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異世界鉄道開発紀  作者: 橙谷 玲紗
第一章 王都へ
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旅路にて

エルム村を出て数日後、私は広大な草原の中を一人で歩いていた。時折吹く風が心地よく、空には白い雲がゆっくりと流れている。エルム村で分けてもらった干し肉や果物を食べながら、私はこの世界の景色をゆっくりと堪能していた。


ふと、道の端に小さな荷車がひっくり返っているのを見つけた。そばには、困った表情の若い男性が立っている。荷車には、たくさんの本が積まれていた。


「何かありましたか?」


声をかけると、男性は驚いたようにこちらを向き、そしてホッとしたような表情を浮かべた。


「ああ、ありがとうございます。実は、荷車の車輪が外れてしまって…一人で困っていたところなんです。」


男性は、本商人だという。近くの街まで本を運ぶ途中だったらしい。私は、前世で少しだけ力学に触れたことがあるのを思い出し、荷車の修理を手伝うことにした。


幸い、車輪は完全に壊れてはいなかった。男性と二人で力を合わせ、なんとか車輪を元の場所に戻し、しっかりと固定することができた。


「本当に助かりました!あなたがいなければ、日が暮れてもここに立ち往生していたでしょう。何かお礼をさせてください。」


男性はそう言って、荷車から一冊の本を取り出した。


「これは、私が特に大切にしている本ですが、お礼にあなたに差し上げます。旅の道中で、もしよろしければ読んでみてください。」


受け取った本は、見たことのない文字で書かれていたけれど、装丁は美しく、神聖な雰囲気が漂っていた。神様からのスキルのおかげで、文字は読める。


「ありがとうございます。大切にします。」


私はその本を受け取り、お礼を言った。本商人の男性は、何度も感謝の言葉を述べながら、遠ざかっていった。


別れ際、商人は私に言った。「もし王都へ行くのでしたら、本のギルドを訪ねてみてください。珍しい本がたくさんありますし、色々な情報が集まる場所でもあります。」


その言葉は、私の心に小さな光を灯してくれた。鉄道に関する資料があるとは限らないけれど、もしかしたら、この世界の技術や歴史を知る手がかりになる資料が見つかるかもしれない。


小さな親切が、思わぬ情報を運んできてくれた。私は、もらった本を大切に抱きしめ、商人に感謝しながら、再び王都への道を歩き始めた。この世界での旅は、まだ始まったばかりだ。どんな出会いがあり、どんな発見があるのか、今はまだ想像もできないけれど、私は一歩ずつ、自分の信じる未来へと進んでいく。

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