第二章:燃え続ける炎
軽く戦闘シーン入ります。
今度からは週一更新で頑張りたいと思います。(汗)
西暦1912年6月22日・・・・・・・・・
この時代に何が起こったのかドイツ国民なら知っている。
大ドイツ帝国が破滅という名の序曲を自ら演奏した時だ。
作戦名は赤髭を意味するバルバロッサ。
この赤髭だが、言語はイタリア語である。
それは神聖ローマ帝国の皇帝であらせられた“フリードリヒ一世”の髪が、赤毛を帯びたブロンドの髭を持っており、更に失敗こそしたがイタリアに注力していた事から名付けられた。
フリードリヒ一世の最後は沐浴中の溺死、という信じられない最後だったが、大体の者達は信じられなかった。
卒倒であったから溺死したとも、何者かの手によって暗殺された、とも言われている。
しかし、伝説は違う。
皇帝は眠り続けている。
帝国が再び自分を必要とする時まで、眠り続けており、帝国が必要とした時は永い眠りから眼を覚ます、と言われているのだ。
これをちょび髭伍長は命名した。
ソ連侵略作戦---バルバロッサ作戦である。
大ドイツ帝国は名を変えて“ナチス・第3帝国”となった。
首相兼大統領である総統は伍長でしかないアドルフ・ヒトラーが選ばれた。
奴は公平な選挙で選ばれたが、巧みな演説なども武器としていた。
とは言え・・・・亡き父も私も良い印象は無い。
どうも胡散臭くて危険な雰囲気を感じたのだ。
何れ何かやるに違いない、と私達は危惧していた。
まぁ、貴族の大半がヒトラーより皇帝陛下に仕えている、と何処かで思っていたし、少なからず貴族でなく、更に伍長だった彼に従うのが嫌だったのも理由だろう。
そして予想通り、戦争という名の弾丸を放った。
ポーランド、フランスを新しい戦術---“電撃戦”で制したが、イギリスは下せなかった・・・・・・
イギリスを下すにはロシアを下そう、と考えた。
だが・・・・・・何れは雌雄を決する気ではあった。
互いに・・・・・・
それがバルバロッサ作戦である。
私は当時、駆け出しの戦車兵だった・・・・・・
階級は少尉で将校の最下位だったが、学校は上位クラスで卒業した。
配属された場所は後に“大ドイツ師団”と呼ばれる師団だが、まだ師団ではなかった。
そこで戦車を与えられた。
主力戦車だったⅢ号戦車H型・・・・・・
私が最初に跨がり戦場を駆けた愛馬である。
この戦車は5人乗りで皆が与えられた仕事に集中できた。
この戦車は5人乗りで皆が与えられた仕事に集中できた。
私は指揮を担当する戦車長で4人の部下を与えられたのは懐かしい。
皆とは訓練を共にして寝食も一緒であり、家族でもある。
操縦手がロマイニー。
照準手がストラッサー。
無線手のバイアン。
装填手のベルナルド。
戦車長の私。
皆、私の戦友にして家族である。
その者達と共に私は欧州最大の大地に・・・・・・脚を踏み入れた。
1941年6月22日に・・・・・・・・・・
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「ハント少尉、司令部より入電」
通信手のルイが私に声を掛ける。
「何と?」
私はペリスコープから僅かに見える、外の景色から眼を外した。
「我々は先遣隊に合流しろ、との事です」
先遣隊に合流しろ、という事は・・・・・既に敵陣や町は突破した、という事だな。
「そうか。では、行くとするか」
ロマイニー、エンジンを。
そう命令すれば、ロマイニーは直ぐにエンジンを始動させた。
私達の軍馬が蹄音を鳴らして走り出す。
この音を最初に聞いた時は綺麗な音、と思ったものだ。
だが、戦場では・・・・そんな気分は求められない。
「少尉、戦いが終わったら酒場で祝杯を挙げましょうよ」
バイアンの言葉に私は軽く吹いた。
何せ突然の言葉だったからだ。
「おいおい、まだ勝負はついてないぞ」
