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第48話 鍛冶屋が示す条件は


 腹に響くようなイグルさんの怒鳴り声。正直怖い。

 私たちはまず弁明に追われるのだった。



 フランが答える。


「勝手にお宅に入ってごめんなさい。急用であなたにお願いしたいことがあってやってきたんです。

 外から声をかけたんですが、聞こえませんでしたか?」



 ふんっ、と鼻であしらうイグルさん。最初は気づかなかったが片手に持った煙管キセルをふかしている。


「俺は仕事に集中できるように、普段は魔法で小屋の外の音はシャットアウトしてるんだ。

 まともなやつなら返事がなけりゃ他の方法でアポを取ろうとして帰る。まともなやつならな!」



 どうやら少しばかり?頭にきてらっしゃるようだ。しかしこちらも時間がない。フランにがんばって交渉してもらう。


「それは大変失礼しました。

 でも聞いて下さい。


 失礼ついでにあなたにお願いごとがあるんです。ある精霊の命がかかっていてタイムリミットが迫っています。


 ……このブレイブソウルを魂晶にしてほしいんです。

 あなたなら可能だと、確かな筋から紹介があってきました。」



 フランに合わせ、私もアイテムプールからソウルを取り出す。イグルさんは訝しげな目を差し向ける。


 無言で私からソウルを奪い取った彼は、まじまじと観察して告げた。



「……純正のものじゃないが確かに魂のようだ。

 まがい物に過ぎんが俺ならそれなりの魂晶に仕上げられる。」



 パッと明るい表情になる私たち。手と手を取り合う。

 だがイグルさんは渋い顔だ。


「うかれるなよ。


 あんたらな、それで誰かを助けようってことは魂晶で精霊の霊気を養おうって考えなんだろ。

 それって自分勝手だと思わんか?」



 イグルさんの言わんとすることが分からず、はたと動きを止める私たち。


「精霊はみんな寿命を迎える。


 あんさんらの助けたい精霊が誰かは知らんが、今命を追われる精霊の中で、そいつよりずっと社会的貢献をしてきたやつはいないのか?

 そいつよりみんなに愛されてきた精霊もいるんじゃないか?


 そうでなくても未来の誰かのために魂晶を残しておく選択肢だってある。


 他の誰でもない、そいつの命を救うことがエゴでないとなぜ言える?」



 ぐっ、と言葉に詰まるオカリナ一同。

 考えてもみなかった。タロンを救えるアイテムは、そのまま他の精霊の命を紡ぐアイテムでもあるのだ。



 でもそんなことどうでもいい!

 タロンの命は今助けなくちゃ二度と帰ってこないんだ!!



「リリィ、言ってやって。」


 カナに促され、鬱憤を爆発させるリリエラ。


「うっせぇんだよ!!こっちには時間がねぇんだ!

 手伝ってくれるのかくれないのかはっきりしやがれ!!」


 リリエラの剣幕に目を丸くするイグルさん。しかし束の間、豪快に笑い出す。



「ははははは、元気がいいんだな。

 たしかに命を前にしながら、哲学なんぞしてる暇はないだろうな。


 良いだろう、こっちの条件を出そう。ついて来い。」


 イグルさんは草鞋をつっかけると、小屋の外へと歩を進めだした。

 私たちは慌ててついていく。



 草原を突っ切り歩いていく私たち。


 そこへ、言っておくがな、とイグルさんは語る。


「お前らの助けをすると決めたつもりはない。

 むしろ逆だ。


 俺に仕事を頼むやつにはいつも同じ条件を出している。それをお前らにも等しく突きつけるだけだ。


 手練れの冒険者でもそこらの精霊でもまず手こずる課題だ。幼いお前らにどうかできるもんじゃない。」



 無理でもやるんです、案内お願いします、とフラン。



「俺はさすがに極悪人には手を貸さん。

 ……だが聖人にだってタダでは協力しない。


 仕事をするにはそれなりの対価は貰う。

 それが俺の仕事に対するプライドだし、そうやって腕を磨いてきた。

 

 お前たちにやって貰うのは、俺が仕事で使う素材の確保だ。

 ちょうど底を尽きてきたので補充したいと思っていたところだが……こんなちんちくりんのパーティがくるとは思わなんだな。」



 素材集め、高難易度の依頼。ひょっとしてこの流れ、悪いものではないのでは?と思う私。



 草原を抜けると洞窟の入口が顔を出した。どうやらここへ入っていくようだ。



「俺がここに居を構える理由がここだ。ここのモンスターの素材をできるだけ集めたくて今の工房を開いた。

 

 ただモンスターを討伐できたのは俺が若いころだけだった。

 今となっては時折他の冒険者と交渉して、なんとか素材の維持ができているだけだ。


 行くぞ。」



 洞窟の中は暗くないようだった。内壁は真珠のような不思議な美しさを湛えている。

 私たちは早足のイグルさんに急いでついていく。


 通路はさして長くなく、他のモンスターと遭遇することもなかった。

 すぐに開けた空間に繋がり、私たちは最奥に巨大なモンスターが眠っているのを認めた。


 明らかにボスであろうそのモンスターは、巨大なトカゲといった姿形だった。大きな宝石を守るように抱いて眠っている。

 その体、そして抱えている宝玉は洞窟の壁の色と同じような様々に色めく輝きを放っていた。



 イグルさんは、死人は後味が悪い、死ぬなよ、と前置きする。


「人呼んで『玉虫色の(イリデッセント)ドラゴン』だ。

 こいつを倒して、宝石から採れる素材『夢の欠片』を俺に渡してもらおう。」


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