助けてモフモフ先生!
なし
第一話 モフモフ先生
この街にはちょっと変わったお悩み相談室がある。
名前は"モフモフメンタルクリニック"。
人々の悩みや愚痴を聞き、解決する為のアドバイスや心のケアをする場所だ。
薬の処方や検査、手術等は行っていない。
しかしそのクリニックの先生はなんと・・・。
モフモフ先生「今日はどうしたのかニャ?」
そう猫である。
ふわふわとした毛とまん丸いシルエットが特徴的なラグドールの猫で、体は大きめだ。
通された部屋は和室で、モフモフ先生は座布団の上に座っている。
相談者も座布団に座って話す形式だ。
自己紹介。
〜モフモフ先生(オス猫)〜
モフモフメンタルクリニックの院長。
ラグドール。
〜ミミ先生(メス猫)〜
モフモフ先生の助手。
白猫。
〜患者のメンタルトレーニング係の猫達〜
きなこ、夜、トム、黒蜜、紅葉、ハノ
〜ケイジ〜
寺の住職
モフモフメンタルクリニックの経営者だが表には出てこない
猫達を陰ながら支える心優しき人
〜修行中のお坊さん達〜
猫達のお世話をしている
ユキト、タツヤ、ケン、シン、ナツメ、ルイ
ーモフモフメンタルクリニックー
このクリニックはとあるお寺と隣接している場所にある。
外観、内観、ともに和で統一されており趣きのある建築物となっている。
モフモフ先生「話を詳しく聞くニャ」
キサキ「はい・・私、気分の落ち込みが酷くて
死にたくなってしまうんです
どうしたらいいんでしょうか」
モフモフ先生「何か悩みがあるニャ?話してみるニャ」
キサキ「はい・・・あの、私、何をやってもダメで、仕事でもミスをしてばかりで
自分なんていない方がいいんじゃないかって
マイナス思考が止まらないんです」
モフモフ先生「なるほどニャー、そういう事ならまずは自分で自分を慰さめるトレーニングからするニャ」
キサキ「え、自分で自分を慰さめるって・・・」
モフモフ先生「いいかニャ?まず第一に落ち込んだり死にたくなったりした時に自分を責めない事が大事だニャ」
キサキ「でもマイナス思考ってダメな事ですよね?」
モフモフ先生「その思考をマイナス思考って言ってるのは君達人間だけニャ
ただでさえ落ち込んでるのに更に自分で追い討ちをかけたらもっと辛くなってしまうニャ
まずは自分で自分に声をかけてあげるのニャ
辛い事があったら死にたくなる時だってあるニャ、大丈夫ニャ大丈夫ニャって言ってあげるのニャ
子どもをあやす時と同じくらい優しくだニャ」
キサキ「そんな事なかなかできないですよ・・・大人なのにそんな甘い言葉・・・」
モフモフ先生「君達人間は自分に厳し過ぎるニャ
だからこそここでトレーニングをしていくニャ
できないうちから追い出したりしないから安心するニャ」
キサキ「あの、トレーニングって具体的に何をすればいいんですか?」
モフモフ先生「いい質問だニャ、トレーニング専用の部屋があるから案内するニャ
ミミ先生、キサキさんを案内してあげてニャ」
ミミ先生「はい」
キサキ「専用の部屋・・・」
ミミ先生「キサキさん、どうぞこちらへ」
キサキ「あ、はい・・・」
第二話 きなこと病み女子
案内された部屋には様々な種類の猫達がいた。
和室の中心に囲炉裏があり、パチパチと音を立てている。
猫達は近くに寄って座布団の上に座りながら体を温めているようだ。
ミミ先生「この中から自分に合った猫を選んでもらい、
その後、一緒に過ごしてもらいます」
キサキ「この中からですか・・・」
沢山いてなかなか決められないキサキ。
すると一匹の猫がキサキに近付いて来た。
ミミ先生「おや、あなたと過ごしたいという猫がやってきましたね
どうしますか?他に気になる猫がいればその子を案内しますが」
キサキ「いいえ、この子がいいです」
キサキは自分から寄ってきてくれたのが嬉しく感じた為そのまま受け入れる事にした。
ミミ先生「分かりました、名前は"きなこ(メス)さんです」
キサキ「分かりました」
ミミ先生「じゃあきなこさんよろしくお願いしますしますね」
きなこ「分かったニャ〜」
キサキは正座しながらカチコチに固まっている。
きなこ「そんな固くならなくていいんだニャ〜、猫相手にそんなにかしこまっても仕方ないニャ〜」
きなこはゆる〜く気怠そうな口調をしているが嫌な感じは一切感じない不思議な猫で小柄な三毛猫だ。
きなこ「まずは凝り固まった体をほぐす為にストレッチするニャ、その後に瞑想をしてから本題に入るニャ〜」
