↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/48

第六話「人魚姫のうた」(2/6)

 投影機を見つけた唯斗たちであったが、投影機は後回しとなってしまう。しかし、現状買えるものもあるため、三人は日差しを遮るものを探し始めた――。

   2.



 ――その頃、サングラスの男は人魚姫を目撃したあの場所へ向かっていた。


「ほんとにこんなところで人魚姫を見たのかよ、雑木林じゃねえか」

「本当だよ、このまま抜けると海辺に出んの」


 そうしてサングラスの男の言う通りに、黒髪の男は後ろをついていく。すると、男が言ったことは本当で海辺に出ることができた。


「ほらね」

「こんなところに……海へ繋がる場所があるんだな」

「恐らく、地元民しか知らないんだろう。獣道みたいになってたし、たまに来てる人間もいるんじゃないかな」

「それで? ここへ来て何があるんだよ」

「あんまり意味はないつもりなんだけど、何か得られる情報があったらラッキーくらい」

「そりゃラッキーなことで……それで、ヤクザとの交渉はどうなったんで?」


 黒髪の男の質問に、サングラスは右手で丸を作って答えた。


「それもラッキーなことで……」


 黒髪の男が呆れたように言って、岸壁にもたれかかりタバコを取り出す。


「しっかし、こんな穏やか町だってのに……ヤクザと絡みまくってるとは思えねえな」

「表沙汰にはしないさ。色々と不利になるし、誰もヤクザと繋がってるなんて言いやしない。ましてや、他の町や他県に口外なんてもってのほかだろうね」


 サングラスはビシャビシャと音を立てながら波のかかる砂浜を歩いていると、何かを見つけたようで砂浜を覗き込んだ。


「なんか見つかったか?」

「大当たりも大当たりだよ――」


 そうして摘み上げて、サングラスは黒髪の男にそれを見せる。


「なんだ? これ、魚の鱗か?」

「にしては不思議な輝き方とかしてない?」

「海の生き物なんざいくらでもいる。それが人魚姫のものだなんて断言はできねえだろ。ましてや、それが本物なら他にも落ちてるはずだぜ」

「それはごもっともだけど、期待してみるのも悪くはない。少なくとも、おれの知る限りこんな鱗は見たことがない」

「お前さんは詳しいんで?」

「生憎と――これでも親は漁師をしていてね」

「……それは因果なことで――」


 ◇◆


 ――目的のものを買うことができた唯斗たちは、次に実行日について話し合う。


「取り敢えず、これでカーテンから漏れ出る光はなんとかなる。あとは実行日だけど――」

「買ったその日にやるのはどうだ?」

「流石に使ったことがないものをその場で使うのはリスクがある。投影機は買ったら一度、俺の家で使えるか確かめる。まぁ、あれだけの値段がするなら使えるんだろうけど……リサイクルショップのものだし一応な」


 そう言うと唯斗は、荷物を置くために一度家へ戻ることにした。


「俺は一回、こいつを家に置いてくる。苗島はこの後どうするんだ?」

「オレは……なんも予定ないけど」


 苗島の答えに、唯斗はある提案をした。


「正直、お前に任せるのはすごい不安なんだけど……」

「なんだよ、オレそんなに信用されてないの?」

「してないわけじゃない。まぁいいや、ヒメを色んなとこへ連れ回してやってくれないか?」


 唯斗の提案に、苗島は驚いた表情を見せた。


「連れ回すのはいいけどよ……ヒメのことよく知ってるのはお前だろ? オレに任せていいのかよ」

「だから不安なんだよ。だけど、いつまでもずっと俺と一緒に行動してなきゃいけないのも問題がある。かといって一人で出歩かせるわけにもいかないから、いい機会だし二人で町を散歩してきなよ。苗島もヒメのことについて気になることがあるんだろ? 俺も夏休みの課題溜まってるし、たまにはヒメの居ない状態で課題に手を付けたい」


 苗島もそれには納得し、ヒメは首を傾げる。


「私がシンジと町を?」

「あぁ、今のうちに他の人にも慣れておくといいよ」


 それは、今後地上で生きていくことを見越してのことでもあった。


「……わかった」


 ヒメの了承も得たことで、唯斗は苗島にヒメを任せて家へと帰っていった。


「六時くらいには帰すからな〜!」


 苗島の言葉に、唯斗は振り返らずに荷物を持っていない右手を上げてひらひらと返事を返した。


 ぽつんっと、商店街のど真ん中で二人。よく複数人で居ることはあったが、苗島と二人で居るのはこれが初めてだ。見慣れないコンビに、苗島もヒメもどうすればいいか悩み始める。


