第38話 模擬戦を経て成長へ
「それでは……始め!」
今日のそよ風組の授業は、もはや恒例となった生徒同士の模擬戦。この試合形式の授業も慣れてきて、もう何度目になるか覚えていない。
ちなみに私が入った頃は模擬戦はグループ同士の勝ち抜き戦方式だった。
しかし両者のパーティに実力差があると、控えの人があまり対戦に出られないことがあった。
なので今は基本総当り方式を採っている。もしお互いのパーティの人数に差があるときは、少ない方のパーティから一度戦った人が選抜され試合数が調整される。
「勝負あり!勝者、フラン!!」
フランはふふん、と得意げな笑みを浮かべる。
「そ、そんな私のマジックシールドを破壊できる炎弾だなんて……ガクッ。」
フランのエンチャント火炎札の猛攻を防ぎきれず、モロに連撃を浴びた相手はその場にへたり込む。チルカ先生が急いで駆け寄り、治癒魔法を施していた。
「フランちゃん、すごいです……!」
「私の火炎札は魔法防御も物理防御もある程度突破可能だからね。先手を取らせてくれる相手ならわけないわ。」
「素敵な戦いだったわ、フルル。次は私が行くわよ。」
お次はカナの番。
試合が開始するとともに、滑るように地面を駆け、相手との距離を詰めるカナ。
相手が対応できずわたわたしている間に、腹、胸、頭に向かって三連撃を繰り出した。
これで相手はノックアウト。素晴らしい成長だが、僧侶のあるべき姿からどんどん乖離していってる気が。
「……。カナ、すごいわ!私なんか目で追うのがやっとだった。」
「メグメグ、ありがとう。ゼリーを消化して以来じわじわ実力がついているのがわかるわ。」
「では不肖リリエラ行ってきます……!」
リリエラが前にでて試合開始の合図が鳴る。
リリエラは相手の先手を取って魔法を繰り出した。それは相手との間、地面に向けられたものだ。
とたんに土埃が辺りを包む。試合はどうなったんだ?と声が上がる中で煙が晴れていくと、そこには距離がゼロになったリリエラと対戦相手の姿があった。
リリエラのパンチが対戦相手のお腹に食い込んでいた。
ずるりと滑り落ちる相手。リリエラの勝利だ。
「なかなかの頭脳プレーじゃない。威力の少ない魔法を目眩ましに使うなんて考えたわね。」
えへへ、と照れ笑いするリリエラ。可愛い。
「フランちゃんみたいに魔法を使えればいいけど、私は私だって気づいたの。
これからも強くなってみんなを助けますね。」
さぁ、お次は私だ。みんな強くなっている、負けていられない。
ぷるんつと手を繋ぎ、開始位置に着く。
「両者良いですか?……始め!」
「……強くなりたい、じゃと?」
稲荷寿司をズシズシつつきながら、リクビさんは問いかける。
「はい、私、模擬戦での勝率を上げたいんです。
リクビさんには挨拶がてらお知恵を拝借したく……。」
私たちは移動魔法でタンタラ洞窟前を経由し、稲荷寿司を土産にリクビさんの稲荷神社を訪れていた。
「以前はぷるんつ任せの戦闘をしていれば相手に勝つこともありました。相手もスライムなんか大したことないはず、って真っ向から真面目に戦ってくれていたんです。
だけどもうそよ風組のみんなは、ぷるんつが強敵だと覚えちゃいました。
ぷるんつはそんなに素早くないから、ここのところいの一番に私が狙われて倒される、ということが続いています。」
話を聞いているのかいないのか、チホは満面の笑みで稲荷寿司にかぶりついている。
「強くも強くないもお主、あれだけ妾と渡り合ったじゃろ?そんななんたら組の模擬戦ごときで苦労はしまいて。」
だからそれは話せない事情があるんです!、と私たち。
「私たちの実力はチホと戦ったときくらいだと思って下さい。その前提でお知恵をお借りしたい次第。」
ふむ、とリクビさん。
「……つまりあれじゃな、メグ。お主の持っているスキルは相手が強いほど自分も強くなるとかそういう類のものじゃろ?違うか?」
サァーと血の気が引くオカリナ一同。
フランが口封じとばかりとんでもないことを言い出す。
「メグ、急いでカロスさんに連絡して!
あの日のタンタラ洞窟での記録媒体を然るべき場所に提出してもらいましょう!」
やれやれとため息をつくリクビさん。
「早まるな早まるな。
チホとのへっぽこな戦いについで妾との戦闘。なんとなくスキルに察しはついておったわ。
妾は口は固い。口外するなと言われればせぬ。」
本当?本当に本当?と念押しする私たち。
リクビさんには、安くみられたものじゃな、と呆れられるほどだった。
リクビさんは稲荷寿司を1つ召し上がっては言う。
「モグモグ……ゴクン。たまらんな。
さて本題に戻ろうか。
現在メグがぷるんつ頼りの戦いをして困っているなら方法は2つ。
1つはぷるんつに頼るのをやめること。スキルツリーはカスタマイズできるといったな?
ぷるんつに使っているスキルを解除して、自分を強化するスキルを取得することじゃ。」
ぶんぶんと首を振る私。
「私、ぷるんつへはスキルを全く割り振っていません。」
そうか、とリクビさん。
「なら2つ目、その逆じゃ。今持っているスキルを全て解除して、ぷるんつ周りのスキルに注ぎ込んでみることじゃ。
できる限りスキルツリーの奥へ行ってみたり、気になるスキルを重点的にレベルアップさせてみたり……。
そうすれば以前とは異なることなど何かしら新しい発見もあるじゃろ。」
なるほど、ぷるんつが強いのは分かっていたが、それ故にスキルを振るということは今までしてこなかった。
これは結構な宝の持ち腐れかもしれない。
目からウロコの私たちを前にリクビさんはニヤリと笑った。
「首尾の方はまた聞かせてくれよ。もちろん手土産は忘れずにな。」
ありがとう、リクビさん。成果があれば土産は多めにお持ちしやす!
私たちはぷるんつを魔改造すべくプリカ養成所に帰るのであった。