キサキはきなこに促されるままにストレッチを始めた。
キサキは前屈を心みるもなかなか足まで手が届かない様子だ。
キサキ「いたた・・・」
きなこ「随分体が固いニャ〜、体を柔らかくするのは健康にとっても大事な事だニャ、これから習慣化していくニャ〜」
キサキ「は、はい・・・」
5分後。
きなこ「ストレッチはこれで終わりニャ〜
どうかニャ?少しは体がほぐれたかニャ?」
キサキ「はい、だいぶ」
きなこ「じゃあ次に瞑想に移っていくニャ、目を閉じてゆっくり深呼吸するニャ〜
吐く時は吸う時より長めに吐くのがコツニャ」
キサキ「は、はい」
キサキは瞑想を始めたが雑念が酷く、なかなか集中できない様子だ。
キサキ"は〜、瞑想かぁ、やった事あったけど色んな事が頭の中に浮かんできて結局上手くいかないんだよなぁ・・・あーあ、また今回もうまくいかな・・・」
しかしその時だった。
きなこ「ニャー!!」(ベシッ)
きなこはキサキの顔に肉球でパンチした。
無論、怪我をしないように爪は引っ込められてはいるが
衝撃はそれなりにある。
キサキ「ぶっ!!・・!?!?」
突然の衝撃にキサキは思わず目を開けた。
完全に不意打ちを食らった顔をしている。
きなこ「邪念が飛んだら猫の手パンチも飛んでくるニャ〜」
きなこは自分の手をペロペロと舐めながら言った。
その後も何度か猫の手パンチを食いながらもキサキは瞑想を続けた。
10分後。
キサキの顔にはあらゆる場所に肉球の跡がしっかりと残っていた。
きなこ「さて、そしたら本題に入っていくニャ
まずは言葉にすることから始めるニャ〜」
キサキ「言葉に、ですか?」
きなこ「そうニャ〜、辛かったニャ、でも大丈夫ニャ、はい、言ってみるニャ」
キサキ「つ、辛かったニャ、でも、大丈夫ニャ・・・」
何故かきなこの猫語まで真似するキサキ。
きなこ「はい、あと100回やるニャ〜」
意外とスパルタであった。
キサキ「え、ひゃ、100回ですか!?」
きなこ「なんニャ?千回でもいいんだニャ?」
きなこにじと〜っと見つめられ・・・。
キサキ「いえ、100回でお願いします・・・」
その後、休みの日は毎日通う事になった。
1カ月後。
モフモフ先生「いいかニャ?これからは悩んだらまず自分で自分を慰さめる、それでもダメなら周りの人を頼る、それでもダメならここへ来るニャ」
キサキ「は、はい」
モフモフ先生「君ならもう大丈夫ニャ」
キサキ「本当にありがとうございました、あ!きなこさん」
きなこ「君をお見送りしにきたニャ〜」
キサキ「わざわざありがとうございます」
きなこ「いいニャいいニャ、君が元気になって良かったニャ〜」
キサキ「きなこさんのおかげで気持ちが楽になりました」
きなこ「君は礼儀正しいいい子だニャ〜」
キサキ「え、そんな風に言ってもらえたの初めてです」
きなこ「風邪引かないように気をつけるニャ〜」
キサキ「はい!きなこさんも、それじゃあ本当にありがとうございました」
キサキはペコリとお辞儀をして帰っていった。
モフモフ先生「きなこさん、お疲れ様ニャ」
きなこ「いえいえ〜、私も楽しかったニャ〜」
モフモフ先生「それは良かったニャ、
ケイジさんが僕たちの為に猫用のクッキーを作ってくれたニャ
この後おやつタイムにするニャ」
きなこ「やったニャ〜!ケイジさんのクッキーは最高なのニャ!」
モフモフ先生「お坊さん達も一緒に休憩するみたいだニャ」
きなこ「ほんとかニャ?また撫でなでしてもらえるかニャ〜」
モフモフ先生「きっとしてもらえるニャ」
第三話 夜と愚痴り旦那
モフモフ先生「今日はどうしたのかニャ?」
ツダ「俺が上手くいかないのは妻が、妻が全部悪いんです!」
開口一番、妻の悪口を言い始めたツダだったが、モフモフ先生は否定する事なく最後まで穏やかに話を聞いている。
ツダは結婚して三年。妻と二人暮らしをしているそうだ。
ツダ「ね!モフモフ先生も妻が悪いと思うでしょう?」
ひと通り話を聞き終えたモフモフ先生は・・・。
モフモフ先生「君は悪者がいないと気が済まないのかニャ?」
ツダ「え?・・・」
モフモフ先生「もし、妻が居なくなったら君はどうするニャ?」
ツダ「え、そ、それは・・・」
モフモフ先生「きっと君は次は友達が悪い、会社が悪いと言い始めるニャ
友達も居なくなって会社も潰れたら今度は国が悪いと言い出すニャ
この世界に君一人になっても果たしてそれが言えるかニャ?」
ツダ「それは・・・困ります、けど・・・」
モフモフ先生「そうだニャ?
