表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

旅立ち

バルドさんの王都行きを勧める言葉を受け入れた翌日から、エルム村は活気に満ちていた。私が王都で必要になるであろう物資を、村人たちがそれぞれの持ち場で用意してくれたのだ。


「カリーナさん、これは旅の途中で食べるといい。日持ちするように干してあるんだ。」


と、いつも畑仕事で顔を合わせるおばあさんが、丁寧に干し肉を包んで渡してくれた。


「お嬢ちゃん、もし宿に困ったら、これを宿屋の親父さんに見せるといい。顔が利くかもしれないからな。」


と、腕の良い木こりのおじいさんが、手彫りの小さな木札をくれた。


不器用ながらも一生懸命に裁縫をしてくれた若いお母さんからは、新しい旅衣を受け取った。エルフの私に合うように、動きやすくて丈夫な生地を選んでくれたらしい。


バルドさんは、王都までの道のりや、気をつけるべきことなどを丁寧に教えてくれた。アストリア王国の地理や歴史、主要な都市の名前、そして王都の様子など、私が少しでも不安にならないように、時間をかけて話してくれた。


「王都は、エルム村とは比べ物にならないほど大きな街だ。色々な人がいる。親切な人もいれば、そうでない人もいるだろう。用心深く行動するんだよ。」


バルドさんの言葉は、温かく、そして少し寂しそうだった。一ヶ月という短い間だったけれど、この穏やかな村での生活は、私にとってかけがえのないものになっていた。


旅立つ日の朝、村人たちは村の入り口に集まって、私を見送ってくれた。みんな、笑顔で手を振ってくれる。中には、涙ぐんでいる人もいた。


「カリーナさん、どうかお気をつけて!」


「困ったことがあったら、いつでも手紙を送ってきてくださいね!」


「王都で、あなたの夢が叶うよう、心から祈っています!」


たくさんの温かい言葉をかけてもらい、私の胸は熱くなった。この村の人たちの優しさは、私がこの異世界で初めて触れた、希望の光だった。


バルドさんが、そっと私の肩に手を置いた。


「カリーナ、お前さんなら大丈夫だ。自分の信じる道を、まっすぐに進むんだ。」


私は、バルドさんの言葉をしっかりと胸に刻み込んだ。そして、村人たち一人ひとりに深く頭を下げ、エルム村を後にした。振り返ると、小さな村が、朝日に照らされて金色に輝いていた。


(みんな、ありがとう。私はきっと、この世界で鉄道を走らせてみせる。そして、いつか必ず、このエルム村に、その列車を走らせるんだ。)


新たな決意を胸に、私はアストリア王国の王都を目指して、歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