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第35話 いろんな依頼だ、初ギルド


 商会のカウンターまでやってきた私たち。

 グルスさんが受付嬢さんに声をかける。


「よぉ、姉ちゃん。そろそろ彼氏でもできたか?」


「こんにちわ、グルスさん。

 昨今ではそんな話題はセクハラになりますよ。要件のみを仰ってくださいな。」


 すると、はぁ、と大げさにため息をつくグルスさん。


「そんな対応じゃ恋人なんてまたのまた夢だな。

 女は愛嬌。愛される笑顔と態度ってもんがいるんだぞ。」


 流れる冷たい空気。

 受付嬢さんは冷めた微笑みを浮かべる。


「トラブル防止のため、受付での会話は全て記録されています。

 ところで昨年の商会でのセクシャルハラスメントの案件は十二件ありました。今年度は目下集計中ですが、グルスさん、あなたご自身で一件お増やしになるおつもりですか?」


 ぎょっとするグルスさん。ペしりと頭を叩くと話題を取り下げる。


「これは勘弁勘弁、すまなんだな。

 何、今回はギルドに参加したいパーティがいるんだ。

 ほれ、こいつらひよっこだ。」


 ひよっことは失礼しちゃう。

 さっきの会話といい、グルスさんはややデリカシーに欠けてるね。

 

 受付嬢さんは私たちをまじまじと見つめ、そしてにこりと微笑む。


「……確か、パーティ名はオカリナさんでしたね。可愛らしい女の子のパーティが商会の登録に来たので覚えていますよ。

 そうですか、ギルドに参加したいのですね。」



 ご存知かもしれませんが、と前置きしながら受付嬢さんはギルドの説明をしてくれる。


 ギルドとは冒険者とクエストの依頼者の情報交換の場。

 様々な難易度のクエストがここ、ギルドに集められる。


 冒険者はクエストをこなすことで収入を得ることができ、商会にも一部依頼料が納められることで日々の経営が成り立っている、とのことだ。


「実力がまだそれほどでもないパーティにこそ、クエストの難易度が選択できるギルドがうってつけかもしれませんね。

 この前の商会登録の際には出費が重なるのであなた達にギルドを紹介しませんでしたが、後でお話だけでもするべきだったと後悔したものです。


 ……それにしてもオカリナさんは少し見違えましたね。今なら受けることができるクエストも少し選べるかもしれませんね。」


 私たちが見違えた?本当?

 まぁ確かに今下っ腹は見違えていますが……。



 私たちはギルドの登録料を払って登録を済ませる。

 リリエラもただケチなだけではないので意味のある出費には口を出さない……。


 訂正。唇を食いしばって、それなりの出費に耐えている。


 そうして私たちはギルドに正式に入ることが出来た。


「それではクエストの受け方ですが、あちらのガラス張りの掲示板が見えますかね?

 あそこに現在ギルドに依頼されているクエストが貼り出されています。


 いつでもご自由にご覧になって下さい。受けたい案件があれば手近な職員にお声がけを。

 そうすれば鍵を開けて当該のクエストの紙を出して手続きに入ります。」


 すると席を立つ受付嬢さん。他の職員さんに話しかけると受付を変わってもらう。


「……といってもあなた達は初めてですもんね。一緒に見に行きましょうか。」


 受付嬢さん、優しい!


 無事ギルドに入れて解説も要らなくなったためここでグルスさんとお別れとなった。グルスさんもありがとね。


 そして掲示板の前に辿り着く私たち。

 うわぁ、びっしりと依頼があるぞ。


「クエストは大まかに難易度別に分けられています。右上は難易度が高いクエストが多いですね。

 オカリナさんはまだ駆け出しということで左下の方からご覧になるといいでしょう。」



『スライム発生!冒険者モトム。』

『トカゲが巣を作りどいてくれません……。』

『大ミミズ駆除依頼!!』

『合成素材探してます。』


 はぁー色々あるのね。


「クエストで気をつけて確認しておきたいのが『敵の内容』や『報酬』なんかはもちろんなんですが、他にもう1点あります。わかりますか?」


 うむむー?とはてなマークの私たち。


「それは『貼り出し期間』なんです。貼り出し期間が長いクエストはみんなが敬遠する理由があって残っているもの。


 例えばこのスライム討伐のクエストは、相手がスライムにもかかわらず数週間張り出されていますよね。


 報酬を見てください。子どものおこづかい程度なんです。冒険には準備もアイテムも要ります。冒険者を舐めているのか、ってみんな受けたがらないんですよ。


 長期間誰も達成できなかった依頼はここから除去されます。

 依頼主に依頼料の手付金は返金されないので、あまりケチると返ってお金を損しちゃいますね。」



「……じゃあこの大ミミズのクエストは?これも貼り出し期間が長いようだけど。」



「フランさん、そちらは多くのパーティがクエストに失敗しているからなんです。

 

 なにやら穴の中から姿を見せぬ敵が、遠距離攻撃だけで半端なパーティを撃退しているというんですよ。


 大ミミズ討伐という表向きの内容は報酬に見合ったものですが、噂によると強力なモンスターが奥に巣食っているようで……ボスモンスターじゃないかとも話されています。」



 ボスモンスター!

 私たちは顔を見合せる。



「何にせよ、みなさんにはオススメはできませんね。

 このように悪質なクエストも時々混入しているので、クエストを受けるときは十分気をつけてくださいね。

 クエストを受けすぎてあまりに達成できないとペナルティも有りますんで……。」



 だが私たちの気持ちは既にその大ミミズのクエストに向いていた。

 果たしてギルド初のクエストは吉と出るのか凶とでるのか。

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