログラムはと内心舌打ちをした。ゲームでもそうだがNPCと
いうものはこっちの話を聞きやしないのだ、とぼくが思っていると彼は「私プログラムではない、レアリゼ・アン・レーブだ」というのだ。
たぶんこの流れは名前で呼ばないと進まないと感じた僕は、こう問いかけた「レーブさんあなたいったい何者なんですか、あとここはなんなんですか」と
すると彼は少し呆れた顔をして「質問で質問で返すなんてまったく君は」となんだこいつむかつくなと僕は思った。だが彼は続けた「私夢の案内人だよ」と
僕はまたそういうプログラムなのかと思っていると彼は「君がなぜこのヘルメットを手にしたのかわかったよ」と彼は言った。僕はただ落ちてたから拾っただけなのになーと思っているとまた彼が僕の思考を読んだようにこう続けた「このヘルメットは現実何らかの不満をもったひとの手にしか渡らないようになっている、だから君がこのヘルメットをもつ理由が少し気になったがもいわかった。」
僕は勝手に自己完結されて納得いかないがとりあえず飲み込んだ。
そして僕は、皮肉気味にこう聞いた「僕にどんな夢を見せてくれるんですかと?」とすると彼は「それは君が決めることさ、まあ最初は君の心の奥深くに眠る憧れとかの夢
を見るだろう、でも慣れればその夢も自由に操れるさ。」意外と適当だなと思った、すでにここも夢のなかのわけだからとりあえずこのヘルメットがガラクタではないことは証明されただろう。
そして僕は彼にこう言った「とりあえずなんか夢見させてくださいよ」と「まあ焦るな」彼は言った。そして彼は頷き「よしまあいいだろう。最後に言っておくが今から見るのは
夢だ現実ではないそこを忘れないでくれ。」「そんなことわかっていますよ」と適当に返した。彼はならいいといい僕の頭に手を置いた。平然を装っているが内心は高揚感と
期待感で胸を躍らせていた。
「夢の世界へGO」と彼がありきたりな言葉をいった瞬間目の前が白く光った。
そして僕が目を開けるとそこはヘルメットの真っ暗な視界ではなく、窓の隙間から入ってくる
日差しでまぶしくかんじるがいつもの天井だった。
誤字、脱字はちょいちょいあります