街道に出た。
私が村を出て二日。見渡す限りの草原をひたすら歩き続け、ようやく開けた街道へと出た。土埃を巻き上げながら行き交う旅人や荷車を眺めていると、エルム村のバルドさんが話してくれたことを思い出した。
「王都へ行くなら、街道沿いの宿場町に『乗合馬車』の停留所があるはずだ。一人で歩くよりも、ずっと楽に行けるだろう。」
そうだ、なぜ今までそのことをすっかり忘れていたんだろう。二日間の旅で、私の足は悲鳴を上げ始めていた。エルフの身体能力は高いはずなのに、二日も歩き続けることは、前世の運動不足のせいか、思ったよりも疲れるものだった。
(乗合馬車か…。確か、何人かの旅人と一緒に乗って、目的地まで運んでくれる乗り物だったな。料金は थोड़ा かかるかもしれないけど、体力の消耗を考えれば、利用する価値は十分にある。)
バルドさんの話では、街道沿いの宿場町は、ここから半日ほどの距離にあるらしい。私は、疲れた足を引きずりながらも、乗合馬車の停留所を目指してまた歩き始めた。本商人からもらった本を時折読みながら、この世界の文化や歴史に触れるのは面白かったけれど、やはり疲れは無視できなかった。
日はだんだん高くなり、日差しが照り付けてくる。街道には、私と同じように王都を目指す旅人や、 荷物を運ぶ荷車が行き交っている。
(宿場町は、どんな人々で賑わっているんだろうか。無事に乗合馬車に乗れるといいな…。)
そんなことを考えながら歩いていると、遠くに小さなな建物が見えてきた。街道沿いにポツンと立つその建物は、簡素ながらも人の出入りがあるようだ。もしかしたら、あれが乗合馬車の停留所かもしれない。
希望を胸に、私は歩みを速めた。