第47話 タロンを救え!天界へ
タロン、タロン。
……タロンがいない!
いつでも何かあったときは呼ばなくても現れたあのタロンが、すっかり姿を消してしまった。
私たちはタロンに繋がる手掛かりの少なさを今になって感じる。
彼は天界の精霊。急に消息を絶たれても、探すあてなどほとんどなかった。
私たちは待ちかねたこの日、あの人に会えることを祈っていつもの場所に足を運んだ。
「……カロスさん!!」
その人は果たしてそこにいた。今日は珍しくたこ焼きをつついていない。
タロンはカロスさんに仕える身。彼女なら何か知っているに違いない。
「おや、あなたたちも屋台の巡回ですか?」
私たちは冗談を言うカロスさんをキッと睨めつける。
「……これは失敬しました。
タロンのことをお伝えします。
先に言っておきましょう、気を確かに持って下さいね。
……彼はもう長くありません。もちろんこれは言葉遊びではありません。」
サーッと血の気が引く私たち。
「タロンは先日体調に不良を感じ、天界に戻ってきました。
診断は霊気の減衰。彼に残った霊気が底を尽きかけているんですね。
もともと精霊というのは寿命が短く、あなたたちと同じくらいしか生きられません。
タロンは上位精霊なので少しは永い時を生き続けて来ましたが、色んな役目を経る中でとうとうお迎えが来たのです。
現在彼は残りの霊気がなくなるまで天界で治療のもと安静にしていて、霊気を少しずつ削りながら最後の時を待っています。」
そんな……とリリエラがへたり込む。
「何か対策はないんですか?
私たち、タロンに何も返せてない……!」
珍しくフランも動揺している。
カロスさんは表情を変えない。
「精霊の霊気を養うにはいくつか方法がありますが、そのほとんどは神域の深部に関わります。
一精霊の命がかかっていても、一般の生命体には侵すことができない領域にあるのです。
もちろんタロンだから、と贔屓はできません。多くの者は自らの寿命をあるがままに受け入れてこの世を終えるのです。」
私は食い下がる。
「……神域の深部に頼らず私たちの力だけでタロンの命を繋ぎ止める方法はないんですか?」
少しの間。
無いわけではないです、とカロスさんは言う。
「一部の説です。私は畑違いなため実際見聞きしたことはありませんし確証もありません。
天界で扱うものに魂というものがあります。
何やら強力な魂を結晶化した、『魂晶』なるものを核として埋め込んだ精霊は、いくらばかりかの余命を得るとの噂があるんですね……。
ただ魂なるアイテムは原則その魂の当人のために使われるものです。
ゆえに空きなどはなく、手に入ることはまずありません……んんっ?」
私はプールからブレイブ・ソウルを取り出していた。
「もしかして、これ……魂晶の材料に使えませんか?」
カロスさんは目を丸くしている。
「驚きましたね……。私も専門ではありませんが、これは確かに魂のようにも見えます。試してみる価値はあるでしょう。
あとは魂晶として使えるよう加工が必要になりますね。」
カロスさんが魔法を展開する。移動魔法だ。
「これは好機です。
タロンに残された時間はそう無いかもしれません。急ぎましょう。
あなた達を天界に案内します。準備はいいですか?」
私たちは顔を見合わせ頷く。
「では魂の工匠のところへ。……行きますよ!」
……目を開けると私たちは草原の中にいた。
金色の長い葉がいくつも頭をもたげ風に揺れている。
そこは一本の道の途中だった。目の前の道はまっすぐ伸び、茅葺き屋根の小屋へと続いている。
「私の案内はここまでです。
何、私はかの小屋の主に嫌われていましてね。あなた達の助けにはならないんですよ。」
リクビさんのときといい、今回の人といい、この人結構敵が多いなぁ、と思わずにいられない私だった。
「あそこにいる人がタロンのための魂晶を作ってくれるんですね?」
カロスさんはすんなりと返事はしない。
「彼に気に入られれば、です。
彼は利己的な人物は嫌いで、自分が利用されるのにも渋い顔をします。
それは誰かの命がかかっていても同じでしょう。
ゆえにあなた達の交渉次第。命運を祈っていますよ。」
カロスさんは姿を消す。
と思ったら一瞬で戻ってきた。
「忘れていました。彼の名はイグル。イグルと言います。
それと転移点を覚えたプリチーアイを託しておきます。
ことが済んだらその子にお願いして移動して下さい。そちらで落ち合いましょう。
それでは今度こそさようなら。」
カロスさんが姿を消し、静寂が訪れた。
タロンに残された時間はどれだけだろう。私たちは急いで小屋まで駆け寄る。
「すみません、すみません!魂の魂晶化を行える方がいると聞いて来たんですが。
イグルさん、いらっしゃいますか?」
返事はない。
もう一度声をかけて見たが同じだった。
ここで引き下がるわけにも行かない。
私たちは一言断りを入れて小屋の中へと足を踏み入れた。
入ってすぐの部屋の中には誰もいなかった。中央の囲炉裏に火はなく、人の気配はない。
この一大事にイグルさんは留守なのだろうか。
どうすべきかひそひそと相談し合う私たち。
すると奥から野太い声がかかった。
「何だぁ?誰の許しを得て、どいつがそこにいる?!」
その声こそイグルさん、その人だった。




