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第46話 喧嘩を越えて仲直り


 しっかり湯に浸かり、泥にまみれた体を洗ってお風呂から上がった私。


「カナエさん、ありがとうございました!おかげで温まりました。」



 にっこりと微笑みを返すカナエさん。


「こちらこそモンスターを倒してくれてありがとうね。この程度でお返しになるかわからないけど。」


 感謝の気持ちをお互いに述べ合い、私は広間に向かった。



 みんなと会うのが少し怖い。

 私の気持ち、ちゃんと言葉にして伝えられるだろうか?



 ゆっくりと通路を行くと見知った顔が、背を壁に預け佇んでいた。

 タロンだ。


「タロン、どうしたの?」


 タロンは意外そうな顔でこちらの表情を見つめる。


「いや、落ち込んでいたりしてないかな、って。

 案外元気そうで良かったよ。」


「ふーん、慰めてくれようとしてたんだ?」


 へへへ、とタロンは頭を掻く。


「どんなパーティでも小さくない喧嘩が起きることはあるよ。それは消えない亀裂を残したり、逆に前よりもお互いの絆を深めたり様々だね。


 メグはすっきりした顔だね。もうみんなとぶつかることはなさそうだ。」


 ええ、小さな子どもじゃありませんから、と胸を張る私。



「タロン、あの時は間に入ってくれてありがとうね。

 私は駄々をこねているだけだったのに、あなたは少しでも肩を持とうとしてくれた。

 その気持ちが嬉しかったよ。」


「まぁみんな熱くなっていたからね。

 時間が問題を解決するっていうけど、逆に言うとみんなが結論を急いでる時は物事って収まらないものなんだ。


 まだまだこのパーティにはおいらの手助けが必要かな?」



 全く調子いいんだから。二人で笑い合う。


 行ってきな、と言葉を残し、そこでタロンは姿を消した。


 私はみんなの待つ場所へ歩みを進める。



 みんな。私は。私は……。



「ぎゃははははは!!」


 響き渡る笑い声。

 広間にはテレビを見ながら爆笑の渦に陥っている3人がいた。



 まがりなりにも覚悟を決めてきた私は出鼻を挫かれた思いだった。


「あのー、みんな。ちょっといいかな……?」


「メグ?待って待って。あとちょっとだけ。

 このコンビのコントが秀逸で……ふふっ、だっはっはっは!」


 フランは涙がちょちょ切れるほどお腹を抱えて笑っている。

 焦ることはないか、と私も一緒にテレビをみる。

 つまんないというほどではないけど、いうほど面白いか?このコント。



 やがてコントは終わり、テレビはコマーシャルに入る。

 私はリモコンを手にとるとテレビを消してしまった。


「テレビを見ているところ済まないんだけど、私、やっぱりみんなにちゃんと謝っておきたくて……聞いてくれる?」



 ちょっと気乗りがしない感じを出しながらも、3人は私の方を向いてくれた。


 なるほど、今になって分かる。

 コントで大袈裟に笑っていたのは少しでも私と向き合うのを遅らせるためだったんだ。3人ともばつの悪い思いをしていたんだね。



 私は単刀直入に切り出す。


「私、今日モンスターを守るような発言をしてすごく反省してるの。


 知らなかったとはいえ、私、冒険者としてなんの覚悟も出来ていなかった……。


 みんなの辛い気持ちをちょっとでも分かっていれば、モンスターを逃がそうだなんて身勝手な発言は出て来なかったはずだわ。

 ごめんなさい。」


 辺りは静寂に包まれる。


 最初に口を開いたのはリリエラだった。


「私ね、どちらかというと一番メグちゃんに近いところにいたの。

 モンスターに対して厳しい気持ちになれたのはけっこう最近のことなんだ。


 もちろん命を粗末になんてできない。

 でも油断が招いたいろいろな事故を知るたびに、なあなあにしちゃいけないことがあるって気づかされたの。


 私、強くなれたんだ。メグちゃんもきっとそうなれるよ。」


 ぐっと力を込めて頷くリリエラ。彼女らしい優しい言葉だ。


 お次はフランだった。


「……メグってさ、私からするとどこか冒険者を夢のあるお仕事みたいに思っている節があるように見えて、何か危なっかしく見えていたんだよね。

 強くなって、敵を倒そう!だけ、みたいな。


 冒険者の本分はモンスターと戦うこと。

 それは命を扱う仕事で、一瞬のうちにその判断が求められるんだよね。


 今回のためらいが私たちや依頼者の怪我に繋がることじゃなくて本当に良かったと思おうね。


 説教臭くなったけど、メグが色々考えてくれて本当に良かった。私嬉しいよ。」



 浮かれ気分でこの世界に転生してきた私。

 フランの推察はまさに図星だった。


 私は冒険者としてモンスターと敵対するとき、どんな事情があっても判断を間違ってはいけないのだ。


 フランの厳しい言葉は心に留めておきたい。


 そしてカナ。


「フルル、なかなかグサリというのね。

 

 私が伝えたいのは、あの時私のモンスターを打つ手は震えていたということくらいかしら。


 メグメグ、一緒に精進しましょう。


 ……こんな厳しいことも時にはあるでしょうけど、まだ私たちと同じパーティでいてくれるかしら?」



 もちろんだ。

 こく、こくりと頷く私。


「お願いします……お願い!

 みんな私と戦ってくれますか?!」



「メグちゃん、これからも一緒にやっていきましょう。」


「メグったら、そんな心配しなくても追い出したりしないわよ。」


「メグメグ、改めてよろしくね。」



 私たちは、もはや嬉しいときの恒例であるが、円を組みながら喜びを分かち合っていた。



 そしてすっかり遅くなったため、お礼も兼ねてということで、カナエさんが寄合所に私たちを泊めてくれるということになった。


 テーブルに豪華な食べ物が所狭しと並べられる。



「すごく素敵な料理……こんなにしてもらって悪いですよ。」


「いいのよ、私の気持ちだから。余っても困るから盛大食べていってね。」



 きょろきょろと周りを見渡す私にカナが問いかける。


「メグメグ、どうかしたの?」


「いや、タロンが来ないな、と思って。」


「タロンちゃんならじきにくると思いますよ。さぁ冷めないうちに頂きましょう。」



 その後、数日。タロンが私たちのもとに現れることはなかった。


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