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『わたしが望む世界?』


『そう、おかあさんが望む世界』



そう言ってウサギはニタリとわらいます。わらうウサギは、正直、不自然で気味がわるいです。

でも女のひとは気味のわるさよりも、ウサギが話すなかみの方が気になりました。



『どんなせかい?』


『おかあさんがねがうことが、全てかなう世界。ここからとおい、とおい、異世界。そして…』


ウサギはもったいぶるように、鼻をすんとならしました。


『……おかあさんの「むすめ」がいる世界』




そのことばをきいたとたん、女のひとは歓喜(かんき)しました。

むすめに、女のこにあえるのです。あって話せるのです。

女のひとには、それだけで、たいそううれしいことでした。すべてをすててもかまわないと思うことでした。



『おかあさん、はぐれずについてきてね』



女のひとは、そう言ってかけだしたウサギを、ためらうことなく追いかけました。

いつの間にか女のひとのへやは、ひろく、ひろくなっていて、ふと気がつくと女のひとはウサギもろとも、森のなかにいました。


ウサギはいつのまにか、人形にかわっています。


森をぬけると、キノコでできた家家がみえてきます。

エメラルドでできたお城や、おかしがなる木々がみえてきます。


ファンタジーの世界です。


女のひとがつくった世界です。




竜がすむみずうみをこえて、エルフの里をとおりすぎます。



すべての種族(しゅぞく)のたいざいがゆるされている広場で、ウサギは足をとめました。

そこには、女のひとがつくったキャラクターがすべて勢ぞろいしていました。




エルフ族の王子



おおかみの獣人(じゅうじん)の剣士、



かわいらしい妖精の少女



2000さいにも関わらず、少年の姿のピクシー



ウンディーネ族の美しき長



おとうとを守るために堕天(だてん)したあくま



呪われた魔じゅつ師



血がきらいな吸血鬼



一つ目の姉妹



竜と人間のハーフの青年



け高いユニコーン



そして……



『おかあさん……』



かんきわまったように、目をうるませる、いとしい、いとしいむすめ。





女のひとは、女のこにだきつきました。

腕のなかにすっぽりおさまるほそい体と、はにかんだように笑う顔。


ああ、なんと愛らしいことだろう!!



女のこは女のひとが考えていたよりも、ずっとかわいらしい姿をしていましたが、それでも女のひとはひとめで女のこだとわかりました。



女のひとは、自分がほんとうにおろかだったと思いました。



女のひとがしんだら、女のこの未来はつくれません。

こんなかわいい女のこの未来をめちゃくちゃにしようとした自分を、女のひとははじました。



あれほど愛した女のこが、うでのなかにいる。



かいわもできる。




女のひとは、自分がせかいいち幸せだと思いました。


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