さん
一日め。
女のひとにむけられる視線は、あたたかいものでした。
二日め。
女のひとにむけられる視線は、困惑したものになりました。
三日め。
女のひとにむけられる視線は、あきれたものにかわりました。
四日め。
女のひとにむけられる視線は、冷たいものになり、冷たいことばもかけられるようになりました。
物語のキャラクターたちは、それぞれが欠点もありましたが、ほとんどかんぺきなひとたちでした。すぐれたひとたちでした。そういうふうに女のひとがかきました。
欠点だらけの女のひとが、うけいれられないのは当然でした。
五日め。
とうとう女のひとは、女のこによびだされました。
『そろそろもとの世界に帰ったら?』
『おかあさんがここにいると、おはなしが進まないの』
最初はえんりょがちに告げていた女のこでしたが、女のひとがかたくなに帰ろうとしないのをみると、かわいらしい顔をゆがめて女のひとを糾弾しました。
『暗くて、不器用で、グズで…あんたをみているとイライラするの!!』
『こんなのが私たちの母おやだなんて!!』
『さっさともとの世界に帰れ!!』
女のひとは、傷つきました。
かわいい、優しい娘がこんなことを言うなんて。
でもよくよく考えてみると、女のひとは女のこを、自分のようなダメな人間と交流させたことがないのです。
女のこのまわりには、ほとんどかんぺきなひとたちばかりにして、女のこが優しさをそそぐのは、そんなひとたちにです。
女のこが、女のひとを、異物だと思ってきょぜつしても、仕方がないのです。
だけど、そう気づいた女のひとの心にわき上がったのは、もうれつな怒りでした。
愛し、いつくしんできたむすめ
女のひとの全てだった、女のこ
(お前が、私を拒絶するのか)
(誰よりも愛した、幸せにしてやった、お前が!!)
他のだれが女のひとを拒絶しても、女のひとはかなしいだけで、怒りをおぼえることはありませんでした。
女のこと一番なかよくさせていたエルフ族の王子に、さげすまれたときも
女のこの次にかわいがっていた妖精に、ばとうされたときも
女のひとはかなしいと泣きましたが、仕方ないと思いました。
出てくるキャラクターのほとんどは、女のこにしか関心をもたないのです。そういうふうに女のひとがかいたのです。
女のひとをきらっても、仕方ありません。
だけど、女のこはちがいます。
女のこは、女のひとを拒絶してはいけません。愛さないと、いけません。
だって、女のひとは、女のこを、誰よりも誰よりも強く愛しているのですから。
誰よりも女のこを幸せにしているのは自分です。ならば女のこは、それにむくいなければいけません。
誰よりも女のひとを愛して、優しくして、笑顔を見せなければなりません。
それが出来ないのなら
それをしないのなら
『――お前なんか、消えてしまえ』
女のひとは、この物語の作者です。
この世界は女のひとの思いどおりにうごかせます。
女のひとは、この世界で、神さまなのです。
自分を拒絶する女のこなんて、もういりません。