この世界には当たり前な事なんて一つもないニャ
空が青いのも、温かいご飯が食べれるのも、大事な人がそばにいるのも
全部全部、奇跡みたいなものニャ
だから君が向き合わなきゃいけないのは奥さんの前に自分ニャ
人も猫もどんなに怖くても自分と向き合って生きていかなくちゃいけないニャ
決して自分を棚にあげてはいけないんだニャ」
ツダ「・・・」
ツダは何も言い返せないといった様子だ。
モフモフ先生「そんな君をトレーニング専用の部屋に案内するニャ」
ツダ「え?トレーニングって何ですかそれは?」
モフモフ先生「ミミ先生、案内してあげるニャ」
ミミ先生「はい、どうぞこちらへ」
ツダはいかにも警戒しているような目をしたままミミ先生に付いていく。
そして例の猫達がいる部屋へと案内された。
ツダ「猫がいっぱいいる・・・」
ミミ先生「この中で気に入った猫と過ごしてもらいます」
ツダ「といきなり言われてもなぁ・・・」
その時、片目がない猫がツダに近付いて来た。
ミミ先生「おや、どうやら"夜さん(オス)がツダさんと過ごしたいみたいですね
他に気になる猫がいればその子を案内しますが」
ツダ「・・・いや、この猫でいい」
ツダは何かを感じ取ったのか素直に承諾した。
夜「そうか、それならよろしく頼む」
ツダ「随分、猫らしくない猫だな・・・」
夜「細かいことは気にするな」
夜は口数の少ない寡黙でクールな黒猫だ。体は細めで片目に傷がある。
15分後・・・。
ツダ「それでさぁ!妻がさ〜!」
夜「そうか、それは大変だな」
これで10回目なのにも関わらず、夜は平然とした様子で聞き続けている。
まるで酔っ払いの上司を相手にしているしっかり者の部下のような光景だ。
ツダ「うー、だいぶスッキリしたよ、ありがとな」
夜「それは良かった」
ツダ「ところでお前のその目は誰にやられたんだ?
ひょっとして人間に虐待されたとか・・・」
夜「いや、これは別れた女房に殴られてできた傷だ」
・・・・。(し〜ん)
ツダ「お、お前も色々と苦労してるんだな・・・」
夜「お互い様だ」
何とも形容しがたい空気が流れた。
ツダ「夜、俺は妻に殴られる前に仲直りしようと思う」
夜「それがいいな」
ツダ「じゃあ、ありがとう、俺はもう帰るとするよ」
夜「ああ」
ツダは帰宅後、喧嘩中の妻に頭を下げて和解したそうな。
第四話 トムと失恋男
モフモフ先生「今日はどうしたのかニャ?」
マキタ「聞いて下さいよモフモフ先生!
俺、仲良くしてた女の子がいたんです」
モフモフ先生「そうなのかニャ」
マキタ「なのにあいつ、あいつ、男ができてたんです
期待してたのに!
モフモフ先生はどう思いますか!」
モフモフ先生「ニャー、付き合ってもないのに勝手に期待して勝手に期待外れとか言われても相手も困るニャ」
モフモフ先生は呆れた表情を浮かべ首を左右に振っている。
マキタ「グサっ」
モフモフ先生「相手が期待してって言った訳でもないのにそれは相手の子が不憫過ぎるニャー」
マキタ「け、結構グサグサ言いますねモフモフ先生」
モフモフ先生「相手によっては言う事言うニャー
これはそうニャ、あの子の出番ニャ、ミミ先生、トムさん(オス猫)にお願いして欲しいニャ」
ミミ先生「はい、どうぞこちらへ」
マキタ「え?、わ、分かりました・・・と、トムさん?」
そして例の猫達がいっぱいいる部屋へ。
ミミ先生「トムさん、この方をお願いします」
名前を呼ぶと一匹の猫がマキタに近付いてきた。
トム「よろしくニャ!まあまあとにかくここへ座りたまえニャ!」
トムはポムポムと自分の座っている座布団を叩いた。
マキタ「あ、ああ・・・」
マキタはトムの目の前に敷かれている座布団へと座る。
トムはお調子者のグレー色のアメリカンショートヘアだ。
トム「失恋したのかニャ、それは大変ニャ!元気出すニャ!ニャニャニャ!」
笑い方が独特過ぎた。
マキタ「俺が失恋なんて信じられない!勘違いさせたあの女が悪いんだ!あいつは悪女だ!」
トム「失恋したって認めたくない気持ちも分かるけど
女の子は悪女くらいが可愛いニャ!たった一度の失恋くらいどうって事ないニャ!」
マキタ「ふ、ふん!猫に俺の気持ちが分かってたまるか!」
トムはマキタの足に肉球をプニプニすると。
トム「分かるニャ、だっておいらは101回フラれてる失恋のエキスパートだからニャ」
トムは急に哀愁漂う顔とトーンで喋った。
マキタ「え・・・」
15分後。
マキタ「だからさぁ!女なんてぇ、女なんてー!」
トム「相手のせいにしてても仕方ないニャ、諦めてさっさと次の女の子を探しに行くニャ」
マキタ「お前は、101回もフラれて落ち込まないのかよ・・・」
トム「おいらはこんな奴だからフラれるのは当たり前ニャ!
でもおいらはおいらだから変わる気は更々ないニャ!
