フェル(エピローグ)
4月。
アールティアス家は上へ下への大騒ぎだった。
産婆たちがひっきりなしに動いている。
大きなお腹になったフェルはいつ破水してもおかしくない状態だった。
「明らかに双子ですな・・・」
医者はフェルのお腹を見やってそうジェスに伝える。
フェルは妊娠を知ってから、第2歩兵隊を辞し、狂喜してこの日を待ちわびていた。
あの人の子・・・
最後の願いが叶ったのだ。
それからというもの、来る日も来る日も産まれてくる赤ちゃんのためにさまざまな物を準備していた。
編み物をしたことがないフェルは必死に編み物を勉強し
料理を満足に作れないフェルは必死に離乳食を作れるように研究した。
「ホギャア・・オギャア・・・・」
「男の子と・・女の子ですよ」
「おおお、男の子と女の子の双子か!フェルよくがんばったぞ」
産湯につけ、白い聖布に包む。
「ああ・・・わたしの赤ちゃん・・・」
「そうだ。お前とマサトの子だ」
「うん・・・」
「神に祈りを捧げねばな。元気な男子と女子を授かったことを。そして2人の未来が輝かしいものと」
「うん・・・父様」
フェルは2人を抱いて、神に感謝した。
「寂しくなんかない。あの人が置いていってくれた宝物があるから・・・」
フェルは呟いていた。
4月の暖かい光が3人を包んでいる。
物語はここから始まろうとしていた。
フェル編の終了です。まだ続く予定です。