初めての出会い(前編)
広大な草原に一人佇む私、カリーナ・ルミナ。エルフの姿になったこと、見知らぬ世界にいること、そして鉄道でこの世界を発展させるという使命を告げられたこと。頭の中はまだ整理しきれていなかった。
「(まさか、本当に異世界に転生するなんて…。しかも、エルフになってるっぽいな、この体。そんでもって鉄道で世界を発展させる、か…。なんかしかももう一人称矯正されてない!?)」
前世で培ったゼネコンの知識と、鉄道に対する異常なまでの情熱。それがこの世界で役に立つ日が来るのだろうか?不安よりも先に、かすかな好奇心が湧き上がってきた。
「(でも、どうやって鉄道を引いていこう…。もうすでに鉄道あったりしてね(笑)でもまず、この世界について何も知らないし、誰か人間に会って情報を集めないと。)」
右も左も分からない草原で、私はとりあえず、開けた方角へと歩き出すことにした。風に揺れる草の音と、頭上を舞う見慣れない鳥の鳴き声だけが聞こえる。どれくらいの時間が経っただろうか。歩き続けていると、遠くに小さな森が見えてきた。
「(あの森まで行ってみよう。もしかしたら、何か手がかりがあるかもしれない。)」
森を目指して歩き始めた私の足取りは、まだどこか慎重だった。エルフの体は軽く、前世よりもずっと速く移動できるように感じたが、この世界の危険について何も知らない。慎重に進むしかなかった。
森に近づくにつれて、木々の間から微かに人の話し声が聞こえてきた。
だが、私はなぜか用心深く音のする方へ近づいていった。木々の隙間から覗き見ると、そこには粗末な小屋が数軒建っており、数人の男女が何やら作業をしている様子が見えた。
「(人がいる!助かった…。)」
安堵の表情を浮かべ、私は意を決して小屋の方へ歩み出そうとした。その時、聞き慣れない言葉が飛び込んできた。
「おい、そこのエルフ!」
でも、なぜか私はその言葉を理解できた。そして突然の声に、私の体は硬直した。声のした方を振り返ると、小屋から出てきた屈強な男たちが、訝しげな表情でこちらに向かって歩いてくるのが見えた。彼らの手には、武器のようなものが握られている。
「(エルフ…?私のこと…?)」
男たちの警戒した視線が、私に突き刺さる。異世界での初めての出会いは、友好的なものではなさそうだった。