「……取り敢えず、もうちょっとだけ商店街歩き回ろっか」

「おう」


 ◇◆


 商店街を当てもなくブラブラと歩きながら、苗島はヒメに気になっていたことを質問してみる。


「人魚姫ってさ、普段海藻以外に何か食ってないの?」

「……食べてないな」

「栄養どうなってんの? てか、腹減らない? それ」

「……海の中にいるときは空かないな。だけど、地上にいると腹が空く」


 ヒメの回答に、苗島も思考を巡らせる。そして、あることを口にした。


「それってさ、地上に居るから腹が減るんじゃなくて、人の姿になってるから腹が減るんじゃねえか?」


 苗島がこの結論に至ったのは、海水浴に行った時に感じたことであった。それは唯斗も感じたことであり、苗島と唯斗の通ずる部分はここにもあった。


「唯斗にも、似たようなことを言われた」

「やっぱりあいつも気付いてたか……なるほどな」


 苗島は納得したように言うと、もう一つ質問をする。


「そういえば、あんまり汗かかないって聞いてたけど、汗かいてるくね?」


 ヒメは苗島に言われて初めて、自身が汗をかいてることに気が付く。


「ほんとだ」

「……ますます不思議だな」


 初めての汗の感触に、ヒメは感想を述べる。


「服が引っ付いて気持ち悪い」

「だろうな。涼みに行くか」


 苗島が提案すると、ヒメも頷いて苗島に付いていく。そうして商店街を出て、ある場所へと向かった。


 辿り着いたのは、ビリヤードやダーツなどが置いてあるこの町唯一の全年齢で遊べる娯楽施設であった。


 店内はエアコンが効いており、入った瞬間すぐに汗が引いていく。


「ヒメって多分、こういうのやったことないよな」

「ない」


 苗島は受け付けで名前を買いて料金を支払うと、ヒメを連れてビリヤードなどが並ぶところへ入っていく。


「オレのオヤジがさ、ビリヤード好きでよくやってたんだよな」

「ビリヤード」

「そう、玉を突いて玉を弾く。それで、弾いた玉を穴へ落としていくの。ただ、突く用の白い玉は入れたらダメ」


 ヒメは苗島から指導を受けながら、ルールと共に打ち方を学ぶ。


「まず、棒の選び方はこうやって台の上で転がすんだ。転ぶ時にガタつきのないやつを選んどけ」

「なるほど」

「それで、持ち方はこう。こうやって先端を指で囲うようにして……狙いを定めながら突く」


 苗島の手が添えられながら、ヒメの初ビリヤードが放たれる。


「おー」

「上手くいったけど、勢いはもう少し欲しいかもな」

「わかった」

「よし、取り敢えずやってみよう。ルールはナインボールな」


 ナインボールは、ビリヤードにある玉の中で一から九までの数字が刻印された玉を使う。一の順番から玉を当てなくてはならず、どのような結果であれ九を穴に落とすことができれば勝利という初心者にもやりやすいルールである。


「順番ずつ穴に落としていってもいいし、狙えるなら間接的に狙って九を落としてもいいんだぜ」

「九を落とせばいいんだな」

「そう」

「わかった、やってみる」


 ヒメは教えられた通りに、棒を構えて白の玉を突く。


 カンっといった音の後、白の玉はコロコロと勢いよく転がっていき、並べられている数字の中で一の玉に向けて体当たりをかます。白の玉の体当たりをくらい、弾けた数々の玉たちがコロコロと台の上を多方向に転がっていく。


「おー、いいね。最初の番はそんなもんよ。オレもオヤジみたいにはできねえ」

「オヤジはもっとすごいのか?」

「ナインボールなら一発目から九を入れてくる」


 ビリヤードは最初、モルックのように決められた形で固まって並べられている。そんな状態から一の数字を狙い、一発目で間接的に九を穴に入れるのは、相当なテクニックが必要であった。


「オレのオヤジ、いつもは漁師やってるけど。ここではビリヤードの名人で有名だからな」


 苗島も幼少期からその姿を見ており、父親から打ち方を教わっていたのだ。


「さて、オレの番だな」


 苗島はそう言うと、棒を構えて放つ。突かれた白の玉はコロコロと転がり、まず一を穴の中へと落とす。しかし、それだけには止まらず白の玉はそのまま七の玉に向かって体当たりをぶちかまし、その七も穴の中へと落とした。勿論、白の玉は穴の中へは落ちていない。


「おー!」

「どんなもんよ」

「シンジ、本当はすごいやつなんだな」

「だ――っ……ヒメっちにとって、オレってどういう扱いなの?」


 苗島は明らかにガクりと落ち込んだが、ヒメは気にせずに自分の番を始める。子が親を見て育つように、ヒメも周りの苗島への対応を見て扱い方を学ぶ。


「えいっ」


 ◇◆


 唯斗は家に帰る途中、不思議な雰囲気の男二人組とすれ違う。


「いやさ、金があればどこへでも行けるわけじゃん?」


 男たちは金の話をしており、明らかに関わらない方がよさそうな雰囲気を醸し出していた。


 サングラスをかけた男の肩には葉っぱが一つ引っかかっており、先ほどまで町中に居なかったことがわかる。


 しかし、この町ではこのようなことはよくある。唯斗もそれはよく知っており、彼らもヤクザ的な何かと関係を持っているのだろうと考えながら家に帰る。


 唯斗があまりヒメを一人で外に出歩かせない理由はこれもあり、関わり方を間違えればとんでもないことになるからだ。しかし、この町のヤクザは他と比べればマシな方で、問題もあまり起きない。


「あんなこと言って任せちゃったけど……大丈夫かな、苗島とヒメのやつ――」

 アート描き

 どうも、焼きダルマです。


 時間の流れは早いですね……。これの投稿準備をしているのは、木曜です。そして、これが投稿される頃には金曜となっています。


 歳を取ると時間の流れが早くなると言いますが、こういうことなのでしょうか。なんて、そんなことを言ったら恐らく、18歳なのに何言ってんだお前ってキレられますね。


 4月なのに寒かったりしますが、みなさん体調には気をつけてください。では、また次回お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。