表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

共存するヒーロー


人によリけりですが少しグロイ描写があります



ある日、ぼくの耳が急激に成長した。



正直嬉しくない。

何で耳がこんなに成長したんだろうか…


ぼくは昨日何か特別なものを食べただろうか



耳が大きいせいで小道もうまく通れやしない


なんて迷惑な耳なんだろう…




耳が大きいといろんな音が聞こえる


小言はもちろん蟻の屁まで聞こえる


正直嬉しくない。


騒音が頭に響くのです



此処はなんてうるさいのだろう…



なんてぼくには生き辛い世界なのだろう…



両耳をくしゃくしゃに丸めてみたら、


案外、外の音もずいぶん良くなった気がした。



これからはこうして生活してみたらどうだろう

きっと今まで以上に生活することが楽しくて仕方がなくなるだろうね







でもある日、


耳鳴りがするようになりました


あまりにもうるさいので、心配になって両耳を広げてみたら…




外の世界の音が一気にぼくにつきささってきた




騒音をいう名の槍が僕の体をむしばむように降って来た…




ぼくはその槍に耐えられなくて、




叫びました


心の内で絶叫しました




でもそれは一瞬のお話で、



我に返えば、目の前にネズミがいました


白くまん丸なからだに華奢な手足


そして真っ赤な目玉。




可愛らしいねずみでした





それはもう可愛いくて…




「君はどこから来たんだい?」


「何故ぼくの耳の中にいたんだい??」


「ぼくの耳の中でなにをしてたんだい???」




『…………』


ねずみはしゃべるはずがなくて…


ぼくはひどくがっかりしました




可愛らしく無能な白い生物は


ぼくを見つめて、



そしてまたぼくを見つめるのでした








案外可愛い




僕は急に誇らしげな気持ちになった



ヒーローになった気分だ




弱いものは強いものに守られる。ぼくの中ではそれが教訓だった


弱肉強食なんてもう古い



あああ、これでぼくはヒーローだ


スーパーマンだ


キリストだ


神様だ


やった









あははだんだん気分がよくなってきた




何だか心地良い




聖母マリアのように穏やかな気分だ





とりあえず今のぼくは気分がいい







だからぼくは、耳に滞在していた能無しねずみをまた耳の中に住まわせてあげようと思った



そのときのぼくは何だか可笑しかったみたいだ







能無しのねずみはぼくの耳の中でしばらく生活していて、


おなかがすいたあまりにね?


鼓膜をかじってしまったのでした




そして食道を滑り落ちて、


内臓の味見をしていって、



十二指腸が気に入ったらしく、次々と平らげていくのでした







ヒーローはそんなことも知らずに


誇らしげな気分を胸に秘めて


生きづらいこの世の中で居候を続けています






ヒーローは無能のねずみに体をむしばまれつづけています


無能なヒーロー。


おばかなヒーロー。


こんなヒーローは新種だね



無能どころか無体のヒーローへと変わり果てていくヒーローなんて





おもしろい。








ねずみがヒーローの内臓を食べ終えた日にはどうなるんだろう





恩を仇で返されたヒーロー。


とことん無様だね。





これこそねずみの恩返し


ねずみの仇返し





ほら、あそこに大きな耳が丸まった少年がいるだろ?


鮮やかな日差しの下で血色の悪い少年がいるだろ?





あれこそがヒーロー


私たちのヒーロー



無様なヒーロー







さよならバイバイ気違いのヒーロー




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