早過ぎる祝杯だ、と言ったがバイアンは違う、と言った。
「そうじゃないんです。休暇が取れた時ですよ」
「何かあるな?」
彼の口振りから察するに私は勘づいた。
「実はフランス娘と仲良くなりまして、ね」
彼の言葉に私を含めて、車内は色めき立つ。
既にフランスは降伏して我軍が駐屯している。
そこで仲良くなった女性が居ても驚かない。
勝者に媚びる者、抵抗する者、中立する者・・・様々な人間が居る。
しかし、恋愛は人間の感情が一番影響する。
媚びた、という面もあるだろうが、少なくともバイアンの人柄からして女は人柄に惚れた、と思う。
だから、私は彼がフランス娘と仲良くなっても驚かない。
「そのパリジェンヌと知り合った祝杯を挙げたいんだな?」
「いいえ。その・・・・・もう付き合って、かなり経つので休暇を貰ったら式を挙げたいんです」
またもや私達は色めき立った。
何時の間に出来たんだ、と皆で冷やかす。
だが、私は結婚と言う単語に眼を細めた。
私も何れは子を持たなくてはならない。
出来るなら好きな相手、と思ってしまう。
立場からは選ぶ事など出来ないのだが、結婚か・・・・・・
「ハント少尉、祝杯あげませんか?」
バイアンは私に再度、尋ねた。
「良いぞ。休暇を貰ったら私の奢りで祝ってやる。ついでに私が式で立会人になってやる」
そう言えば車内は笑い声で浮足立った。
作戦中なのに、駄目だが・・・・直ぐに変わる。
「敵装甲車2時。徹甲弾を込めろ」
私はペリススコープから見えた方角を言った。
2時方角に敵が見えた。
単機の所を見ると、偵察か?
それとも味方が討ち漏らしたのか?
どちらにせよ、我々にとっては最初の獲物だ。
「よっ・・・・装填良し!」
装填手のベルナルドが叫べば、砲塔が旋回した。
ハンドル音が小刻みに鳴り、砲塔が旋回して敵に狙いを定めた。
敵はこちらに気付いたが、たった一機という事に侮ったのか・・・・・・・・
「敵も主砲を向けて来たぞ!一発で仕留めろ!!」
「任せて下さい。さんざん戦車学校で教え込まれましたからね」
照準手のストラッサーが、落ち着いた声で喋った。
照準手が全てを決める、とは語弊がある。
だが、彼の腕前で勝負は決まるのだ。
そして・・・・・・・・・・・
「照準良し!」
照準手のストラッサーが準備を完了した。
「よし、ファイア!!」
私が叫べば、Ⅲ号戦車H型の42口径5cm Kw.K.38が火を噴く。
BAKOM!!
ストラッサーが撃った42口径5cm Kw.K.38の徹甲弾は僅かに外れて、地面を大きく抉った。
「外れたぞ!お次は敵さんが撃って来た!!」
BAM・・・・・BAKOM!!
敵戦車の砲が火を噴いたが、かなり外れた方角で爆発音が鳴った。
かなり狙いが外れている。
話に聞いた通り・・・・・ソ連の技術は高くないな。
「ふんっ。下手くそが・・・・見てろよ。砲ってのは、こう撃つんだよ!!」
ストラッサーが再び42口径5cm Kw.K.38の引き金を引く。
僅かにずれた照準を微調整して、だ。
BAM・・・・・BAKOM!!
見事に敵戦車の装甲を撃ち破って・・・・・・・・・・・・・
「敵戦車、撃破!!」
私が戦果を言えば、皆は大喜びした。
初戦果だ。
「このまま前進だ!!」
『ヤー!!』
私が命令すれば皆は了解、と叫んだ。
自分の眼に映る敵戦車は炎を出しながら、燃え続けている。
私達が通り過ぎた後も燃え続けていた。
しかし、その時は敵の末路を連想していたのだ。
我が大ドイツ帝国は宿敵---ソ連を打ち倒して、再び帝国の繁栄を気付かん、と・・・・・・・・・・
だが、本当は・・・・・・後数年後には我々の末路になる。
その事実を、私はまだ知らなかった。
それが私の最初の悲劇、と言えるだろうが、その悲劇は・・・・ほんの些細な事でしかない。
本当の悲劇は・・・・・・・・・・・・・