ニャニャニャ!」
マキタ「そ、そうか・・・俺は変わる努力をしてみようと思うよ・・」
トム「それはいい事ニャ!頑張るニャ!」
クリニックから出てきたマキタ。
帰る頃には日が暮れ始めていた。
カラス「カー!カー!」
マキタ「うん、頑張ろう」
俺はやけに眩しく感じる夕陽に向かって歩き出した。
ニャニャニャと言う笑い声を頭に思い浮かべながら。
第五話 黒蜜と子育て奮闘主婦
モフモフ先生「今日はどうかしたかニャ?」
クドウ「あの、モフモフ先生、子どもをどうやったら自分の思い通りに育てれますか?」
モフモフ先生「ニャんだって?(略:こいつ正気か?)」
クドウ「だから、子どもが理想通りに育ってくれないんです」
モフモフ先生「だって人間だものニャ」
クドウ「先生!真面目に聞いて下さいよ!」
モフモフ先生「僕は至って真面目だニャ
子どもは自分のおもちゃじゃないニャよ?」
クドウ「そんな事は分かってますよ!」
モフモフ先生「それなら一つ聞くニャ」
クドウ「何ですか?」
モフモフ先生「君の思い通りの子どもになって本人が幸せじゃニャいのと
君の思い通りにはならない子どもだけど本人が幸せな場合
君はどっちがいいニャ?」
クドウ「そ、それは・・・」
モフモフ先生「君の発言は子どもの気持ちより自分の気持ちを優先してる気がするニャ」
クドウ「わ、私が悪いって言うんですか!」
モフモフ先生「君が悪いとは言ってないニャ
ただ、前者がいいと思うなら問題は子どもじゃなくて君自身にあると思うニャ
僕は君に子どもの幸せを願う親になって欲しいと思ってるんだニャ」
クドウ「私は子どもの幸せを願ってますよ!」
モフモフ先生「本当かニャ?」
クドウ「う・・・」
クドウは念を押されて言い返せないみたいだ。
モフモフ先生「ミミ先生、クドウさんをあの部屋に案内してあげてニャ」
クドウ「え、あの部屋ってなんですか!?」
ミミ先生「メンタルケアの専門の部屋があるので案内します」
クドウ「何よ!私は正常よ!ケアなんて必要ないわ!」
そして例の猫達がいる部屋へ案内された。
ミミ先生「この中から気に入った猫を選んで一緒に過ごしてもらいます」
クドウ「そんなのどうだっていいわよ!」
ミミ先生「おやおや・・・」
黒蜜「騒がしいねぇ、あんたは私が相手してあげるよ」
黒蜜(メス猫)。シュッとした濃いグレー色のオリエンタルショートヘア。年長者の貫禄溢れる猫だ。
クドウ「はぁ?何なのよこの上から目線な猫は!他の猫に変えてちょうだい!」
黒蜜「随分ヒステリックな人だね」
ミミ先生「まぁまぁ、落ち着いて下さい」
ミミ先生はクドウを落ち着かせようと心みる。
黒蜜「ミミ先生、後は私がバトンタッチするから持ち場に戻っていいよ」
ミミ先生「黒蜜さんありがとうございます、よろしくお願いしますね」
黒蜜「あいよ」
クドウ「ミミ先生?ちょ、ちょっと!」
し〜ん。
黒蜜「ほら、こっちに来なよ、話ぐらい聞いてあげるからさ」
クドウ「な、何なのよ!猫のくせに偉そうに!」
黒蜜「その猫に話を聞いてもらいに来たのはどこの誰だい?」
クドウ「う・・・」
黒蜜「まぁさ、長く生きてりゃ思い通りにならない事の一つや二つあるもんさ」
クドウ「何よ、猫のあんたに何が分かるのよ、どーせ毎日のほほんと生きてるんでしょ?」
黒蜜「あんた猫に何を期待してんだい?
そもそも、あたしらや他人が毎日忙しなく生きてたらあんたはそれで満足するのかい?」
クドウ「それは・・・」
黒蜜「あんたは自分の心に余裕がないだけだよ
自分の弱さや不甲斐なさ
それをまず認めな」
クドウ「私はちゃんとやってるわよ!家事だって育児だって!それなのに誰も認めてくれないし褒めてもくれないじゃない!」
黒蜜「おやおや、あんた、褒めて欲しかったのかい?
