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今日も生きている

作者: 豊福 れん

 わたしには、22、3歳で亡くなった同級生がいた。子宮ガンで、発見時には既に末期だったらしい。わたしがその事実を知った頃には既に2年ほど経っていて、知らなかったことにも、若くして亡くなったことにも、相当なショックを受けた。

 彼女とは、小学校の同級生だった。その当時近所に住んでいたこともあり仲良くしていた。よく喧嘩したが、それでも仲は良かった。

 中学校は別々だったし、だんだん忙しくなったため、幾度かの手紙の遣り取りをしたくらいで以降会うことはなかった。

 社会に出た頃、わたしは「きっとみんな元気でやっているだろう」と勝手に思っていた。会いたいとも思っていた。彼女の訃報を聞いたのは、そんな頃だった。地元の祭りを見に行った際に共通の友人が教えてくれたのだが、わたしはその場でボロボロに泣いたことをよく覚えている。


 当時はよく小競り合いをしていた。よく言い争いもした。だが、死んでしまっては喧嘩もできない。小学校の卒業式が今生の別れになってしまったのだった。

 わたしは幸いにも、それまで身近な人の死を知らずに育った。「死ぬ」ということは理解していたが、実際に喪失感を感じたのはこの時が初めてだった。

 「彼女の代わりに」とか、「彼女の分まで」というほどの仲でもなかったので、そんなにおこがましいことは言わない。けれど、わたしは今も生きている。若くして死ななければならなかった友人を思うと、いい加減な生き方は出来ない。毎日をきちんと真っ当に生きなければ勿体ない。今日も生きていることは決して当たり前ではないのだと、その時に強く感じた。


 いつも、祭りの時期になると彼女のことを思い出す。いつか、あの世で彼女に再会出来るだろうか。特別なことはしなくていい。ただ、毎日を大事にしなければと自分に言い聞かせている。

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