海のそばの神社
思い立って、神社に行ってみることにした。
その日は、たまたま4限目の授業がなくなって暇になった。
帰ろうにもこの後に部活の会議があって帰れなくて、いつもなら少し先にある大きな駅に遊びに行ったり近くのファストフード店でだらだらと居座ったり教室でゲームをしたりするのだけれど、
どれもやる気にはならなかった。
そんなとき、寮生の子から教えてもらったことを思い出したのだ。
”徒歩十分ぐらいのところに、神社があるよ”
じゃあ行ってみるかという、そういう軽い気持ちで向かった。
神社には一人で行くことにした。
……しかし、出発してすぐに後悔した。
時期は7月。
梅雨明け寸前のその日は日傘をさしていても汗がにじむほど暑かったのだ。
ひいひい言いたくなりながらなんとか神社までたどり着いた。
神社について、私は圧倒された。
地域の神社がここまで立派だとは思っていなかった。
そこだけ区切られたうっそうとした木々。
中は木陰になっていて、青々しい緑がさわさわと音を立ててふわりと風を運んでくる。
おそらく想定されている正規の入り口ではないところから入ったのだが、それでも神社の中が別世界のように感じられた。
裏から回り込むというあまり褒められたことではないことをして本殿にお参りをした。
5円を入れるつもりだったお賽銭に50円を放り込んで、鈴はなかったのでお辞儀と拍手だけをして振り返った。
神社には、私一人だった。
目を閉じてすっと息を吸い込む。
ほんのり冷たい空気を全身で感じる。
ふと、遠くからざざという音がした。
不思議に思って目を開けて音の正体を探す。
そこには、海が広がっていた。
遠くの方に鳥居が立っていて、その奥に海があった。
道の両端は燈籠と木があり、程よく木陰になっている。
まだ時間もあることだし、迷うことなくそちらに足を向けた。
鳥居をくぐってお辞儀をして、海の方に向き合う。
ぶわっと、風が吹きつけてきた。
履いていたスカートがふわりと風をふくんで広がり、日傘を飛ばさないようにとぎゅっと握った。
浜辺に出られるのかと思ったがそこはしっかりとしていて、波止場のようなものにさえぎられていた。
身を乗り出して海を見る。
遠くまで続いていく、少し透き通った海。
これほどきれいな海を見るのは初めてだった。
しばらく、海の音に耳を傾けていた。
釣りをしている人と、たまに自転車で通り過ぎる人以外はいない。
ずっとこうしていられると思った。
けれどやっぱり熱くなって日陰はどこかにないかとあたりを見回した。
すると、少し遠くに浜辺に出られる道を見つけた。
まだ時間に余裕があったので、浜辺に降りることにした。
靴で行ったからなのか、砂浜だからなのか、砂浜に足がめり込んで歩きにくかった。
けれど、それも込みで開放感があった。
目の前に海がある。
それだけで、私にとっては十分なことだった。
まだまだ日が高いけれど、ここで日の入りを見られたらきっときれいなのだろうなと思った。
遠くに見える陸。
飛んでいる鳥。
どこかに行くのか大きな音を立てた船。
来てよかったと思った。
今度は友達にお勧めしてみよう。
そう思って、学校に戻るために海に背を向けて歩き出した。
暑さは、もうすっかり薄れていた。