意外と可愛いところあるじゃないか」
その言葉を聞いたクドウはかああぁっと顔を赤くした。
黒蜜はクドウの手の上に肉球をプニっと乗せた。
黒蜜「大丈夫、あんたが悪いなんて私は思っちゃいないよ、あんたはここまで必死に走り続けてきたんだろう?」
クドウ「・・・うん・・・子どもは反抗期の中学生で
旦那はいつまでもフラフラしてるから私がしっかりしてなきゃって思って・・」
クドウはポロポロと涙を流し始めた。
黒蜜「いいさいいさ、今この場所にはあんたと猫しかいないんだ
泣きたいだけ泣いたらいいよ」
15分後。
クドウはひと通り泣き終わった後、スッキリした表情になっていた。
クドウ「さっきは酷い言い方してごめんなさい」
黒蜜「いいんだよ、そのかわりこれからは子どもの声に耳を傾けてあげな
それが私からのたった一つのお願いだよ」
クドウ「うん」
黒蜜「いい顔になったじゃないか」
クドウ「え?」
黒蜜「また行き詰まったらここへおいで」
クドウ「・・・近況報告でもいい?」
黒蜜「ああ、もちろんさ」
クドウ「ありがとう」
クドウのお礼の言葉を聞いた黒蜜はニッと笑った。
第六話 紅葉と婚活女子
モフモフ先生「今日はどうしたのかニャ?」
アイノ「あの、私今婚活してるんです
でも、でも!いい人がいないんです!」(わっ)
モフモフ先生「それは困ったニャ!」(ドーン)
アイノ「モフモフ先生!私は真剣に悩んでるんですよ!」
モフモフ先生「ミミ先生、これは紅葉さんの出番だニャ」
アイノ「も、もみじさん?」
ミミ先生「こちらへどうぞ」
アイノ「わ、分かったわよ・・・」
アイノは何が何やら分からないと言った様子でミミ先生に付いて行く。
そして例の猫がいっぱいいる部屋へ。
ミミ先生「紅葉さん、よろしくお願いします」
アイノ「うふ、分かったわ」
紅葉(メス猫)。フェロモン系のモテモテな茶トラ猫。
ミミ先生「アイノさん、今から紅葉さんと過ごしてもらいます」
アイノ「え、話の続きはどうなるの!」
紅葉「私が聞くわ、私の名前は紅葉、よろしくね」
アイノ「そ、そう・・・」
5分後。
アイノ「だから、いい人が見つからないのよ!」
紅葉「当然よ、いい人はいい人に寄っていくものよ」
アイノ「グサっ・・・」
紅葉「まずはいい人に選ばれない自分を認めななきゃ
話はそこからよ」
アイノ「グサグサっ、な、何よ、猫に私の何が分かるって言うのよ・・・」
紅葉「分からないわ、私、猫だもの」
ど正論〜!
アイノ「ぐ、ぐうの音も出ない・・・」
紅葉「あなた、まさかありのままの私を全て受け入れてくれる王子様を探そうなんて思ってないかしら?」
アイノ「そ、それは・・・」
紅葉「はっきり言うけどそんな人この世にいないわよ」
アイノ「じゃあ、じゃあ私はどうしたらいいのよ!妥協して諦めろって言うの?」
紅葉「そんな事一言も言ってないわ、あなたもその"いい人"になる為の努力をするのよ」
アイノ「私は努力してきたわよ!」
紅葉「自分本意な努力はダメよ?空回りして終わるだけ相手の事を考えてする努力でなくちゃ」
アイノ「た、例えば・・・」
紅葉「そうねぇ、まずは」
1カ月後・・・。
アイノ「師匠!私、これから自分磨き頑張るわ!」
紅葉はいつの間にかアイノの師匠になっていた。
紅葉「そう、頑張ってね、応援してるわ」
アイノ「ししょー!ありがとうー!」
アイノはカラッと晴れたような笑顔でブンブンと大きく腕を振りながら歩き出した。
紅葉「ふふ、全然似てないと思っていたけれど
あの子も私も恋愛体質な部分はそっくりね」
第七話 ハノと多忙旦那
モフモフ先生「今日はどうしたのかニャ?」
ショウジ「職場の話なんだが、仕事をしない人がいるんです
同じ給料をもらってるのに不公平だとは思いませんか?」
モフモフ先生「別に思わないニャ」(ドドン)
ショウジ「え、モフモフ先生は思わないんですか?」
モフモフ先生「僕は仮にそれが気に食わなかったら自分もサボるからニャ」
思いも寄らぬ返答にショウジはショックを受けた。
ショウジ「ガーン・・そ、そうなんですか?でも自分が頑張ってるのに相手が楽してたらイライラしませんか?」
モフモフ先生「しないニャ」(ドドン)
ショウジ「か、変わった人、いや猫ですね?モフモフ先生って・・」
モフモフ先生「そうかニャ?君は色んな事に反応してしまうのニャ、それでは疲れてしまうのニャ
これはトレーニングが必要だニャ、ミミ先生、案内お願いするニャ」
ミミ先生「はい、こちらへどうぞ」
ショウジ「え、ちょっと、話はまだ終わってないだろう?」
ショウジはモフモフ先生に文句を言いながらもミミ先生に付いていく。
そして例の猫がいっぱいいる部屋へ。
ミミ先生「この中から気に入った猫と過ごしてもらいます」
ショウジ「え、この中から自分で選ぶんですか?・・うーん」
ショウジが悩んでいると一匹の猫が近寄ってきた。
ミミ先生「おや、あなたと一緒に過ごしたいという猫が来ましたね
