第9話 強者に呼応せしスキル
〜〜〜あらすじ〜〜〜
カナはまだ暴れていた。
〜〜〜あらすじ終わり〜〜〜
「何となく回を挟んだら、何事もなく終わってそうな気がしたけど、そうでもなかったわ!」
「メグ、何ブツブツ言ってるの!どうするか一緒に考えて!
あの手を使うか、いやでも……。」
フランと私が頭を悩ます一方で、かたやリリエラは上手く逃げ続けている。
全体を見渡す能力に長けているようで、先に安全地帯を見繕ってはうまく戦火を逃れていたのだった。
そうこうしている間にカナの標的がとうとう私たちに向く。
体力のない私たちは逃げきることが難しい。咄嗟に示し合わせて2方向に別れた。
カナは私に狙いを定めた。
ひえー。私入所初日ですよ。こんな仕打ちあるんですかー。
体力もなく息も絶え絶えな私。
どうか、どうか小さなたんこぶで勘弁して下さい……。
そう腹をくくった刹那、横から助けが現れた。
「はっはっはー。危険な嬢ちゃんだ。
でもわんぱくなのも嫌いじゃないぞ!!」
おじさんはカナの棍棒を持った腕の手首を正確に掴むと、全身をくるりを転がし沈黙させた。
「そこの子に聞いたぞ。血が良くないんだな。」
そのおじさんはハンカチでカナの血を拭き取ると、治療魔法をかける。
血は既にほとんど止まっていたし、これでカナが起きても暴れることはないだろう。
おじさんはカナを長座させると背中に肘を置き、喝をいれた。カナが意識を取り戻す。
カナは周囲を見渡し、何となく状況を受け入れたのだった。
「あら、この感じ……またやっちゃったかしら?」
無自覚系転生者みたいな言い草である。
「カナったら〜。もう大丈夫なの?」とフラン。
「ええ。
ふぅ〜、たまにこれやっとくとスッキリしていいわー。」
気持ち良さそうに伸びをするカナ。
はた迷惑この上ない健康法だ。
ぞろぞろと逃げていた生徒たちとチルカ先生が、事件の解決を見て戻ってくる。
チルカ先生も逃げていたのね……。
さて、それにしてもこのおじさん、一体誰なんでしょう?
そう思っていたところに、チルカ先生からおじさんの紹介となった。
「こちらの方は軍で中隊長をされていたアレスさんです。
みなさんの指導のために今回わざわざいらして下さいました。アレスさん、どうぞ。」
「はっはっはー!アレスだ。
老齢で軍を引いた身だが、体がなまっていかん。
だからわしは若い者に稽古をつけて回っているぞ。君たちも見てやろうじゃないか。来なさい!」
何人がかりでもいい、とのアレスさんの言葉を聞いて、四方八方から襲いかかるそよ風組の生徒たち。
しかしアレスさんの身のこなしは華麗な舞いのようだった。
襲いくる剣戟や魔法を寸前で見切り交わしていく。
当たっても大したダメージにはならないだろうが、あえて受け止めることはしない、そんな風だった。
「みんな、筋は悪くないぞ!
そこの子、剣の振りは良い。体全体で剣に力を連動させてみなさい。
魔法使いの君は魔法が拡散弾と集中弾でバラバラだな。集中して統一した撃ち込みができるように。」
正確な指摘の間も周囲からの攻撃は続いている。
「……すごい人がいるのね。」とフラン。
「こういっては何ですがレベルが違いすぎますね……。」
こちらはリリエラ。
しかし私は違う感想を抱いていた。
「私、戦えそう。」
みんなが目を丸くする。
「ステータス1のメグメグが?
まぁ手は抜いてくれるでしょうけど……。」
「違う、そうじゃないの。実は私、変わったスキルを持っているんだ。」
私は3人に私の持つスキル、対ボス無双と弱者必衰のことを話す。
3人はスキルのことについて半信半疑だったが、ステータスが1ということについて納得のいく説明でもあった。
「私、アレスさんの動きを見ている間、その動きがしっかり目で追えたわ。
そしてどんな対応をすればよいか、頭に浮かんでいた。
これは今までになかった感覚なの。」
リリエラが見解を述べる。
「元中隊長というのはかなりの強者。
メグちゃんのシステムはアレスさんのことを『ボス』だと判断しているのかもしれません。」
リリエラは私の思っていたことを、分かりやすく代弁してくれた。
うーん、と考え込むフラン。
「とにかく行ってみなさいよ。何か分かるとしたらそれしかないわ。」
そこでメグの異変に気付くカナ。
「あら、メグメグ。その瞳……色が変わっているわ。」
フランとリリエラも覗き込む。おー、とか、本当だ、と声が上がる。
「ほら、見てご覧なさいよ。綺麗な色してるわよ。」
フランから渡された手鏡で自分の顔を映し見る。
「紫……私の瞳が黒から紫に変わっている……。」
「対ボス無双の効果かもしれないですね……。」
にっこりとするリリエラ。
何にせよ腹は決まった。対戦相手がモンスターでなく指導役なら、私が失敗してもひどい手傷を負うことはないだろう。
ちょうどアレスさんの指導は一段落ついたようで周りに人はいなかった。
じっとアレスさんを正面に捉え、息を整える。
力が湧いてくる。顔が上気しているのが自分でも分かる。
アレスさん、一本お願いします!
そう声をかけると、私はアレスさんに向かって駆け出した。




