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第39話 稼ぎに稼ぐ名商人


 この日はナツココから連絡を受けて皆でカフェに来ていた。

 どうやらアイテムの売却が滞りなく終わったらしく、今日私たちに取り分のお金を支払える、とのことらしい。


 手元の紅茶とお菓子は今回はナツココの奢りとのこと。取り分3割の彼が大盤振る舞いとあれば否が応にも期待が高まる。


 最後の経費の計算に時間がいるらしく、ナツココはずっと算盤を弾きながら書類とにらめっこしている。私たちはソワソワと紅茶を持て余しながら時を待っている。


「ナツココ、ところでどう?成果の方は上々なの?」

 フランが堪らず話しかける。


「フランちゃん、邪魔しちゃ悪いですよ……。」


 書類から顔を離すと、にこやかにナツココは答える。


「構わないですよ。僕、計算しながらちょっとした会話くらいならできますんで。」


 ほへー、と感嘆の溜息を漏らす私たち。リリエラはともかくほか3人の座学はへっぽこだ。

 ナツココ先生の爪の垢を頂いて煎じたいくらいだ(飲むのはさすがにやだ)。



 その時カフェの扉が乱暴に開かれた。

 玄関をくぐってきたのは、ナツココよりもさらに背が小さいかと思われる女の子だった。少しきつい顔だがあどけなくもあり、おでこの広さに幼さも見て取れる。


 女の子はカフェをキョロキョロと見回すと、なんとナツココを探していたよう。彼を認めるとズカズカと近づいてきた。


「なっちゃん、どこ行ってたの!探したんだから!

 家を出るときはノノカに行き先言ってから!でしょ!」


 対してナツココ、今日はお客さんと合うからのんちゃんに行き先は言えないって言ったでしょ、と取り合う。


「すみません、彼女僕の幼なじみなんです。

 名前はノノカ。元気な子なんですが、元気すぎてよく困らせられます。へへへ。」


 こんにちは、よろしくね、とフランからノノカちゃんに声かけをする。

 みんなで名乗り、ついで私たちがナツココと専属競売の契約をしているオカリナというパーティだということも伝える。


「ふーん、ふうーん。ふっっうーん。」


 ノノカちゃんは私たちを品定めするように眺める。

 そして私たちに指を指しきっぱりと言いのける。


「ちょっと大きなお姉さんたちだけど、くれぐれも、くれぐれも!なっちゃんのことをユウワクしたりしないでくださいね。

 なっちゃんは騙されやすいから、まだまだ恋愛とかは早いんです!いつも私がついていないとだめなんですぅ!」


 たしかにナツココは少し天然なところがある。でもこれってそれ以外にも……。


 カナが一瞬覗いたニヤついた笑顔を消して、爽やかな表情でノノカちゃんに聞く。


「ノノカちゃんはナツココが大切なんだね。もしかしてナツココの彼女なのかな?」


 わかりやすく慌てるノノカちゃん。


「ちがう。ちがう、ちがう!

 誰がこんなに頼りないのの彼女になるもんですか!」


「そっかー、じゃあ私、ナツココくんの彼女になっちゃおうかな?

 計算もできるかっこいい彼氏、私欲しかったんだぁ。」


 わかりやすく顔が青ざめる。だめ、それはだめ、と動揺するノノカちゃん。


「えー、私がどうしようと自由じゃない?だってノノカちゃん、ナツココくんの彼女じゃあないんでしょ?」


 口をぱくぱくさせているが言葉が出てこないノノカちゃん。

 しばらくすると捨て台詞を吐いてカフェから駆け出していった。


「えーん、だめったらだめなのー!!」


 さすがカナ、年下相手にも大人げない。やり方もえげつなくてくれぐれも敵に回したくないと思いました、はい。


「あちゃー、のんちゃん、逃げちゃったかー。ああなると後が面倒なんですよ。

 ずっと布団かぶってグチグチいうのを、相槌打ちながら聞いて、機嫌が治るのを待たないといけないんです。

 ……今度はやめてもらえると助かります。」


 てへぺろで応じるカナ。こいつやはり反省してない。



 するとここで算盤を弾いていたナツココの手が止まった。


「みなさん、今回お渡しする額が決まりました。

 満足していただけたら、また僕を使っていただけると幸いです。」


 支給額が書いてある書面を受け取り、みんなで覗き込む私たち。一同の頭の上にびっくりマークが飛び出る。


「な、な、ナツココくん!この額、本当ですか!

 私たちが売った時の5倍近くあります……!」


「任せたアイテムも前回より多かったけど、この数字は多すぎない??」


 ナツココは少し悦に入ったように解説をつける。


「せっかくの皆さんの戦利品、無駄にしないように策を尽くしましたよ。

 宣伝にも力を入れ、コレクターの多い界隈に方々足を伸ばしました。スライムヘルムに良い値がついて、結果みなさんの喜ぶ稼ぎができたと思っています。」


 但し、とナツココは言う。


「今後はスライムヘルムはこれほどの値で売り捌けないと思ってほしいです。

 市場にスライムヘルムが流れすぎたせいで、品物がダブついて暴落しているんですね。

 ヘルムも装備品としては三流品。仕方ないことかもしれませんね。」



 そうかー。タンタラ遺跡に移動魔法の転移点を設置してもらったけど、旨味はそれほどでもなくなったかもしれない。


 それではみなさんの口座にお金を振替えておきますね、とナツココ。

 ナツココと契約する際に私たちは競売の売上を受け取る用の銀行口座を作っている。

 これで当面の資金は安泰といったところだ。


「ふふふ……これでメグちゃんの相部屋編入と臨時収入を祝って宴会が開けそうですね!」


「リリィ、浮かれているところ残念だけど、まだ最後のゼリーが残っているのよ……。」


 宴の妄想からたっぷりこってりの現実に引き戻されるオカリナ。

 帰ってゼリーを食したあと。しばらくは食べ物の名前を聞くのですら嫌になる一同であった。



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