どうしますか?他に気になる猫がいれば案内しますが」
ショウジ「どの猫でも変わらん」
ミミ先生「そうですか、名前はハノ(オス猫)さんです」
ショウジ「そうか」
ハノ「よろしくニャ」
ハノ(オス猫)。種類はポインテッド。理論責めが容赦ない猫。
5分後。
ショウジ「俺はこんなに辛い思いして頑張ってるのに楽してお金稼いでる奴がいて不公平だろう?そう思わないか?」
ハノ「自分がこんなに頑張ってるのに楽して生きてる人が嫌だニャんて
お門違いもいいとこニャ」
あまりのバッサリとした返答にショウジは一瞬驚くも反論しようとする。
ショウジ「な、なんだと?」
ハノ「だってその理論だと、この世で1人でも悲しんでる人がいたら皆んなが同じ悲しい思いをしニャさい、笑うのは許さニャいっててるのと同じニャ」
ショウジ「な、何も俺はそこまでは言ってないだろう?」
ハノ「僕からしたら同じに聞こえるニャ、ショウジさんは結婚してるニャよね?」
ショウジ「あ、ああ、そうだが?」
ハノ「じゃあ結婚できなくて辛い思いをしてる人がいるから今すぐ1人身になるニャって言われたら理不尽だと思うニャ?」
ショウジ「そ、それは確かに思うが・・極論過ぎやしないか?」
ハノ「そんな事ないニャ、自分が辛い思いをしてるから相手も同じようにって同調圧力をかけてるようにしか僕には見えないニャ」
ショウジ「お、俺はそんな事は・・・」
ハノの理論的な物言いにさすがのショウジもいつの間にかタジタジになっている。
ハノ「もっと肩の力を抜くニャ、まだまだ人生は長いニャそんなカリカリしてたらこの先、生きていけないニャ」
ショウジ「俺は妻や子どもがいて家族を養わなきゃいけないんだぞ!子どもだってまだ小さい、何も背負ってない奴にとやかく言われたくない!」
声を荒げているショウジに微塵も動揺することなくハノは淡々と質問をした。
ハノ「じゃあどうしてここへ来たニャ?聞いて欲しい話や解決したい事があるから来たんじゃないのかニャ?」
ショウジ「それはそうだが・・・」
ハノ「君が何も背負ってないって言ってる僕らや周りの人達にだって背負ってるもの、悩んでる事、苦しい事は沢山あるのニャ
辛いのは自分だけじゃないニャ」
ショウジ「何で妻と似たような事言うんだよ・・」
ハノ「奥さんに何か言われたのかニャ?」
ショウジ「・・・あいつは俺は人の気持ちが分からないからって言ってきたんだ
こっちは一生懸命働いてるのに」
ハノ「ひょっとしてお金を稼ぐ事に必死で家族との時間を作れてないニャ?」
ショウジ「な、何故それを・・・」
ハノ「なんとなくニャ」
ショウジ「だって仕方ないだろう?俺が家族を養わなきゃいけないんだから」
ハノ「君が必要なのは本当にお金かニャ?
確かに生活するのにはお金は必要ニャ、でも、お金があっても幸せじゃなかったらそれは悲しい事ニャ
逆にお金がなくても幸せに暮らしている人達はいっぱいいるニャ
どこに視点を置くかじゃないかニャ?」
ショウジ「俺は・・本当は家族と過ごしたいんだ、でも、お金が沢山必要で
その為にはいっぱい働かなきゃいけなくて・・」
ハノ「一度、奥さんと話し合ってみるニャ
1人で抱え込んでいても何も解決しないニャ
僕は猫だから色々と限界があるから全部は解決してあげられないニャ」
ショウジ「・・・ああ」
ショウジは急に肩の力が抜けたかのようでポツリと返事をした。
その後。
半年ほど経った頃、一通の手紙がモフモフメンタルクリニック宛に届いた。
ショウジは妻と話し合った結果、家族と共に物価の安い国へ移住したと書かれていた。
贅沢な暮らしではないものの、家族との時間を確保でき、のんびりと幸せな毎日を暮らせているそうだ。
そして最後にはお礼の言葉が添えられていた。
番外編 猫とお坊さん
桜咲く春の季節。
それは猫とお坊さんののんびりとした癒しのひととき。
ユキト「皆んなお疲れ様、ケイジさんが猫用のクッキーを作ってくれたよ、お水も用意してある
一緒に休憩をしよう」
きなこ「待ってましたニャ〜!ケイジさんの作ってくれるクッキーはいつも最高なのニャ〜」
ユキト「はい、きなこの分ね」
きなこ「ありがとニャ〜!」
ユキトはきなこの頭を優しく撫でた。
きなこ「ニャ〜幸せニャ〜」
ユキト「今日もよく頑張ったねきなこ、お疲れ様」
きなこ「ユキトさんもお疲れ様なのニャ〜!」
ユキト「ありがとう」
タツヤ「はい、夜の分だ」
夜「ありがとう」
タツヤと夜。夜は何かを話す訳でもなく、ただただ静かにおやつを食べている。
タツヤはそんな夜の横に座り、ただただお茶を飲んでいる。
ケン「はい、トム!一緒に休憩しような!」
トム「ありがとニャ!一緒に休憩するニャ!」
ケン「トムは最近どうだ?」
トム「相変わらずフラれ続けてるニャ!ニャニャニャ!」
ケン「そっかそっかー!じゃあ今日は慰さめの会だな!」
トム「?ケンさんもフラれたのかニャ?」
