トンネルを抜けると、そこは異世界だった(?)
いつものように電車に揺られ、西野 響は窓の外を眺めていた。イヤホンからは、お気に入りの鉄道走行音のプレイリストが流れている。週末には新型車両の試乗会が控えており、そのことで頭はいっぱいだった。
「(ふう、今日も疲れたな~。でも、週末の試乗会、本当に楽しみだ。あの最新のVVVFは、どんな音を奏でるんだろうか…)」
電車がトンネルに入り、車内は少し暗くなった。響は目を閉じ、試乗会で体験できるであろう、まだ聞いたことのない走行音に想像を膨らませていた。
「(きっと、今までの車両とは全然違う、未来的な響きなんだろうな…)」
次の瞬間、電車はトンネルを抜け、眩い光があたりに広がっていく。
その眩い光に包まれ、響の意識はそこで途絶えた。
そして、気が付くと、彼は見慣れない白い四角い空間に立っていたのだ。
「やっほー、お疲れさん!」
どこからともなく、軽快な声が響いた。
「(え…?ここは…?あなたは…?さっきまで電車の中にいたはず…)」
「おっと、自己紹介がまだだったね。まあ、いいや。」
「(話の転換が早い…。)」
「まあ、色々あって君にはちょっと別の世界で頑張ってもらうことになるんだよねー。あっちの世界、ちょーっとマンネリ気味でさ。君みたいな面白い人材が必要なんだわ!」
「面白い人材…?私がですか?」
「そそ!そこの鉄道オタクのゼネコンのあんちゃん!君のその熱い鉄道愛で、あっちの世界をガンガン発展させてよ!期待してるぜ!」
「(鉄道愛で、世界を発展…?)」
「そして、君には新しい名前をあげよう。今日から君は、カリーナ・ルミナだ。そして、あっちの世界では、(伏せ字)として生きていくことになる。ゆっくり、じっくり、鉄道を発展させていってね!」
再び、眩い光が響を包み込んだ。そして、意識が戻った時、彼は広大な草原の中に立っていたのだ。見慣れない緑と青空の下、響…いや、カリーナ・ルミナは、自分が全く新しい世界に来てしまったことを、だんだんとと理解し始めた。