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第4話 力秘められしスキルの名


 戦いの明けた次の日。

 私の周りには野次馬の人集りができていた。


「みてー、あれがスライム以下のお姉ちゃんだよー。」

「ほんとだ、噂通り、頭にスライムをのってけらぁ。」

「ほら、遠くから見るだけよ。指差しちゃ、失礼でしょ。」


 まさに針のむしろの私。

 何故こんなことになったのか。


 ことの顛末はこうだった。



 試合で疲れた私が宿で泥のように眠っている間、筋肉さんが酒を飲む。


 それはもう、飲むに飲む。


 そして饒舌になった筋肉さん、こんな冒険者がいたんだと周りにペラペラ宣いまくる。


 スライムより弱い冒険者の話は、酒飲みたちの格好の肴となった。

 入れ替わり立ち替わり酒場にやってきた彼らは、その話を家族への土産とする。


 そして面白い話がおやつと同じくらい大好きな子どもたちはこれに食いつく。


 こうなると街の噂は早い。


 私の冒険者としての素養は、それに興味のない野良猫なんかを除くと、老若男女のかなりの割合が知ることとなった。



 筋肉さん、いろいろ助けて頂いているだけに恨みはしませんが、この仕打ち、あんまりだと思いませんか??



「むむむー。」


 スライムはというと呑気に伸びをして、高所での日光浴を堪能している。


「あのー、君?

 私の頭の上が好きみたいだけど、そこにいられると余計みんなに馬鹿にされるんだよね。

 こっちのリュックの上に移ってくれないかな?」


 スライムはお気に入りの場所を動きたくないのか、あろうことか数巡聞こえないフリをした!


 しかし大きくため息をつくと、やれやれと言わんばかりにカバンの上に移動する。


 うぅ、なんだかさっそく主従関係を植えつけられている気がする…。


「あ、ありがとうね。

 あといつまでも『君』ってのも締まらないね。急ぎはしないけど、君にもいい名前をつけないとね。」


 すると、向こうから筋肉さんがやってきた。


「おおっと、嬢ちゃんの周り、すごいことになってるな。

 酒が入るとどうもいけねぇ。嬢ちゃん、悪かった悪かった!」


 ぷくっと膨れる私。


「まぁ人の噂は引くのも早いさ。パーシードには色んなやつが色んなことをやらかすから、有名人なのも今だけだろうさ。」


「パーシード、ですか?」


「ああそうか。嬢ちゃんは来たばっかりで地名などはさっぱりだったな。

 パーシードはこの街の名前。そこを含む街々を統治するミリガルドが我らが国の名前だ。」


「へぇー。いろいろ覚えることがありそうですね。」


「まぁ忙しくしていると自然に入ってくもんさ。じゃあまたな、嬢ちゃん。困ったら声かけろよ!」


 筋肉さんは用があるのか足早に去っていった。


 私は私で、当面の買い出しを目的に繁華街へ向かう。

 お金は少し筋肉さんが持たせてくれたのだ。優しいんだけどなぁ。


 すると途中でとんでもない御方に出会う。


「か、か、カロスさん!」


「メグ、こんにちわ。うまくやっていますか?」


 カロスさんは白いTシャツにベージュのチノパンというこの上なくラフな格好だった。

 だが荘厳な印象は以前と変わらない。


「カロスさんもこの世界にこられるんですね。正直驚きました。」


「ええ、よく来ますよ。

 実際に人や世界を観察しなければ、正しい行いは遂行できませんから。」


 カロスさんには言いたいことがたくさんある……。

 でもやっぱりこれだ!


「カロスさん!私、強い敵にも無双できるスキルをお願いしましたよね?

 昨日試しにモンスターと戦ったら全然勝てなかったんですが!」


 するとカロスさんは首をかしげ答える。


「それは違いますね。

 あなたが獲得したスキルは、強いモンスター『に』無双できる能力。

 喜びなさい、ボスクラスの敵に相対しても戦いに苦労することはないでしょう。」


 予想外の答えに目を丸くする私。


「ボスには勝てるけど、雑魚には関係ない?」


「そうです。」


 でも、でも、それにしても!


「私、普通の冒険者が倒せるようなモンスターにすら全く刃が立たないんです。

 これってどういうことなんですか?」


 また小首をかしげるカロスさん。

 こういってはなんだが、その動作に少しムカムカしてくる。


「それは別に付与されたデメリットスキルの影響でしょうね。

 あなたのボスを倒せるスキル『対ボス無双』は、それだけだと世界を脅かす存在すら打破できるスキル。

 それに見合った相応の負の力がかかっているに違いないでしょう。」


 初めて自分のスキルの名を知る。

 対ボス無双。そんないかつい名前だったのね。


 するとカロスさんは手を差し出す。


「掌を重ねなさい、メグ。

 自分のステータスを見られるようにしてあげます。私の裁量で唯一自由に行える行為です。」


 勢いこんで手汗だらけになっていた掌を拭うと、私はカロスさんの手の上にそっと合わせる。


 すると、自分の右手の手首に光の腕輪がくるくると出現し、大きく広がると消えた。


「それで自分のステータスが確認できますよ。

 他の人はレベル30になってから教会で儀式を行い、やっと獲得できる技能です。私と会って得しましたね。


 スキルが把握できたら報告お願いします。

 ……さて、そろそろくる頃でしょうか。」


 カロスさまーっ、と筋肉さんの声が聞こえる。

 振り返ると筋肉さんはたこ焼きを3舟も抱えていた。


「私はあれに目がありませんでして。下界に下りる際はいつも用意していただくのです。」


 正しい行いをするためには実際の観察が必要とおっしゃられたカロスさん。


 きっとこれも正しい行いに必要なことなのだろう。


 そう言い聞かしてみたものの、なかなか納得の行かないメグなのであった。



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