ケン「実はそうなんだよー、花屋の店員さんに一目惚れしてな、まぁ告白する前に彼氏がいる事が分かったから告白もなにもなかったんだけどな!」
トム「それは残念だったニャ、今日はお互いに慰さめ合うニャ」
ケン「だな」
シン「黒蜜さん、どうぞ」
黒蜜「いつもすまないねぇ」
シン「いやいや、いつもお疲れ様ですよ、ところで具合の方はどうです?」
黒蜜「ぼちぼちだね」
シン「何かあったらすぐに言って下さいね?」
黒蜜「本当にあんたは心配症だねぇ」
シン「心配くらいさせて下さいよ」
黒蜜「あんたは本当に優しい子だねぇ」
ナツメ「はい、紅葉の分だよ」
紅葉「あらありがとう」
ナツメ「紅葉、後で庭に行かない?桜が咲き始めてるんだ」
紅葉「あらそうなの?それなら皆んなも一緒に連れてってもらえるかしら?」
ナツメ「もちろんさ」
ルイ「ハノ、はい、君の分だ」
ハノ「ありがとニャ・・?今日はあまり眠れてないのかニャ?」
ルイ「よく分かったな?俺が睡眠不足だって」
ハノ「表情と動きを見てればすぐ分かるのニャ」
ルイ「さすがハノだな、観察力が優れてる」
ハノ「ありがとニャ、何か悩みがある感じじゃないニャね・・たまたま寝付きが悪かったって感じかニャ?」
ルイ「そこまで分かるのか・・・ハノは本当に凄いな」
ケイジ「モフモフ先生、ミミ先生、お疲れ様、はい」
ミミ先生「ありがとうございます」
モフモフ先生「ありがとうニャ、ニャ?今日はやけに少ないニャ?」
ケイジ「うーん、最近モフモフ先生が太り過ぎて病気にならないか心配でね
でも皆んなと同じ量だから」
ミミ先生「確かにモフモフ先生最近また体重増えてましたね」
ケイジ「そうなんだよ」
モフモフ先生「そ、そんニャ・・・」(ガーン)
ケイジ「ごめんね」(あまりのモフモフ先生の落ち込み方に罪悪感を感じつつも体が心配なので心を鬼にしている)
モフモフ先生「そのかわり一つお願いがあるニャ!」
ケイジ「うん?何かな?」
モフモフ先生「僕、一緒にボール遊びがしたいニャ!
ミミ先生もやるニャ?」
ミミ先生「ええ、ケイジさんさえ良ければ」
ケイジ"ボール遊びならダイエットにもなるし、うん、ちょうどいい
なるべくなら嫌がるダイエットはさせたくないしな・・・"
ケイジ「うん、分かった、じゃあ食べてすぐに運動するのは体に良くないから少し休んでからやろうね」
モフモフ先生「やったニャ〜!ケイジさん大好きニャ〜!」
モフモフ先生はケイジに抱き付く。
ケイジ「よしよし」
ケイジ"それにしても・・凄い重量感だ・・・このままだと腰が終わるのも時間の問題だな"
果たしてモフモフ先生が痩せるのが先かケイジの腰が終わるのが先か・・・まだ誰にも分からない。
番外編 紅葉の恋模様
オス猫達から絶大な人気を持つ紅葉(メス猫)。
可愛らしいルックスと言いたいことはズバッと言うそのギャップがモテる理由だ。
庭の桜が咲き誇り、皆んなで花見をする事になった。
そんな中、ハノは勇気を出して紅葉に声をかけた。
ハノは紅葉にずっと片想いをしていた。
ハノ「あの、紅葉さん、桜、綺麗だニャ・・・」
紅葉「ええ、そうね」
ハノ"二人でお散歩しませんか・・ニャんて誘いたいけど無理だニャ・・"
紅葉「・・・ねぇ」
ハノ「え、は、はい、何ですかニャ?」
ハノは紅葉から話しかけられて動揺が隠せない。
紅葉「一緒に庭をお散歩しない?」
ハノ「え、い、いいんですかニャ!?」
紅葉「ふふ、ええ、だって顔にそう書いてあるから」
ハノ「も、紅葉さんって心が読めるですかニャ?」
紅葉「違うわ、いつもあなたがやっている事よ?」
ハノ「僕がかニャ?・・・」
紅葉「とにかく行きましょう、ほら」
紅葉は数歩先を歩き出した。
ハノ「あ、はいニャ!」
ハノ"何で僕を誘ってくれたのかは分からニャいし紅葉さんの事だから気まぐれで誘ってくれただけかもニャ・・・
でも、それでもいいニャ、憧れの紅葉さんと花見ができるニャから"
紅葉"ふふ、ハノ君、緊張してるわね
ハノ君って他の猫や人間の前だと心を読んだり論理的に話したりするのに
私の心は読めない上におどおどしちゃうのよね
そういうところ凄く母性本能をくすぐられるわ"
ハノ「ごめんなさいニャ、僕、紅葉さんの前だとカッコ悪いところばかり見せてるニャね・・・」
紅葉「あら、私はそういうところ好きよ?」
ハノ「す、好き!?」(ボフンっ)
紅葉"可愛い"
紅葉「ふふ」
ハノ「紅葉さん、僕の事からかってないかニャ?」
紅葉「そんな事ないわ、私は本気で・・・」
ハノ「?本気で、ニャんですか?」
ハノはキョトンとした顔をしている。
紅葉「ハノ君にはまだ早いわ」
ハノ「え、早いって何がですかニャ?」
紅葉「秘密よ」
ハノ「秘密ニャか・・・気になって眠れなくなりそうニャ」
紅葉「嫌だわ、ハノ君たら大袈裟ねぇ」
ハノ「大袈裟じゃないニャ、だって僕、紅葉さんが・・・」
紅葉「え・・・(ドキドキ)」
ハノ「す、す・・・」
ガサガサガサ!!
