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第6話 血と血で交わす魔物との契り


 たこ焼きの件の後、教会を訪れた私。

 筋肉さん曰く、ペットを買う人は必ず訪問しておいたほうが良いとのことで、足を向けたのであった。


 玄関をくぐるとちょうどミルアさんが1人、目をつぶったまま、祈りを捧げていた。



 声をかけようか迷う。

 しばし待ってみようと思い、佇むこと数分。

 ミルアさんは最初と同じ姿勢で微動だにしない。敬虔なお方だ……。


 これは埒が明かないや、と思い直し、思い切って小さくした声をかける。



「ミルアさん、ミルアさん。

 私です、メグです。よろしいですか?」


 あわあわと面食らった表情をこちらに向けるミルアさん。口がひょうたんの形になっている。

 しかしわたわたと狼狽するのも束の間、すぐに笑顔でこちらに向き直る。



「すみません、気づきませんで。何か御用でしたか?」


「こちらこそお祈りの邪魔をしてごめんなさい。


 実は私、スライムを使役することになったんです。そうしたらガルドさんに教会に行ったほうがいいって言われまして。


 何か手続きとかあるんですかね?」


 ほう、とミルアさんが口をすぼめる。失礼ながらおちょぼ口がかわいい。


「手続き……そうですね。手続き的なこと、しておいたほうがいいですね。」


 するとミルアさんは少し厳しい表情になる。


「メグさん、モンスターは無敵ではありません。戦いの中でこの子が死んでしまうと考えたことはないですか?」



 どきりとする私。たしかにそうだ。

 せっかく懐いてくれたこの子も、モンスターとしては腕の立つ方ではない。



「……正直考えていませんでした。いきなりこの子とお別れになるなんて私、嫌です。」


 うんうん、とうなづくミルアさん。

 そこでなんです、と続ける。


「モンスターを使役、つまりペットにするときは大抵の人は教会で血族の契りを交わすんですよ。


 そうすれば人間と同じように、死んでも教会で蘇生することができます。」


 ほう、便利なシステムがあるもんだ!


「一方血族の契りがない魔物は死んでしまうと、体のマナが散り散りになって空気中に還ってしまうんですね。


 仲間の死体はマナが噴き出しすぎないよう、棺桶などで丁重に保管して、すぐ教会に連れていらしてくださいね。」


「雑に扱うと蘇生できないこともあるんですか?」


「もちろん。

 大所帯のパーティが戦闘で壊滅状態になり、棺桶の管理面で少しの人数しか蘇生できなかったケースもあります。


 人間ですらそうなんです。

 脅かすつもりはないですが、命を軽く見てはいけませんよ?」


 その後私とスライムは血族の契りを交わした。


 スライムを魔法陣を中心に置き、ナイフで傷つけた指先から滴る血を与える。


 あとはミルアさんがやってくれたので正直よく分からない。


 呪文ありーの、手をかざしーのいろいろのうちに数刻あって、無事スライムは私の血族となったようだ。


「これでスライムはあなたがいる限り、蘇生が可能です。

 いい家族ができて良かったですね。」


 私はというと後回しにしていた問題に、ちょうど妙案が浮かんでいた。



「ぷるんつ。この子の名前、ぷるんつにします!」


「あらあら、お可愛い名前ですね。」


「ふふっ、そうですよね。ぷるんつ、どう?」


 ぷるんつもぷにぷに体を動かして答える。どうやら満更でもなさそうだ。



 あとはミルアさんに聞きたいことが1つあった。


「ミルアさん、実は私の能力についてなんですが……。」



 私の能力が低いこと。当面の間、普通には戦えそうにないこと。

 それを踏まえて当面の間の、身の振り方を相談してみた。



 するとミルアさんはこんなことを提案してくださった。


「でしたら学校の方に身をよせてみてはいかがでしょうか?」


「学校?ですか。」



 学校と言えばテストと宿題に追われる場所。正直好んで飛び込みたくない気持ちがある。


「うーむ、あんまり気乗りしないなぁ。」


「そうですか?学校では体系だった知識を得られます。

 もともと実戦が苦手だった人が、学校に入って大きく実力を伸ばす、なんてこともちらほら聞くものですよ。」


「転生してまで勉強かぁ……。」


「ふふっ、勉強がお嫌いなんですね。

 でも実戦ばかりが経験を積む方法ではないです。

 それに学校でも実技は盛んですから、安全に強く成れるいい場所だと思いますよ。」



 あともう一つ、とミルアさん。


「友達ができることが良いことだと思います。


 もちろん、ガルドさんや私もあなたの力になります。

 しかし同年代の切磋琢磨できる仲間は、きっとあなたの冒険者生活を充実させるものになりますよ。」



 友達、か。

 

 私は前の世界では友だちは、多い方でも少ない方でもなかった。

 だからこそ彼女らがいなくなった今、そのありがたみがわかる。


 家族も友だちもずっと私の心の支えだった。


 これからくるかもしれない辛くなる日に誰もいないで1人で耐えられるのか?

 友だちを作っておくのはバカにできない。



「学校、飛び入りの私がついて行けますかね?」


「座学で困ったらきっと先生が見てくれますよ。私も少しなら助力致しましょう。」


 面倒な事であってもにこやかに助け舟を出すというミルアさん。

 この気持ち、無駄にはできない!



「……決めました!私、学校に行ってみます!」


 優しい笑みを返すミルアさん。



 次の日筋肉さんに手続きをして貰い、プリカ養成所という学校に転入する私なのであった。

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