第一夜 摩天楼
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──話をしよう。動物は死ぬと普通であれば魂は天へと旅立つが……未練がある霊魂は成仏する事が出来ずにこの世を彷徨う。
彼らは最低人一人分の血肉を得る事によって、人以外の存在……俗に言う人外の存在──生者を喰う事から屍獣と呼ばれた──へと復活を遂げる事が出来た。
……そして、かつて存在した人獣の一族、人狼。
彼らの血を少量でも得たものは、霊魂は強力な生前の姿に近い屍獣として復活を遂げ、生きているものは不老不死になれる……そんな伝説があった。
これは、現代に生きる最後の人狼の物語である──……。
──「おっ、かっわいーっ。君、おにいさんたちと一緒に遊ばない? 」
深夜の都市部。眠らない街の路地裏に、彼らはいた。
1人のスーツ姿の若い女を取り囲むように6人の男。
男たちは気持ちの悪い笑みを浮かべながら女の肩に手を伸ばす。
「おい、こいつ中々上玉だぜ? やっぱヤっちまおうぜ? 」
そう一人が言うと、女以外の全員が笑う。
「……忠告するわ。やめた方がいい。」
ふと、それまで一言も発しなかった女は言葉を喋る。
その口調は無機質な機械の声の様で……、
「……チッ。生意気だな。さっさとヤっちまおうぜ? 」
そう言って男の一人が女の肩に手を置き……。
──ガバジュッ!
そんな音を立て……次の瞬間には男の頭は消えていた。
「……脂っこくて不味い。」
そう言って女は口から白い欠片と肉片を吐き出す。
次の瞬間、短い悲鳴が響いた。
──「……ん? 」
深夜の電灯がポツポツとしかない山の中の道路で……ふと、少年は顔を上げた。
少年は灰色のTシャツに半ズボンにサンダル、と言う格好で……随分と服はボロボロであった。
「……クゥン。」
少年の隣にいた真っ黒い毛の狼は、心配しているそうな鳴き声を発しながら少年を見つめる。
「大丈夫だよ。サナ……心配ないよ。」
そう言って少年はサナと呼んだ狼の頭を撫でる。するとサナはその尻尾を振り、嬉しそうに目を細める。
「……かわいいなぁ。サナ。」
少年はそう言ってサナの事を撫でながらガードレールの向こうを見つめる。
そこには……巨大な摩天楼がそびえ立つ、巨大な都市があった。
〜続〜