突如後ろの草むらからオス猫達が登場☆
「おい、押すなって!」
「紅葉さん!俺もデートして欲しいっす!」
「ニャー!ハノ!抜け駆けは許さないのニャ!」
紅葉「あら・・・皆んないたのね」
ハノ「はぁ、あともうちょっとだったのにニャ・・・」
紅葉「・・・ハノ君」
ハノ「はい・・・ニャ!?」
ちゅっ。
紅葉が落ち込んでいるハノのほっぺにキスをした瞬間、驚いたハノの耳と尻尾が一瞬ピンっと立った。
ハノ「・・・(ポカン)」
ハノは突然の出来事に口がポカンと開いている。
「あー!ハノ!お前ばっかりずるいぞ!」
「紅葉さん!俺にもして下さいっす!」
「僕もニャ僕もニャー!!」
紅葉「ダメよ、ハノ君は特別なんだから、ねぇハノ君、ハノ君?あら、完全に固まっちゃってるわ・・・ふふ、可愛いわね」
ハノ「・・・(フリーズ)」
5分後、フリーズが溶けたハノは歩き出すも近くの木に激突。
心配したお坊さん達によって部屋に運ばれた。
怪我はなかったものの、
しばらくの間、ハノは心ここに在らずだったそうな。
番外編 時は金なり
モフモフメンタルクリニックに一人の男性がやって来た。
名は進藤。世界の"差別を無くそう"という団体のリーダーを務めている。
モフモフ先生の存在を知った彼はこの方ならなんとかしてくれると勝手に思い込み勝手に乗り込んで来たらしい。
かなり焦っている様子だ。
進藤「モフモフ先生!俺、差別を無くそう団体の者ですが力を貸して欲しいんです、差別のない世の中にする為にどうか協力して下さい!」
モフモフ先生「嫌にゃ」
モフモフ先生は診察室の座布団の上に寝転がって腹を上に大の字のまま気怠そうに答えた。
進藤「な、何でですか!?」(ガ〜ン!!・・・)
モフモフ先生「嫌だったら嫌なのにゃ〜」
ケイジ「すみません、モフモフ先生今やる気0状態でして・・・絶賛イヤイヤ期なんですよ」
進藤「イヤイヤ期って子どもじゃあるまいし・・・私はモフモフ先生に期待して来たんですよ!」
モフモフ先生「勝手に期待されても困るにゃ、NO!期待!」
モフモフ先生は片腕の肉球を男性に向けた。
進藤「そんな・・・モフモフ先生は差別のない世の中にしたいとは思わないんですか?」
モフモフ先生「興味ないにゃ〜他人のことなんて心底どうでもいいにゃ〜」
進藤「ひ、酷い!!」
モフモフ先生は大の字のまま話を続けている。
ぽっこりとしたお腹はモフモフとして心地良さそうだ。
モフモフ先生「そもそも相手を変えようなんて傲慢にもほどがあるにゃ
僕からしたら差別をしてる人間もそれを批判してる人間も自分を受け入れろと駄々捏ねてる人間も一緒にゃ
そんなことに時間を使ってるから身の回りは良くならず
不満解消の為にまた相手を批判する
そこまで面倒は見切れないにゃ
僕たちは君たち人間のお守り役じゃないのにゃ」
モフモフ先生は盛大にあくびをするとのび〜っと体を伸ばした。
進藤「な、何も言い返せない・・・」
進藤はぐうの音も出ない様子だ。
モフモフ先生「時は金なりにゃ
つまらないことに時間を使わにゃいで大事な人たちの為に使うのにゃ!」
モフモフ先生はビシッと指(?)で進藤を差した。
ケイジ「おお!!モフモフ先生が熱く語っている!」
ミミ先生「ついにやる気が出たのかしら!」
二人はもちろん100%モフモフ先生の味方だ。
モフモフ先生「ふにゃ〜疲れたにゃ〜」
モフモフ先生は一瞬熱くなったかと思いきや畳の上でゴロゴロと回り始めた。
もうこの話に飽きたらしい。
右にゴロゴロゴロ。左にゴロゴロゴロ。また右にゴロゴロ。左にゴロゴロ。
ケイジ「あ、戻ってしまった・・・」
ミミ先生「あらあら・・・やはりまだ本調子じゃないみたいね」
ケイジ「あの、すみませんがうちはこの子たちの自由な意思を尊重していますのでこの子たちがやりたいと言わない限りは私もそのお話しはお受けできません」
ケイジはペコリと頭を下げた。
ミミ先生「ごめんなさいねぇ」
進藤「は、はい・・・俺、帰ります」(完全に戦意喪失している)
それから一週間後。
なんと進藤率いる"差別を無くそう"団体は名前を変え、"大切な人の為に時間を使おう"団体になったそうな。
モフモフ先生「にゃんだか方向性がズレてる気がするにゃけど、まぁ、いいにゃ」
そう言ってモフモフ先生は自分の顔を手で掻くのであった。
なし