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第33話 戦い終えて得る平穏


「『氷牢、ばく』!」


 リクビさんが術を唱えると、3人を包んでいた氷塊は何事もなかったようにはらはらと剥がれ落ちた。


「あらら?」


「何?急に時が止まって……?」


「へっくち!ちょっぴり寒いです……。」



 3人はリクビさんの言う通り無事なようだ。


「カナ!フラン!リリエラ!」


 私は思い余って3人に抱きつく。


「あらあら、どうしたの?あまえんぼさんね。」


「どうしたの?戦いは終わったの?」


「何が起きたんですかぁ?急に頭がボーッとして……。」



 私は事の顛末を3人に話した。


 3人が氷の牢獄に囚われていたこと。

 それを助けるためにリクビさんと戦っていたこと。

 そして危ない場面でタロンがカロスさんを引き連れてやってきたこと。


 ここぞとばかりにタロンがしゃしゃり出る。


「せいぜいおいらに感謝するんだな。機転も利いて、知識に造詣もある上位精霊タロン様のことにな!」


 それを受け、いつもは勝ち気なフランがしおしおとタロンに礼を述べる。


「……ほんとうにありがとうね、タロン。

 あなたの助けがなかったら私たちはみんな牢屋行き……ううん、メグに至っては大きな傷を負っていたかもしれないわ。」


 リリエラも続く。


「タロンちゃん、今回は特に大手柄でしたね。

 みんなから、うんと褒めてあげますよ。えらいえらい。」


 いつもなら尊大な態度を取るとほっぺたの刑に処されていたタロンだが、今回ばかりはベタ誉めと頭なでなでの処遇に合い、調子が狂ったようだった。

 分かればいいんだよ、などとぶつくさいいながらそっぽに向かって飛んでいく。



 戦いはもう終わりだ。

 リクビさんの方もチホの縄を解いていた。


 チホもこちらに興味津津という風に近づいてくる。


「縄で縛られてはいましたが、チホはお二人の戦いを拝見させて頂いていましたナ!

 途中、チホの縄を使おうとしていましたが、もしや見た技のコピーのようなことができるのですかナ?


 数々の優れた技を習得されているようにお見受けするだけに、素晴らしい技能までお持ちで!羨ましい限りですナ!」


 この子、けっこう鋭い!

 いつの間にかサングラスをかけたカナからはレッドカードが出ている。どこで仕込んだんだ、あんなもん。


「チホ。私たちのことはあまり詮索しないで。

 何もかも話せるなら、もともとあなた達と戦闘になっていないでしょ。

 今回はこれで幕引き。それがあなた達のためでもあるのよ。」


 フランが説き伏せる。


「うーむ、残念ですナ。チホも後学の為に知っておきたかったです……。」


 カナがチホの唇に指を当てて決める。


「いい女にはいくつも秘密があるのよ。おわかり?」


 なんだそりゃ。


 しかしチホにはこれが効いたよう。

 目をキラキラさせながら、


「左様ですか……されば仕方ないですナ!」


 そんなんでいいのか、チホ。



 カロスさんは少しリクビさんに説教をしたあと、天界に帰っていった。


 リクビさんも少々洞窟の様子を奥まで見回ってから帰り支度を始めたようだ。


「……お主らのことを無為に詮索するつもりはない。だから話したくないことは言わんでも良いが、そのアイテム全部持って帰れるのか?」


 周りはスライムヘルムや核、粘液や皮で満ち満ちている。


「スライムヘルムや核はなるべく持って帰るつもりです……売るとお金になるので!」


「そうか、懐が暖まるとよいな。……チホ。」


 あねさま!と言いながらチホがとてて、とリクビさんに走り寄る。


 はっ、としたカナ。思い出したようにリクビさんに質問を投げかける。


「リクビさん!チホさんとは実の姉妹なんですか!?」


 なんじゃ、と何気ないようにリクビさんは答える。


「妾たちは血は繋がっておらん。昔、親に先立たれ行き倒れていたのがチホ。

 それを保護して以来の腐れ縁じゃ。」


 それを聞いて顔が上気するカナ。イェス、イェスとガッツポーズを繰り出す。


「え、カナちゃんなんで分かったんですか?そんな素振り、ちっともなかったのに……。」


 チッチッ、と指を振るカナ。


「2人は私の『そうだったらいいなセンサー』に引っかかったのよ。

 社に身を寄せ合い、暮らす2人……これが実姉妹であっていいわけがないわ!無論、当然の如く義姉妹だったようね。

 いける、これでご飯3杯はいけるわ!」


 ドン引きの一同。

 氷瀑牢の寒さでみんな頭が朦朧としていないか心配したけど、カナは平常運転のようで安心しました。


 リクビさんに至っては彼女は大丈夫かと心配なさっています。

 大丈夫じゃないけど大丈夫、それがカナなんです。



 さて、そろそろお別れと行った雰囲気の中、去りかけたリクビさんがピタリと足を止めました。

 そして振り返り私たちに語りかけます。


「知っての通り、妾たちはこの洞窟の地鎮も行っておる。


 ここでのお主らの活動は誰に制限されるものでもない。

 しかし近くまで来たなら、神社に顔を出してくれると余計なことに気を揉まずに済むということもある。」


 ああ、それくらいなら……と顔を見合わせるオカリナ一同。


「この辺は人家も少ない。

 その際にな、いや、無理にとは言わんのだが……。」


 もじもじと言い淀むリクビさん。

 私たちは何が言いたいのか掴みかねる。


「手土産に稲荷寿司など持って来てくれるとチホと……まぁ妾が喜ぶ。

 猫にマタタビのようなもんでな。まぁ忘れてくれても構わんがな。」


 稲荷寿司ほしさにこの反応?

 この神様、かわいいんですけど!?


 どうか気にしないで頼んで下さい!世の中にはところ構わずたこ焼きを謳歌している代理人なんかもいらっしゃいますから!


 リクビさんがいなくなった後、あまりのギャップにキュン死する私たちであった。





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