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第43話 主人公メグ大活躍!


 地中から湧き出る砦の如く、巨大なモグラモンスターが姿を現した。

 あまりに尊大な、場を弁えない登場。いかにも脳筋である類のボスといった、ところ構わぬ出で立ちだ。



 私たちは足場を軽々ふっとばされ、宙を舞っていた。


 これでもリリエラの助言があったから良かった方だ。

 何の準備もなければ、上下左右もわからぬまま空中に投げ出されパニックに陥っていただろう。


 すると、私たちが地面に着陸するのすら待たず、モグラは攻撃を開始した。

 自慢の爪で素早く手元を切り裂くと、衝撃波となった一陣の風が舐めるようにして次々と空を往く。



 ターゲットは私だった。

 こんなことを言っても仕方ないですが、いざという時私が狙われる確率、少し高いと思いませんか?



 ミミズ狙いでクエストを受けた他のパーティはことごとく、モグラの姿を目撃することなく撤退に追い込まれている。

 つまりこいつの遠距離攻撃はそれなりの仕上がりを誇っているとみて間違いない。

 ……ひとつ、お手柔らかに頼みますよ!



 そして今こそテイマーたる私の腕の見せ所だ。



「ぷるんつ、出番よ。お願い!展開ディプロイメント『大盾』!」


 空中で的になっている私の周りに硬化したぷるんつが盾を形作る。


 展開はペットの中でも不定形のぷるんつだからこそできる技だ。

 その場その場に応じた形態を取ることで臨機応変に戦える力……になる予定なのだ。


 直後、鋭い風切音がぷるんつを襲う。

 カタタタ、と表面をなぞる程度だろうと高を括っていた私の予想は見事に外れた。


 ギュララララ!と激しい音がぷるんつの盾に傷をつける。持ち手にも伝わってくる振動から分かる。

 このまま耐えていてはぷるんつが保たない。


 といっても盾無しで回避し続けられるほど私は健脚ではない。

 ここは引きの一手。第2の手段だ。


 ようやく着地した私は、攻撃の来ていないぷるんつの下部の盾を解除する。


「展開『縮地法』。」


 ぷるんつの触手がモグラと距離を取るように伸びる。それはある程度の地点まで行くと、地面をしかと掴んだ。

 触手ははち切れんばかりに張り詰めている。


「『縮地』。」


 私は足をふっ、と浮かせる。

 と、同時に跳ね出すように私の体は触手の先に導かれ、衝撃波の強襲から難を逃れた。


「むー……。」


 練習していた技のうち2つはうまく決まった。だが被害は甚大だ。

 もはやぷるんつを盾にして攻撃を受けることは叶わないだろう。


 かたやモグラには同じく着地を済ませたオカリナの精鋭たちが取り付いていた。

 うちの3人は後衛職も含めて肉体派揃い。器用に攻撃を躱しながらモグラとやりあっている。



「メグメグ!あっちの方はどうなの?」


 そういえばすっかり忘れていた。ここまでモグラが倒せていない、それだけでも答えになるが一応伝える。


「『対ボス無双』は発動していないわ。このモグラ、図体がでかいだけでボスというわけではないみたい。」



 例えばチホとグラディエーターならチホの方が十分に強い。

 それでもチホには『対ボス無双』は発動しなかったし、グラディエーターにはした。

 単純な強さ云々では測れないような基準が『ボス』というものにはあるのだと思う。



「みんな、攻撃の手を緩めないで!こいつにまた地下に潜られたら厄介だわ。

 リリエラも巻き込まれるかもしれないし、もうウィジャ盤には頼れない。

 ……ここで仕留めるわよ!」


 フランの言う通りだ。

 一度地面を跳ね上げられれば、こちらの陣形は容易に崩壊する。おまけに空中を動けない中、一方的に攻撃を許してしまうのだ。

 3人はモグラにどうにか追いすがっていたが、形勢はいかんともしがたかった。



 いつもの余裕の笑みが消えているカナ。

 手傷を追ってなお食らいつくリリエラ。

 叩きつけるように火炎札を繰り出すフラン。


 私はいつも蚊帳の外だった。



 オカリナのみんなは役立たずの私に優しくしてくれる。

 大丈夫だよ。戦うのは私たちがするから。


 私もそんなぬるま湯に浸かりいつまでも甘えていた――



 ……本当にそれでいいのか?



 違う、違う、違う。



 今ここでみんなの力にならなければ嘘だ!



「ぷるんつ……力になってくれるよね?」


「むー!」


 いい返事!

 ぷるんつだって傷を追ってるのに一花咲かせたいんだ!

 そうだよ、私たちの力みせてやろうじゃない!



形態変化トランスフォーム『巨大化』!」



 一気に十倍ほどの体積に膨れ上がるぷるんつ。

 巨大化は諸刃の剣だ。体内のマナを膨張させ体を大きくするが、被弾しやすくなる。

 マナで増やした体が傷つけば、その流出は普段の比ではない。


「ついで展開『縮退』。」


 ぷるんつが体をぎゅうぎゅうに押し込み縮こまる。私はその体に乗り込む。


「『解放』。」


 ぷるんつの体が弾き出され、メグと一緒に宙に飛び出した。ふわりと浮かんだそこはモグラの直上だった。



「モグラさん、あなたはそのか細い目で私を見つめることができるかしら?

 光のない洞窟を行くあなたに、溢れる施しを与えるあの存在を背負う私を――。


 ――日輪は私の背に咲いているわ。」



 モグラは頭上を取られたが、メグの目論見通り、眩しすぎて視界に収めることができないでいるようだった。

 まごつきながら逃れようとしているが、オカリナの3人ががっちり周りを囲んでいる。



「展開、多段『触手』。先端『硬化』。力いっぱい引き絞るのよ……!」


 ぷるんつは4×4のマスを作るとそれぞれに下向きの触手を形成する。

 その触手全てが、ダブついたぜい肉のように目一杯弓を引き、モグラに狙いをつけている。



「必殺!『メタボリック・ランチャー』!てーっ!!」



 16連装の砲撃が、放たれてはまた縮みを繰り返し、雨のようにモグラに降り注ぐ。


 モグラはされるがままだった。


 穿つパンチで窪んだ皮膚が戻る間もなく、次の手次の手が打ち込まれていく。


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