第37話 上級パーティ帰還せし
部屋の明かりが灯され、怪しい人たちの顔姿が白日のもとに晒される。
ぶつかった私と同じくらいの背の子。
背の高い、きりっとした顔の子。
その2人の間くらいの高さのどこかのほほんとした顔の子。
どの子も見たこともない3人だ。
泥棒だとしたら、今オカリナの仲間がいない私は相当なピンチに違いない。
すぐに私は叫び声を上げる。
「た、助けてー!誰か泥棒ですー、んんっ、モゴモゴ」
叫ぶ私の口を袖で塞いでくるぶつかった女の子。このままではまずい、ともがく私。
バタバタと余計に暴れる私に、女の子は言い聞かせるように話す。
「ばか。勘違いだ。ここはもともと私たちの部屋なの!
私たちは遠征から帰ってきたんだ。」
あ、そういえば相部屋の人が不在、そんな話もあった。私の部屋のほか3人は確かパーティで出張中とか。
もがくのをやめてバンザイする私。すると女の子も塞いでいた口を解放してくれた。
「全く、相部屋のやつがそよ風組とは聞いていたが、こんなばか者だとは思わなかった。そよ風組はこんなのばっかなのか?
とりあえず部屋に突撃してきてぶつかったことと、私たちを悪者呼ばわりしたこと、謝ってもらおうか。」
なかなかに横柄な態度の子だ。それに許せない物言いもある。
「頭をぶつけたこと、あなた達を誤解したこと、それは謝る。ごめんなさい。」
ペコリと頭を下げる私。
「でもそよ風組の悪口は撤回して。そよ風組はみんないい人ばかり。
何も知らないあなたにそんな言い方されたくないわ。」
なにぃ、としゃくり上げる女の子。
しかし後ろから背の高い女の子が口を挟む。
「『木を見て森を見ず』、お師匠様の言う通りじゃないか。たった1人の一度の過ちで集団を測るなんて推理、ばかげてるってわかるだろ。
エリノ、撤回できるね?」
そんな、子どもじゃないよ!と呼ばれたエリノが吐き捨てる。
「わかったよ、そよ風組は悪くない。……そして謝ってくれたし、私もお前を許すよ。」
「良くできました。ところで相部屋のメグさんだね、話は聞いてる。
私はイチ。それとこっちが……。」
はいはーい、と間延びした声で横にいた女の子も答える。
「私はシノでーす。よろしくね。エリノ、イチ、シノの3人でトリプラーっていうパーティやってまーす。えへー。」
「メグちゃん、これから一緒の部屋でやっていくんだ。どうぞよろしくね。」
おお、イチさんはみんなの間をとりもってくれて優しいぞ。でも私は部屋を出ることになった身。残念だけど、とそのことを伝える。
すると3人は賑やかになりそうなのにもったいないね、といってくれた。
そしてなんとなく打ち解けたので、少し上級者パーティの遠征話について聞かせてもらうことになった私。
今回の遠征は力をつけたトリプラーのランクアップを査定するためのものだったという。
普通のクエストの期限は1週間だが、遠征では期限のない独自のクエストをいくつも受けた状態で旅に出る。
旅先での資金繰りもこなしながら、受けたクエストをどれくらいの期間でどれだけ達成できるか、が考察されるのだ。
「私たちは8割くらいのクエストを終えて、後は時間も手間もかかりそうなものばかりだから引き上げてきたのー。
明日はギルドに書類を提出して査定に入ることになるねー。ふふふ。」
思い出したように、そういえば、とエリノが切り出す。
「あのクエスト。プリカ養成所の犯人探しは結局やらねーのか?エルキメデス像が何回も倒されてたっていうアレ。」
ギクゥゥ!とする私。やっぱり倒れたのを立て直すだけじゃバレていたのね。
悪事はいつも忘れた頃、罪人を連れに戻ってくる……。
何も知らないイチさんは答える。
「あぁ、そうだね。証拠を出せるような魔法もアイテムも私達には扱えないし、偶然犯人と巡り合う確率なんてのも期待できないしね。
時間を食うだけだからパスだ。」
隣で冷や汗をかく私。ここです、ここに犯人が座しております。
そのせいで顔色悪いよ?とイチさんに心配までされる始末。
3人が解決できなければ他の人が私たちを探しに来るのでしょうか……。お腹痛い。
そこへひょっこり現れたフランが部屋の入口から顔を出す。
「メグ、あんまり遅いからきたわよ。何してるの……って、あれ、お客さん?」
オカリナの3人が揃って私の様子を見に来てくれた。私はオカリナのみんなにいきさつを話し、それぞれがお互いに自己紹介する。
「てなわけで、私たちは一応エルキメデス像を倒しに倒した犯人も一応追っている身なのー。
まぁ話の通りほぼ諦めてるけどねー。えへへ。」
そ、そうなんだぁ、と3人の目が泳ぐ泳ぐ。おい、あんたらぁ!あんまり態度に出るとバレちゃいますよ!
リリエラに至っては吹けない口笛を吹いて、フガフガ乾いた音を立てている。お願いだから自分の怪しさに気づいて……。
「さて、もう遅い時間だね。メグ、当面いる物は運べそうかい?何なら手伝うけど。」
イチさんの申し出はありがたい。だけど今日は寝具さえあればなんとかなる。
「ありがとうございます。でも少しずつ移すので大丈夫ですよ。部屋が変わってもまた遊びにこさせてください。」
「あぁ、いつでもこいよ。そよ風組で困ったことがあったら何でも聞いてやる。」
「荷物運びにしばらくは出入りするんだよねー。じゃまたねー。おやすみー。」
オカリナはクエスト達成の標的にならずに済んだ。
部屋に戻った私たちは解放の安心感と、良いパーティと知り合えたことに、安堵のため息をつくのであった。




